投稿日:2019年06月05日

住宅医リレーコラム2019年6月


タグチホーム株式会社
代表取締役 田口元美
http://www.taguchihome.com/

【 空き家と住宅医 】

近年、空き家の増加が社会問題となっています。
住宅医として空き家問題に取り組んでみてはいかがでしょうか。

現在日本の問題になっている人口減少や、都市圏に集中する過疎化などの原因によって増えています。
全国の空き家率は増加の一途で、平成25年においては空き家数が820万戸、空き家率が13.5%となりました。
平成20年と比べると、空き家数は63万戸の上昇、空き家率は0.4%の上昇です。

このような空き家問題もあって、各自治体においても空き家バンクや空き家改修補助金など活用するための対策を始めています。

この活用の第一のメリットとして、新築住宅を建てるよりもコストを削減することができます。
空き家の改修では、建物の部分的な改修に止まらず、間取りや内装、設備を大幅に変更し、住まい全体の性能を向上させます。
築年数が経過して、老朽化が進んだ建物の耐久性や耐震性の強化、環境と家計に優しい省エネルギー住宅への変換も可能でしょう。

この改修こそ住宅医の目利きが大切です。中には解体せざるを得ない空き家もありますが、どこを直せば空き家に住めるようになるか
または店舗など他の用途に転用はできないか、住宅医の提案力も求められます。

また、第二のメリットとして、親御さんから譲り受けた大切な家を解体したり売却することなく活用できるという点が挙げられます。
マンションのリフォームなら、自分の理想とするインテリアに変えたり、家族に合わせた使い勝手の良い設計に変更することができるというメリットもあります。

リフォームをすることで、空き家が新築住宅のように生まれ変わり、住まいとして活用すれば、長年慣れ親しめる家に住み続けることもできるでしょう。

リフォームをした空き家を自分で済むのではなくて賃貸にして活用することも可能です。
既に自分が満足している住宅に住んでいるときに有効です。空き家を所持していると固定資産税や管理する必要があり結果的にマイナスですが、 賃貸にすることで収益になるのでプラスになるメリットがあります。

また、上でも記載しましたが、全面的にリフォームするとなれば費用もかさみますが、空き家を活用リフォームに関する補助金は地域ごとに 多数存在しています。

これかの各地域の制度も良く理解して提案していくことで、空き家を救っていくのも住宅医の使命だと考えています。

皆様の全国での活躍を期待しています。

投稿日:2019年05月09日

住宅医リレーコラム2019年5月


株式会社 キノマチ不動産
 藤村直樹

土砂災害から不動産を守るためには

最近は交通事故で痛ましい事故が続いて報道されています。同じくらいの子供を持つ身としては、身につまされる思いで胸が苦しくなります。

冬が過ぎ、これから梅雨を迎え夏本番に近づきます。今度は災害、大雨による土砂災害の時期になってきました。昨年7月の7月豪雨災害、平成29年の九州北部豪雨、広島の頻繁な土砂災害等、毎年のように災害が発生し多くの方が亡くなっています。

日本という国土である以上「土砂崩れ」は避けられないのですが、「災害」はある程度避けることができます。

私のブログの中で、「不動産購入時に気になること」というコラムで連載したところ、土砂災害から守るコラムが検索でよく見に来られていました。今回、その内容を一部改変してご紹介します。なお、主観的部分でのコラムであることをご了承下さい。


土砂災害は次の3つに分類されます。

1.急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)

2.土石流

3.地すべり

この中で3の「地すべり」は事前に兆候が現れ比較的緩やかに進行することから、生命への危険度は小さいと言われております。

(※ただし、1985年の長野市の地附山災害のような急な地すべり現象で死者26名のような事例もあるので、必ずしも緩やかとは言えません)

急傾斜地の崩壊は、「がけ」が「崩れる」という現象ですから、一般の方でもイメージしやすいと思います。

都道府県が定める「急傾斜地崩壊危険地域」では斜面30度以上、高さ5m以上の人家や、公共施設に被害を及ぼすおそれのある急傾斜地およびその近接地を定めることになっていますが、急な斜面の下や直上はなんとなく危険な感覚は伝わるかなと思います。なんとなくがけの上付近はよくない、がけの下からがけの高さくらい離れないとまずい、という感覚で大体あっています。

一方土石流は、その昔「鉄砲水」という名前がつけられていましたが、一般的なイメージでは、渓流が急に増水して石や流木ごと氾濫する、というイメージになっているかもしれません。

ところが実際は川沿いではなくても土石流が起こりやすい地形は存在して、昨年の広島の事例のように、あっという間に強烈な運動量で家ごと流されます。

土石流の起こりやすい土地は素人の感覚ではわかりません。

よって、素人としては行政が危険箇所を指定した場所、情報を必ず目を通しておき、理解しておく必要があります。


土砂災害が起こる可能性のあるエリアとして、「土砂災害危険箇所」が定められています。

急傾斜地崩壊危険区域

・土石流危険区域

・地すべり危険区域

また土砂災害防止法に基づいて、

・土砂災害警戒区域

土砂災害特別警戒区域

が定められ、また今後定められようとしております。この土砂災害警戒区域に定められているかどうかは、宅建業法の重要事項説明の説明義務になりますので、これから土地建物を買う方は必ず知ることにはなっています。

又その他にも、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域という工事を行う予定の地域、山地災害危険区域という森林を定めた区域も存在しています。

個人的にはとてもわかりにくい(指定の目的が違うのはわかりますが)ので、全て土砂災害警戒区域、特別警戒区域にまとめて欲しいと思いますが、現在はわかりにくいので土砂災害の危険区域だけを注目する必要はありません。

危険な情報は全て一つの地図情報である市町村のハザードマップを確認すれば基本的に全て載っていますので、ハザードマップを手に入れましょう。国交省のサイトからも見ることができます。

国土交通省ハザードマップポータルサイト  https://disaportal.gsi.go.jp/

↑もちろん的中率は100%ではありませんし、区域に指定されていないところでも災害が発生していたりもしますが、新規に誰も住んでいないところに土地購入を考えている場合以外はこの情報を元に対策を考えるのがベースです。


私は以前の会社で土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域の区域を定める業務についていたことがあります。この区域の指定はマニュアルに従って機械的に定めます。(3次元の地図を使って)

特別警戒区域内は、レッドゾーンと言われますが、簡単に言うと「家が流されます。押しつぶされます。」

警戒区域内は、イエローゾーンと言われますが、簡単に言うと「家の中に土砂が入ってきます。」

と捉え方で言い過ぎではないでしょう。つまり不動産視点ではどちらにせよ建物は駄目になる可能性が高い、土地も形状が変化する可能性が高いのです。

人命視点では土砂災害警戒情報に基づき避難を行うことが命を守る行動につながります。


では不動産購入時の視点として、土砂災害警戒区域と特別警戒区域はどう判断するべきか。

特別警戒区域は法律で土砂を防ぐ対策を取らなければ開発できないと定めれられています。

警戒区域は特に定められていませんので判断は個人の判断になります。先程も述べましたが警戒区域に定められているかどうかは宅建業法の重要事項の説明事項です(ただし、諸々の事情でまだ定められていない地域はあるので行政に確認下さい)

基本的に土砂災害危険箇所は全て避けるべきです。

ただ、狭い日本の国土上、その場所を選ばざるを得ない場所もあるかと思います。というか結構な地域がそうでしょう。避けるだけでは非現実的な提案です。

それでもまず次は避けましょう。

・特別警戒区域に近い警戒区域内

土石流の氾濫地域に近い警戒区域内で家の全てが収まっている

ようは安全率を取りましょう、ということになります。

そして建築士と相談して、床上を上げるとか、上流側に対策工を打つとか、窓の位置を考慮するとか、2階を就寝場所とするようにするとか、ちょっとした対策が違いをわけることになります。不動産の被害も人命の被害もリスクを少なくできます。ここの視点を持っての家づくりはほとんどされないので、是非建築士に防災観点の家づくりを求めましょう。


日本にいる以上、地震、台風、土砂災害は避けられないのですが、過去まだ同時発生(近い発生)は無いと思います。

大規模地震のあと、大雨→土砂災害。

大雨が降り続いているその時に大規模地震。

このコンボは普通にありえます。その時どちらか片方だけなら崩れない、水が来ない場所でも、コンボにより尋常な被害が出ることは十分想定されます。

そこまでのリスクを想定しておくことが、不動産と財産、人命の保護につながると思います。

投稿日:2019年04月09日

住宅医リレーコラム2019年4月


特定非営利活動法人木の家だいすきの会
 代表理事 鈴 木  進

人生100年時代の住まいのトータルサポートシステムの構築 報告

住宅医協会、NPO木の家だいすきの会ほか、金融機関、宅建事業者、工務店、設計事務所等が参加する「地域型住宅リノベーション推進協議会」を立ち上げ、平成29年度・30年度の2ヶ年にわたって住宅ストック維持向上促進事業(国土交通省助成)に応募し、採択されました。今年の3月には仕組みの完成報告書を提出し承認されましたので、この場をかりて事業の概要を報告したいと思います。


(1)概要


地域の木材を使用し気候風土にあった在来軸組工法の既存住宅(地域型住宅)を消費者が安心して購入・売 却、メンテナンス、劣化補修、及び性能向上改修できるよう、専門的な研修を受けた住宅医(建築士)等が窓口 となってワンストップサービスを提供した上、一定の住宅性能の住宅として認定し、リバースモーゲージローン やリフォーム一体型住宅ローンの金融商品を利用できる仕組みを開発しました。


(2)メンテナンスサービスのパッケージ化


メンテナンスサービスは基本サービスと有料のオプションサービスからなります。基本サービスには、住宅履歴情報の保管、ワンストップ相談、住まいの健康管理表の作成、住まい手による自主点検のサポート、定期点検から構成され、住宅医等が所属する設計事務所と工務店により提供可能なサービスです。また、有料のオプションサービスには、劣化診断、シロアリ点検、瑕疵担保責任保険、住宅設備機器の10年延長保証、24時間365日緊急対応サービス、修繕積立からなり、劣化診断を除き連携企業による提供を考えています。
この中で、一番、苦心したのは、定期点検です。というのは、定期点検は工務店が0.5人工程度で実施できる内容(経費約2万円)ですが、この費用を建て主に払って頂けるかというと、現在の段階では、「2万円も払うのなら、定期点検は要らない」と考える方が多いのではないか、ということが見えていたからです。住宅ストック維持向上促進事業に取り組む全国のグループも同様の悩みをかかえ、いろいろな工夫をしていました。当協議会の提案は、工事とその後のメンテナンスを一体的にサービスして、工事費に載せてお支払い頂くという方法としました。


(3)15年周期のメンテナンススケジュール


屋根・外壁の劣化補修は、足場を組んでの作業が必要になりますので、30坪の住宅で300万円前後の費用がかかります。これをどの程度のインターバルで実施するかは、ライフサイクルコストに大きな影響を及ぼす要素となります。例えば、40代前半で新築して、10年サイクルで劣化補修をしたとすると、70代までに少なくとも3回必要となります。これが15年サイクルになれば、2回で済みます。
マンションの修繕積立金の負担額は月2万円程度が多いそうですが、この程度の負担で実施可能なメンテナンススケジュールを検討してみて、15年周期のメンテナンススケジュールを提案しています。(図1)

図1 メンテナンス・スケジュール


(4)住宅の認定


認定住宅とは、新築または改修とメンテナンスの一体的サービスにより、一定の住宅性能を持ちかつ丈夫で長持ちする住宅で、住宅医等(*1)が認定した住宅です。ブランド化することで、消費者にその価値をアピールすることをねらいとしています。住宅性能の要件は、新築、改修いずれの場合も、新築時に義務化された瑕疵保険の検査基準に適合することを基本に、3つの住宅性能レベルを設定しています。

表1 住宅性能の要件


(5)住宅医等によるワンストップ相談


ワンストップ・ショッピングはスーパーマーケットの最大の強みで、行けば必要な買物はほぼ全てできるので大変便利です。住まいのワンストップ相談も同様に、新築・改修、維持保全、売買など住まいのことには、全て相談にのってもらえる窓口です。住まい手は、日頃の維持管理、小さな補修、設備の交換、大規模な性能向上改修など、相談先は設計事務所なのか、工務店なのか、メーカーなのか迷うところですが、全て相談にのってもらえる窓口が一本化していれば迷うことなく大変便利です。
一方、住まい手との緊密なコミュニケーションは、小さな補修工事だけではなく大規模な性能向上改修工事にもつながり、設計事務所・工務店にとっても大切な活動です。

●住宅医等によるワンストップ相談
かかりつけ医のように、履歴、相談、点検・診断のメンテナンスサービスの提供に関して住宅医等が一本化して受け付け、情報を一元管理することにより、劣化補修、調査診断、性能向上改修、売却などの住まいに関するメンテナンスを効率的に行うことを提案しています。
また、既存住宅売買や改修に伴う融資、瑕疵保険付保、設備保証、24時間緊急対応、積立制度については、提携する専門事業者と連携することで対応し、幅広いサポートを可能にします。(図2)

図2 住宅医等による地域型住宅ワンストップ相談)

(6)今後の取組


平成31年2月に事業の仕組みの完了報告書を国土交通省に提出し、承認するとの通知がありましたので、平成31年度は、開発した仕組みの試行事業に応募し、採択されれば、住宅の改修等に上限100万円の補助が認められます。ただし、工事期間が限定されるため助成を実際に利用するのは難しそうというのが実感です。
助成が受けられるかどうかは別にして、今回開発した工事後のメンテナンスの仕組みはさまざまな知恵を結集してつくっていますので、詳しい報告ができる機会を持てればと考えています。