各地の住宅医の日々№39 能登半島地震後の新潟より

宮﨑 直也住宅医 / 宮﨑建築(株) / 新潟県

元日に発生した能登半島地震より3か月。
被災された方は実生活の不便や将来の不安などから複雑な思いで過ごされてきたことと想像します。
一日も早くもとの生活に戻れることをお祈りいたします。

新潟での能登半島地震の被害は液状化による建物等の沈下によるものがほとんどです。
私を含め多くの建築関係者は液状化を知識として知ってはいましたが、事態に直面するのは初めてのことでした。

新潟では「液状化しやすさマップ」というものが公開されています。
https://www.hrr.mlit.go.jp/ekijoka/niigata/hi/h_niigata.pdf
マップによると、このたび液状化したところの多くは「液状化履歴あり」または「液状化の危険度が高い」ところです。
これまでもマップの存在は知っていましたが、詳細に確認したことはありませんでした。
それだけ液状化を自分事として捉えていなかったということと反省しています。
今後、敷地選びの際は「過去の液状化の履歴」や「危険度の高さ」を確認することは必須となりそうです。

出典:新潟県の液状化しやすさマップ
(北陸地方整備局企画部 , 公益社団法人地盤工学会北陸支部)

1 月に新潟市が設置した「被災住宅相談窓口」に相談員として参加しました。
寄せられる相談のほとんどが「液状化により自宅が傾いた」というもの。
私は、これまで液状化については対処した経験が無いため、ご案内できるのは「沈下修正の工法の種類」や「それぞれの工法の概算費用」など一般的なことばかり。
もちろん、それらを知らずして次のステップには進めませんし、現場を確認せず踏み込んだアドバイスをすることは出来ません。
窓口の対応としては一定の役割を果たしていたと考えています。
しかし「もっと相談者に寄り添ったアドバイスができたのでは」と悔いが残ります。

相談の中には「最近フルリノベーションをしたばかりの家が傾いた」というものが何件かありました。
「耐震も断熱もしっかり治したから、もう住まいには手を掛けなくていいと思っていたのに…」と。
新築住宅では工事前の地盤調査・改良は必須となっていますが、改修でそれらを行うことは多くないと思います。
今後、フルリノベーションなど規模の大きな計画の場合は「液状化マップの確認」や「地盤調査の実施、改良の検討」も必須になると感じました。

写真 2024年1月22日 2024年1月22日 2024年1月22日

能登半島地震以降、住宅医・建築士として災害時に何ができるのか改めて考えています。
自分の住む地域の災害リスクについて可能な限り対策を講じること、他地域の被害に学ぶことも重要です。日々の研鑽は続けなければなりません。
建築に携わる者の責任の大きさを改めて痛感しています。

(写真・文)宮﨑 直也
©Miyazaki Naoya, jutakui


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