調査事例紹介2016-59 熊本被災住宅調査速報

報告:滝口泰弘(住宅医協会理事)

ボランティア調査員を募集させて頂きました熊本の被災住宅調査ですが、関東、関西、九州から12名の住宅医関係者にお集まり頂き、無事調査を完了することができました。
調査は、5/31~6/2にかけて、住宅医スクール2016熊本開催にご協力頂いております新産住拓(株)さんの方へ調査依頼が来ている3件の住宅の視察・相談、4件の住宅の調査、2件の寺院について行いました。
一日も早い復旧や耐震補強工事ができるよう補強提案をまとめるために、主に「被災度区分判定」と「耐震調査」を行い、提案に必要な情報を得ることが今回の調査の目的です。
お集まり頂いた皆様、調整や当日の先導を引き受けて頂きました新産住拓(株)の方々、誠に有難うございました。
以下に調査の概要(速報)を、ご報告させて頂きます。

5月31日(火)「被災住宅の視察・相談」(西原村)
熊本空港周辺の阿蘇郡西原村地区にて、3件の被災住宅の視察、及び相談を行いました。
西原村は山麓部に位置する地域で、瓦屋根が崩れブルーシートがかけられている住宅も多いですが、路地に入ると、よう壁が崩れ、被害が大きい場所が点在していました。
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1件目は築5年の新しい住宅で、大きな被害は無いように見えますが、地盤沈下により建物全体が傾いていました。応急危険度判定は赤色の「危険」。特に外構に大きな地割れが幾つも見られました。
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2件目は、すぐ近所の、こちらも築5年の新しい住宅で、1件目同様に、地割れや地盤沈下により建物が大きく傾いていました。応急危険度判定は赤色の「危険」。隣の住宅も貯湯槽が転倒し、外構が崩れていました。
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3件目は、地割れや地盤沈下は見られず、外装の隅部の割れや部分的な屋根瓦の崩れが見られました。応急危険度判定は黄色の「要注意」。内部の吹き抜け廻りの壁(石膏ボード)は広範囲に割れが見られました。
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地割れやよう壁の崩壊など、地盤の影響の有無によって、同じ地区でも被害に大きな差がありました。
初日は以上で終了し、夜、新産住拓に集まり、翌日からの調査のミーティングを行いました。
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6月1日(水)「被災住宅の調査」(益城町、東区)
震源地である益城町地区にて、4件の被災住宅の調査を行いました。
益城町は激震地であり、街並みの建物は軒並み倒壊している状態でした。
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1件目は築30年の住宅で、応急危険度判定は黄色の「要注意」。全体的に基礎や外壁の欠け・ひび割れ、内壁の欠けやひび割れが見られました。
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2件目も築30年の住宅で、応急危険度判定は赤色の「危険」。1件目同様に、全体的に基礎や外壁の欠け・ひび割れ、内壁の欠けやひび割れが見られました。一部、2階床梁の割れも見られました。また、隣家に大きな被害が見られ、築年代や構法、地形や地盤など、複合的な要因によって、すぐ隣りでも被害の大きさが極端に異なっている状況でした。
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3件目は、調査2件目のお隣の築15年の住宅で、応急危険度判定は黄色の「要注意」。外壁や内壁には部分的に大きなひび割れが入っており、また、地盤沈下による建物の傾きが大きく、基礎にもひび割れが入っている状況でした。
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4件目は、益城町からは少し離れた地区の住宅で、応急危険度判定は黄色の「要注意」。外壁は全体的にひび割れが、内壁は部分的に欠けやひび割れが見られ、外構にもひび割れが多くみられましたが、周囲に倒壊している住宅は見られませんでした。
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6月2日(木)「寺院の調査」(西区、中央区)
調査最終日は、熊本駅近くの西区、中央区の2件の寺院の調査を行いました。
1件目は築360年の寺院で、全体的に大きく傾いており、垂れ壁に欠落やひび割れが見られました。床下には蟻害も見られ、小屋裏には1か所だけ小屋束のズレが見られました。
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2件目は築150年の寺院で、全体的な大きな傾きは見られず、部分的に垂れ壁などに欠落やひび割れが見られました。床下には蟻害も見られましたが、小屋裏は健全な状態でした。
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以上で3日間の調査は終了しました。
現在、参加者で手分けして、被災度区分判定結果、および耐震診断結果をまとめ、復旧・補強案を検討しています。
今後も、住宅医による支援活動を続けていき、一日も早い熊本の復興に少しでも寄与できればと思っております。
引き続き、ご支援、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
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