投稿日:2019年07月31日

今年も補助事業が始まりました!


住宅医協会も参画している国の施策事業から、誰でも使える一般的な補助事業まで、住宅リフォームに活かせる代表的なものまとめました。性能の要件や実施期間の制約などありますが、補助情報を見落とすと後にクレームにつながる場合もありますので、リフォーム計画の前に一度は調べておきましょう。

<1.国の施策事業>

地域型住宅リノベーション協議会(試行事業)
住宅医協会とNPO木の家だいすきの会が主導し構築した「住宅ストック維持向上促進事業(国交省)」採択事業、「人生100年時代の住まいのトータルサポートシステム」について、今年度は試行事業の予算(上限100万円/件)を頂いています。

・地域型住宅リノベーション推進協議会構成員の宅建事業者による中古住宅の売買
・ローンを使用する場合は、飯能信用金庫の融資を利用
・住宅医等によるインスペクションと性能評価
・最低、安心R住宅相当の性能向上リフォーム(瑕疵保険、耐震)
・メンテナンスサービスの利用
・今年度中に完成
・・・と、かなり条件が厳しいですが、該当するかもしれないという案件がありましたら、ご連絡下さい。
※「人生100年時代の住まいのトータルサポートシステム」の概要は、コラム4月号に掲載しています。
https://sapj.or.jp/2019/04/

また、同協議会で別途応募した新規事業も今年度新たに採択されました。主に埼玉県西部の中山間地の空家や空家予備軍を対象として、一つは、移住希望者が最初は賃貸として居住を試し、地域に慣れた所で売買契約を行うという仕組みを作り売却や移住のハードルを下げ、それに応じて、売主と買主が段階的に改修できるよう、戸建て住宅版のスケルトン・インフィルの改修手法を検討します。もう一つは、上記「人生100年時代の住まいのトータルサポートシステム」で提案した住まい手の自主点検を、ICT技術によってサポートする仕組みを検討します。具体的には、住まい手が劣化箇所をスマホで撮影したデータを投稿すると、各地の住宅医等が閲覧でき、適切なアドバイスを回答するといったシステムで、医療機関で導入が進められている、新人医師の診断について遠隔でベテラン医師がスマホで検査画像を見ながらアドバイスする、といったようなシステムの住宅点検版をイメージしています。
これら、新規事業についても、情報やアドバイス等がありましたら、合わせてお寄せください。

地域型リノベーション推進協議会関係の連絡はこちら 滝口メール takiguchi@taki-studio.net

長期優良住宅化リフォーム推進事業
昨年同様、今年度も募集が始まっています。タイプ(レベル)別に3つの補助額が用意されています。

詳しくは、建築研究所ホームページ https://www.kenken.go.jp/chouki_r/index.html

住宅の省エネ・断熱リノベーション支援事業
戸建て・集合住宅を対象に、事前に登録された高性能建材の使用や15%以上の省エネ効果を条件に補助されます。

詳しくは、環境共創イニシアチブホームページ https://sii.or.jp/moe_material31/

既存建築物省エネ化推進事業
大規模用ですが、300㎡以上の既存住宅・建築物における省エネ性能の診断・表示に関する費用や、オフィスビル等の建築物の躯体(外皮)の省エネ改修費用を支援しています。
詳しくは、既存建築物省エネ化推進事業評価事務局ホームページ http://hyoka-jimu.jp/kaishu/

※主な省庁の補助事業一覧ページはこちらから
(国土交通省:平成31年度公募一覧) 
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_mn_000002.html
(環境省:H31年度補助・委託事業) 
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/biz_local.html
(経済産業省(資源エネルギー庁)平成31年度公募一覧) 
http://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/
(林野庁:逆引き事典) 
https://www.gyakubiki.maff.go.jp/appmaff/input?domain=R

<2.自治体の助成事業>
自治体によってメニューや助成額にバラつきがありますが、耐震診断、耐震補強、断熱改修、省エネ設備導入、介護改修、高齢者対応、防火改修、地域材利用、防音対策など、様々な助成事業が行われています。
まずは、対象となる「都道府県・市区町村名」と「上記の各キーワード」で、検索してみましょう。
介護保険の住宅改修・福祉機器レンタルについては、全国一率の助成がありますが、介護認定やケアマネージャーの許可等が必要になるため、該当する場合は担当のケアマネに相談してみましょう。

<3.消費税増税対策>
10月の消費税率引上げに備え、住宅ローン減税、すまい給付金、次世代住宅ポイント(リフォーム最大30万円相当)、贈与税非課税措置などが用意されています。

次世代住宅ポイント事務局ホームページ https://www.jisedai-points.jp/

住宅取得にかかる対応一覧についてはこちら (国土交通省ホームページ) 
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr4_000036.html

<4.減税措置・保険割引>
耐震、断熱、バリアフリー等の性能向上リフォームを行うと、減税や保険割引なども受けることができます。手続きが煩雑で少額なメリットかもしれませんが、こちらも忘れずにチェックしておきましょう。

リフォーム減税制度の詳細はこちら  (リフォーム推進協議会HP) http://www.j-reform.com/zeisei/

火災保険(地震保険)は、建築年割引や耐震等級割引だけでなく、耐震診断割引もあります。詳しくは利用している保険のホームページを調べてみましょう。

以上、主要なものをご紹介しましたが、その他、利用できる制度や事業もあるかと思います。毎年変わる国の施策助成事業や地域によって様々な自治体の助成事業は、物件毎に、その都度最新情報を調べる必要がありますが、これらの情報提供や活用も、より良いリフォームを実現するための住宅医の仕事の一つです。面倒な仕事ですが、頑張りましょう!

投稿日:2019年07月31日

住宅医の改修事例報告 90例目



愛知県「古材梁を眺めて暮らす家」改修工事
報告者:株式会社戸田工務店 鵜飼顕路/住宅医

改修概要
設計者:株式会社戸田工務店 鵜飼顕路/前田佐夜子
施工会社:株式会社戸田工務店 原田孝一
主要用途:一戸建ての住宅
規模:木造平屋建て(基準法上は木造2階建て)
建築面積:149.00㎡
延床面積:194.27㎡
工期:2016年5月~2017年3月

建築地の気候風土
省エネ地域区分は6地域(温暖)で、年間日射地域係数はA4区分で日射量が多い地域です。

改修に至った経緯
ご家族構成:60歳代ご夫婦の2人家族。敷地内のすぐ隣に息子さんご家族が住まわれている。
お食事のときにしか利用していない住まいになっていたが、2代前が建てられたお家で、終の棲家として残せないか考えられて計画が始まりました。

既存建物
築年数は100数年で、この地域によくある農家住宅になります。
過去に玄関から東側の土間だったところを改装して住まわれていました。
玄関より西側、小屋裏は建築当時のままになります。


1F平面図 (改修前)
2F平面図(改修前)

既存建物調査


改修建物

1F平面図(改修後)
2F平面図(改修後)

矩計図(改修後)

ご要望
ご要望は特別な要望はなく、提案した中で細かなご要望が生まれ打合せが進みました。
大きなご要望としては、下記2点があげられました。
・どう活用したらいいかわからない。
・今後の暮らしを愉しめる住まいにしたい。
⇒利用されていない部屋が多いので活用しやすいように、LDKを住まいの中心にさせて頂き、和室も日頃から利用したり、上を見上げると吹抜けから光を感じたり、これまでの生活では見ることなかった梁を眺めることができるようになり、暮らしを愉しめるようにしました。
また、インテリアとして、おしゃれな古建具を購入し、LDKまわりに配置しアクセントとしました。
また、水回りの動線は、寝室からも行きやすく、また奥まった位置に配置し、プライバシーの確保を配慮しました。

工事写真(基礎部)

解体後、曳家を入れ建物を持ち上げている様子。その後基礎工事になり、柱下部、立上りを施工後、建物を下して底盤を仕上げ基礎が完成。足固めを入れ直し、床組を施工していきました。

耐震改修

1F平面図(改修後)

2F平面図(改修後)

評点は、0.33⇒1.00

断熱改修
天井断熱:アクリアネクストt-105×2
一部下屋根:フェノバボードt-60
外壁:荒壁パネル+フェノバボードt-30 ※荒壁パネル 土壁として計算
一部外壁:アクリアネクストt-85+フェノバボードt-30
床:フェノバボードt-45
※既設
屋根・床:断熱無
壁:土壁
サッシ:アルミサッシ

※Q値はC値を測定していないため正しい値ではありません。

性能診断結果概要

完成写真

外観(改修後)


ダイニング天井
ダイニングキッチン
リビング
フリースペース (2F)
玄関                       面格子

     

総括
既存建物の形状は変えずに、ご要望としてあった、暮らしが愉しく感じられるすまいを提案することを第一に、古民家の風情が感じられる範囲での性能向上に努めました。
耐震性能は、合板を極力避け、荒壁パネルを採用して剛性をもたせながら粘りのある耐震計画として、評点で1.2程度を目指していました。ただ、面積の大きい建物であったのと、内部の基礎が、玉石固定の基礎(基礎Ⅲ)としているため、思ったほど上げることができませんでした。
断熱改修は、荒壁パネルを採用したため、外張りでしか断熱材をいれられていませんが、元々の土壁だけ、シングルガラスに比べると生活環境は改善されたのではないかと思います。
今後の課題として、内部もベタ基礎を新設し、耐力壁の効果が発揮できるようにしていきたいと考えています。(評点を1.5以上) 断熱改修の課題として、昨今の断熱性能レベルが飛躍的に増しているのでもう少し性能向上をさせていきたいです。また、耐震、断熱以外の性能向上も配慮して計画していきたいです。

投稿日:2019年07月03日

住宅医の改修事例報告 89例目


大阪府「畷のいえ」改修工事

報告者:Ms建築設計事務所 酒谷明日香/住宅医

改修概要
設計者:Ms建築設計事務所 三澤文子 担当:酒谷明日香
構造設計:TE-DOK(河本和義・星合健太郎)
施工会社:木又工務店
主用途:一戸建ての住宅
規模:木造平屋建て(基準法上は2階建て)
敷地面積:830㎡ (251坪)
改修部建築面積:131.79㎡ (39.87坪)
改修部延床面積:191.19㎡ (57.89坪)
工期:2018年9月~2019年5月

建築地の気候風土
省エネ地域区分は6地域(温暖地)で、年間日射地域係数はA4区分で日射量が多い地域です。

改修に至った経緯
ご家族構成:70代ご夫婦の2人家族。娘2人は独立してそれぞれ家庭を持っています。
将来、車いすの生活になったときに対応できるように段差の無い住まいとし、娘家族も同居することができるようにしたいとお考えでした。当初は新築にするか改修にするか迷っておられましたが、新築の場合は、現在道路境界線までいっぱいに建っている家や、同じ敷地内の蔵をセットバックで減築しなければならず、改修をお勧めしました。

既存建物
築推定180年の藁葺き又首(さす)構造平屋建ての建物。北側は過去に増築した離れに繋がります。






既存建物調査

屋根:金属屋根の塗装剥離、全体的なうねり(波打ち)を確認した。

床下:基礎は石場建て。大引きに5カ所の蟻害を確認した。

小屋裏:合掌部分が3本折れているのを確認した。ヒアリングにより、過去の台風時に折れていたことが分かった。接合部は藁縄で結ばれているが、複数個所、経年劣化により縄が切れていた。

内部:和室(1)の天井板めくれを確認した。上部屋根が谷で複雑になっている部分で、周囲の床は傾いていた為、雨の進入があると考えた。

改修建物



・2階部分は既存の梁と新規集成材梁(梁せい270~300)を995mm間隔でボルトにより緊結する。

・改修範囲の基礎は全てべた基礎を新設した。柱は柱脚を切断してコラムをサポートにして固定する。柱に土台を接合して、土台は鋼製束で支える。アンカーボルト、ホールダウン金物は土台に設置しておく。

立ち上がりコンクリートは、基礎幅を200mmとし、土台と型枠の隙間65mmからコンクリートを流せるようにした。

ご要望 

・駐車場から室内まで段差なくアプローチができる。

⇒改修前から北側の勝手口をメインの入口として使っておられたので、北側のアプローチの段差を全て解消し、駐車場から車いすのまま室内に入ることが可能となりました。

・2階を居室として、2世帯でも住めるようにしてほしい。

⇒小屋は合掌材が数本折れており、虫害も複数見られたことから、2階部分は全て解体して、新築同様に作り直すこととしました。元々は小屋裏とはいえ、天井高さは1.4m以上あり、簡易的な階段も設置されていた為、建築法上では2階でしたので、「増築」には当たりません。


撮影:畑拓

・キッチンと茶の間(食事室)を近くしたい。
⇒当初のキッチンはパントリー(収納)として、キッチン を西側へ移動 しました。
・奥さんの趣味の絵と、道具置き場が欲しい。
・トイレを設置してほしい。(現在離れにトイレがある。)

⇒広縁の一部にトイレを設置。トイレの壁は耐力壁として、併せて 耐震性も向上しました。

劣化対策(維持管理)

・床下点検口、天井点検口を必要箇所に設置。
床下点検口の穴を空けることで、床上・床下の空気を一体にして、 床下に湿気が溜まらないようにしています。

・外壁通気

・屋根通気
雨漏れの原因となっている北側下屋の屋根の谷を無くし、屋根形状 を整理しました。

耐震性能

・構造評点

1階で2階の荷重がかかる部分には、柱を追加しました(3カ所)。

外壁廻りの土壁は残して、南北の壁は外側から構造用合板を張っています。東西の壁は隣地境界いっぱいに建っていた為、内側に120角の柱を建てて、構造用合板を張り耐力壁としました。 内部は柱・梁以外全て解体した為、構造用合板の大壁仕様/真壁仕様を使い分けて耐力壁を配置しています。


断熱性

・漏気を考慮して、Q値は2.12 W/㎡K。
・気密測定を実施した結果、C値が8.3 c㎡/㎡であった。基礎上の気密パッキンが効いていないこと、外壁~下屋部分の気密処理が曖昧であったこと、外壁の土壁を残している為、外壁とサッシ等の取り合い部分に隙間が生じていること等が考えられる。

壁:PFB(パーフェクトバリア)120 mm柱間充填、フェノバノード50 mm(外断熱)

屋根:フェノバボード120mm

天井:PFB(パーフェクトバリア)200 mm

サッシ:樹脂複合アルミサッシ

撮影:畑拓

省エネ

・給湯器:エネルギー消費量の多い電気温水器からガス給湯器に変更。

・暖房:主な暖房機器をガスファンヒーターからエアコンに変更。

・電球は蛍光灯からLED電球に変更。

バリアフリー性


撮影:畑拓

・段差のない勝手口(外部から車いすでアプローチ可能)

撮影:畑拓

火災時の安全性  【法22条地域】

・延焼の恐れのある外壁は防火構造、屋根は不燃材(ガルバリウム鋼板)葺き。

・コンロ付近の天井・壁は不燃材(プラスターボードの上EP塗装)。

・キッチン、居室には火災警報器を設置 。

性能診断結果概要

■完成

撮影:畑拓

応接間
キッチン
座敷
茶の間
ホール
玄関土間
フリールーム

■総括

外観は以前のプロポーションを大きく変えず、2階部分を新築して、2世帯住まいが可能となりました。アトリエやトイレの増設など、要望に応えながら、耐震性・断熱性をはじめ、六つの性能をバランスよく向上できたと思います。

バリアフリー性能については、室内、室外ともに段差だらけでしたが、駐車場から室内に至るまでの段差を解消し、内部の段差もほぼ無くすころが出来ました。コストダウンの為、出来る限り既存建具を再利用しましたが、既存建具の幅に合わせて壁位置を決定した部分が有効幅650 mmであり、新規建具で有効幅750 mm以上を確保するべきであったと反省しています。

気密性能については、C値8.3 c㎡/㎡で、改善の余地があると感じました。「改修工事だから」と割り切らずに、今後は改修時C値5.0 c㎡/㎡以内を目指したいと思います。