投稿日:2019年02月11日

住宅医リレーコラム2019年2月 


WOODAC 河本和義

昨年に引き続き、耐震補強に使える新工法のご紹介をさせて頂きます。

私どもWOODACでは、岐阜で、NPOとして、国産材・地域材利用促進を目的に活動してきております。そのなかで、県産材利用拡大を目的とした工法開発のお手伝いをさせて頂いておりますが、そのなかの一つで、岐阜県木連が工法開発を行っているヒノキ製材を用いた木造ラーメン工法をご紹介させて頂きます。

この工法は、国や県の補助金を利用して開発しているもので、岐阜県産ヒノキの特長である美観を生かしアラワシとし、優れた品質を生かすことにより、岐阜県産ヒノキの付加価値を高めることを目的としています。流通材(木材、金物)の利用、既存プレカットシステムの利用などにより、鉄骨造に負けないコスト性を目指しています。

加工したベースプレートとボルトと構造用ビスを用いた工法(図1、写真1)で、6mスパンで、片筋かい45×90壁長2mと同等の構造性能を持ちます(図2、写真2)。高強度のラーメンではありませんが、ボルトと構造用ビスを用いることにより、初期の剛性(中地震時)、高い変形性能(大地震時)を実現しています。

この工法は、新築を対象に開発をはじめ、ハウスプラスの構造評価を得ていますが、これを耐震改修に利用しようと、昨年、既存軸組の内側に組み込む計画をしましたが、新築を想定している工法のため実現には至りませんでした。今後は、耐震補強(既存軸組の内側に組み込む)に利用できるタイプの開発を目指していきますが、現状でも、例えば、外壁面に既存軸組に沿わせる形で利用することにより、開口をつぶすことのなく耐震補強を行うことができるなどの利用方法(アラワシにできないですが。。。)もありますので、耐震補強のひとつのレパートリーに加えて頂ければと思います。

投稿日:2019年01月07日

代表理事より新年の挨拶


代表理事  山辺豊彦(山辺構造設計事務所)

明けましておめでとうございます。
新しい年を迎え、全国の住宅医協会会員ならびに協力関係者の皆様に、謹んでご挨拶を申し上げます。

昨年は豪雨災害、台風、豪雪被害、噴火災害、地震被害等、自然災害の多い一年でした。東京都でも首都直下地震への備えとして、「いつか来るかもしれない」のではなく「必ずくる」と考え、喫緊の課題として建物の耐震化キャンペーンを開催しました。その一環として、昨年12月14日、都庁内で「木造住宅の耐震改修」をテーマに講演を行いました。この講演後に「耐震化に係る金融知識(補助制度)の説明」があり、その後共催区市の助成制度の詳細説明がブース形式で行われました。

当事務所でも昭和初期、日野市に建設された旧蚕糸試験場日野桑園の耐震改修に協力しました。この建物は、蚕室を良好な環境に保つため1階を1m位の高床とし、床下には飼育室の中央部に煉瓦積みで火炉を設置し、周囲に換気孔を設けています。当時の建物で1階が鉄筋コンクリート造、2階が木造とした立面混構造の事例は珍しい建物です。2階の木造は、洋小屋のキングポストトラスで、比較的細い部材で広い空間を覆う架構形式となっています。2階床スラブには開口部を設け、暖気の流れを2階に導き、さらに越屋根から外に流します。このシステムは、大正期に改良普及した方法で、当時は「古くて新しい技術」でした。この建物を耐震改修し活用しながら後世に残すことは、日野市の産業史を物語る面からも、歴史文化を伝え続ける面からも貴重な役割を果たすことと期待しています。

住宅医協会は、今年も住宅医スクールを各地で開催します。建築に関わる会員ならびにスクール生の皆さんには、講義だけではなく実測調査や検定会などにも参加され、技術の研鑽を積んで信頼される住宅医として活躍してほしいと願っています。

投稿日:2018年12月12日

住宅医コラム 意見交換2018-87


住宅医リレーコラム 2018年12月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
12月号は森本周子氏のコラムです。

床下・小屋裏ワンダーランド

もりちかぐみ 森本周子

建物の調査で「床下に入るのはちょっと・・・」と尻込みする方にお会いすることもあります。床下や小屋裏は、静かで落ち着きますし、毎回発見がありますので、私は楽しくもぐったり登ったりしています。ここでは「調査に参加してみたいけれど。」という方に向けて、最近の木造の床下、小屋裏調査での考えた事を紹介します。


インスペクションの目的によって調査内容や時間のかけ方は変わりますが、住宅医が得意とする床下、小屋裏の詳細調査では構造や劣化等の状況把握を主に効率的に行うことになります。


そこでの楽しみはやはり木造ならではの軸組みです。時代や時期、地域によっても違いますので、発見があります。自分の知らない地域では、小屋組みだけでなく床組みでも「このあたりの大工さんはこうやっておさめるのが普通なのかなあ。」と思うこともありました。「この時期の住宅ならばこういう工法や材料がよく使われている」という知識が頭に入っていれば、現場でも早い判断につながります。


そして、あまり会いたくはないが会っておけば次の調査につながるのが、劣化をもたらすシロアリなどの痕跡です。ヤマトシロアリの蟻害、蟻道はよく見るので、私は「この辺あやしい。」という鼻もだいぶきくようにはなったと思います。今年はアメリカカンザイシロアリに対面し、会いたくはなかったですが次に会ったら気づきます。(防除は大変です)その他劣化以外で、ハクビシンの痕跡はよく見ますが、スクール修了生のAさんにコウモリの糞を教えていただきました。もしかしたら今までどこかで出会っていたのかもしれませんが、「知らないと見えない」ので、現場でホンモノを知る人と同行するのは大切だと思います。
また、住宅の調査では時間に余裕がないことが多いので、調査の数をこなしている人は、いかに効率よく行うか、工夫し、調査の進め方や道具等も進化しています。住宅医スクールの清水利至講師の講義を聞きながら、その要領がよく質の高い調査に感服し、一度、押しかけて同行させてもらいたいと思っています。文化財調査にも長けているスクール修了生のSさんとお寺の本堂の小屋裏に同行した時には、忍者のように身軽に梁の上を渡る姿と技術的な知識で勉強させていただきました。Sさんの明るいヘッドライトと手袋の工夫を真似して、性能の良いヘッドライトを使うようになりました。余談ですが、とても性能のよいヘッドライトを買って調査に入ったが、電池が持たなくて失敗という方もいましたので、調査の内容に合わせた選択が必要です。


最近「住宅履歴」をデータとして残す事業が進められています。写真のようにある文化財では改修年月を「束に刻印」、「天井板への書き込み」、「棟板と別に3回の改修を板に記録して小屋裏に残す」などしていました。一目瞭然なので、住宅のメンテナンスの時にもこうしたアナログな方法も後々役立つのではないかと思いました。


発見があって楽しいといっている時点で、私もまだまだ知らないことがあって未熟ということになりますが、こうした小さな発見を積み重ねています。「調査してみたい。」と思われている方、全国各地にはサポートしてくれる住宅医やスクール修了生がいますので、一緒に調査いたしましょう。いざ床下・小屋裏ワンダーランドへ。