各地の住宅医の日々No42 ~気負いしない改修の道

水野 桂子 ( 水野建築研究所 / 住宅医 / 富山県 )

2度目の投稿となります。富山県から失礼します。
元日の地震の際、全国の知人からお気遣いの連絡を頂き、ありがとうございました。

その後、行政には耐震診断の依頼が殺到しており、結果を聞いて肩を落とされる富山県民が春頃から彷徨われているようです。地元の建設会社に耐震補強の相談をし、その金額にまたがっくり。
住宅医の仕事として、耐震省エネ改修に携わってきましたが、それに伴う工事金額が年々高額になっています。金額の根拠などを説明し、納得していただいてから工事に入りますが、その後もかかりつけ医として寄り添い、その名の通り、お医者さんの役割を頂いています。

他にも、予算の枠内で何とか改修をしたいという依頼もあります。
そうなると、優先順位を付け、耐震、省エネの範囲を決定しないといけなくなります。今回の地震をきっかけに、特に高齢者の方々から、このような依頼も増えるのではと考えています。

昨年かかわった物件(こもれびの家)が優先順位を付けた初めての物件となりました。
お父さんが建てられた家で、10年ほど空き家となっていたのですが、定年を迎え思い出の詰まったこの家に戻りたいという事でした。決して小さくはない平屋の家でしたが、畳の部屋がつながっている昔ながらの間取りでした。天井が黒光りをして欄間もありました。

平屋という事もあり、耐震については最低限の対処とし、断熱強化をしています。耐震は寝室のみの強化とし、断熱も範囲を限定しています。非日常となる玄関土間は断熱優先ではなく、暮らしぶりを優先。よい具合にお客さんとの交流に役に立っているようです。

また、一番日当たりの良い南の和室は、住まい手の強い希望であった外部デッキに。
ここは夏の花火を見たり、バーベキューをしたりと活躍しています。積雪のある北陸で、外部デッキはメンテナンスも大変です。木材の弱点でもある腐朽に考慮し、取り換えられるようにデッキの張り方を考えています。

耐震、断熱を完璧にできるのが一番ですが、高度医療に取り組むお医者さんではなく、近所のかかりつけ医のような、暮らしに寄り添う改修の仕方を学んだ住まいでした。

(写真:水野建築研究所, 文章:水野桂子)
©Mizuno Keiko, jutakui


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各地の住宅医の日々No8 水野 桂子 「便利なツールを武器にして」https://sapj.or.jp/jutakuinohibi2021-08/