投稿日:2016年09月20日

住宅医スクール2016熊本 震災関連特別講義ダイジェスト03


住宅医スクール2016熊本 震災関連特別講義ダイジェスト03

 

9/17(土)、住宅医スクール2016熊本(第3回)開催しました。

今回の第4講義(ゲスト講義)は、「熊本地震の構造的被害②-調査分析報告②」と題して、京都大学生存圏研究所教授、五十田博先生に講義して頂きました。

その概要についてご報告します。(滝口/住宅医協会理事:スクール熊本担当)

 

熊本地震の構造的被害②-調査分析報告②

五十田博氏/京都大学生存圏研究所教授

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熊本地震の被害調査報告(9月現在)

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国総研の「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会(第3回)」が9/12に開催され、委員会報告書(案)が公開された。

(委員会の第3回配布資料はこちら)

益城町の悉皆調査結果から、倒壊数は1981年以前(旧耐震)で215棟、1981年~2000年までで75棟、2000年以降で7棟となっていて、2000年以降で7棟倒壊しているのが熊本地震の特徴である。新耐震基準はそれなりに効果があり、2000年基準も概ね妥当であったことから、委員会では現行耐震基準は妥当であったという結論を出している。よりたくさんの被害が出ていたら法律が変わったかもしれないが、今回はそこまでには至っていない。ただ、2000年以降で倒壊した7棟は問題がある。7棟のうち3棟は2000年基準が守られていなかった。

建築基準が計算で担保しているのは全壊してもよいが倒壊しないというレベルだが、施主は大地震が来ても一部損壊や半壊程度で済ませたいと思っており、倒壊による死者は防げてもこの要求レベルのギャップを埋めていかないと、地震が来るたびに社会問題が起こる。壁量の充足率を上げることでこのギャップを埋めていくことができるが、益城町でも壁量の充足率が2.0倍ほどあるものは、大きな被害が見られなかった。

 

倒壊と非倒壊をわけたもの

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大破以上の被害の要因は、1981年以前(旧耐震)では壁量不足、不十分な接合部、バランスの悪い壁配置、劣化、地盤変状など。前震で倒壊した建物のほとんどが旧耐震だが、接合部が外れて倒壊しているものが多い。実大実験からも分かるが、揺れで建物が倒れるにはかなり大きな変形を生じさせないと倒れないが、接合部が外れて倒れるのは比較的容易に起こるため、倒壊させないために接合部はとても重要。

1981年以降(新耐震)では、金物があっても2000年基準を満たしていない、金物に対して所定の釘が使われていない、筋かいの配置が悪い(圧縮は2.5倍、引張は1.5倍。これらがセットではじめて2.0倍になる)、ソーラーパネルにより屋根の重量が想定重量より増えているなど。ほんのわずかな違いだが、各々が致命傷になっていると考えられる。また、軟弱地盤による局所的な増幅なども考えられるが、地盤による要因は1割程度で、さほど大きくないと考えている。

 

木造の耐震設計の要点

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木造住宅は経験と勘が重要だと言われるが、大地震に対する経験と勘はそんなにうまく蓄積はされていかない。度々訪れる「経験したことのない揺れ」。新しいことを学んでいかなければならない。また、何が耐震的であるか?壁なのか接合部なのか材料なのか。これらは要素技術に過ぎず、建物全体の性能はこれらを設計・構造計画してはじめて分かるものである。正しい施工ももちろん重要である。

同じ壁量の建物でも壁の配置によって損傷が異なる。同じ材料を使っても耐震等級が異なれば損傷レベルも異なる。重い瓦屋根(要素技術)が悪い訳ではない。瓦屋根ならそれに応じて適切に躯体を設計すればよい。

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耐震性能は壁のバランスや接合部性能によって変わってくるが、接合部のN値計算では不足してしまうケースがある。2階柱の直下に1階柱が無い場合、2階柱の引き抜き力は、本来1階柱に伝わるが、N値計算では考慮されないため1階の柱が抜けてしまうことが起こる。

「国総研の地震応答解析(wallstat)」

から、今回の地震でもこのような1階柱の抜けが原因で倒壊した建物があったと思われる。実際に、軽いベランダの下部について、2階建ての1階の柱として計算されていると思われる被害例もあり、接合部の設計はとても重要である。

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また、材料(壁の性能や接合部の性能)にはかなりの安全率が掛けられている、限界値とされている値は倒壊限界まで余裕がある、積載荷重は実際の方が軽い、非耐力壁の存在など、耐震性能には設計する部分以外にも色々考慮されているため、品確法で1.5倍の設計をしても、全体の耐震性能は1.5倍にはなっていない。設計部分の性能値を確保することが最も重要だが、非耐力壁、重量、金物についても、設計値以外の部分の性能を下げる可能性があるので要注意。

これまでの実態を見てみると、これらの余力部分は想定よりもう少しありそうで、今回の地震については、設計値部分が1.5~2.0倍あれば、激震地でも十分倒壊しないと考えられる。

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木造住宅は単純な構造だからといってなめてはいけない。作用する力も抵抗する力も単純ということは、即倒壊するということ。壁配置や接合部などの設計は面倒と思われるかもしれないが、建防協の「誰でもできる我が家の耐震診断」にも専門家に最低限考えて欲しいことが書いてある。

地震に対しては是非余裕を持った設計をしてほしい。

 

以上

(※資料は五十田先生の講義資料より抜粋)