投稿日:2019年04月11日

住宅医スクール2019 募集開始のお知らせ


10年目を迎えた住宅医スクール。

今年はリニューアルして皆様をお迎えします。

住宅医となって正しいリフォームを広めていきましょう。

申し込み・詳細プログラムはHPで 


https://sapj.or.jp/aboutschool/school2019-1/

投稿日:2019年04月09日

住宅医リレーコラム2019年4月


特定非営利活動法人木の家だいすきの会
 代表理事 鈴 木  進

人生100年時代の住まいのトータルサポートシステムの構築 報告

住宅医協会、NPO木の家だいすきの会ほか、金融機関、宅建事業者、工務店、設計事務所等が参加する「地域型住宅リノベーション推進協議会」を立ち上げ、平成29年度・30年度の2ヶ年にわたって住宅ストック維持向上促進事業(国土交通省助成)に応募し、採択されました。今年の3月には仕組みの完成報告書を提出し承認されましたので、この場をかりて事業の概要を報告したいと思います。


(1)概要


地域の木材を使用し気候風土にあった在来軸組工法の既存住宅(地域型住宅)を消費者が安心して購入・売 却、メンテナンス、劣化補修、及び性能向上改修できるよう、専門的な研修を受けた住宅医(建築士)等が窓口 となってワンストップサービスを提供した上、一定の住宅性能の住宅として認定し、リバースモーゲージローン やリフォーム一体型住宅ローンの金融商品を利用できる仕組みを開発しました。


(2)メンテナンスサービスのパッケージ化


メンテナンスサービスは基本サービスと有料のオプションサービスからなります。基本サービスには、住宅履歴情報の保管、ワンストップ相談、住まいの健康管理表の作成、住まい手による自主点検のサポート、定期点検から構成され、住宅医等が所属する設計事務所と工務店により提供可能なサービスです。また、有料のオプションサービスには、劣化診断、シロアリ点検、瑕疵担保責任保険、住宅設備機器の10年延長保証、24時間365日緊急対応サービス、修繕積立からなり、劣化診断を除き連携企業による提供を考えています。
この中で、一番、苦心したのは、定期点検です。というのは、定期点検は工務店が0.5人工程度で実施できる内容(経費約2万円)ですが、この費用を建て主に払って頂けるかというと、現在の段階では、「2万円も払うのなら、定期点検は要らない」と考える方が多いのではないか、ということが見えていたからです。住宅ストック維持向上促進事業に取り組む全国のグループも同様の悩みをかかえ、いろいろな工夫をしていました。当協議会の提案は、工事とその後のメンテナンスを一体的にサービスして、工事費に載せてお支払い頂くという方法としました。


(3)15年周期のメンテナンススケジュール


屋根・外壁の劣化補修は、足場を組んでの作業が必要になりますので、30坪の住宅で300万円前後の費用がかかります。これをどの程度のインターバルで実施するかは、ライフサイクルコストに大きな影響を及ぼす要素となります。例えば、40代前半で新築して、10年サイクルで劣化補修をしたとすると、70代までに少なくとも3回必要となります。これが15年サイクルになれば、2回で済みます。
マンションの修繕積立金の負担額は月2万円程度が多いそうですが、この程度の負担で実施可能なメンテナンススケジュールを検討してみて、15年周期のメンテナンススケジュールを提案しています。(図1)

図1 メンテナンス・スケジュール


(4)住宅の認定


認定住宅とは、新築または改修とメンテナンスの一体的サービスにより、一定の住宅性能を持ちかつ丈夫で長持ちする住宅で、住宅医等(*1)が認定した住宅です。ブランド化することで、消費者にその価値をアピールすることをねらいとしています。住宅性能の要件は、新築、改修いずれの場合も、新築時に義務化された瑕疵保険の検査基準に適合することを基本に、3つの住宅性能レベルを設定しています。

表1 住宅性能の要件


(5)住宅医等によるワンストップ相談


ワンストップ・ショッピングはスーパーマーケットの最大の強みで、行けば必要な買物はほぼ全てできるので大変便利です。住まいのワンストップ相談も同様に、新築・改修、維持保全、売買など住まいのことには、全て相談にのってもらえる窓口です。住まい手は、日頃の維持管理、小さな補修、設備の交換、大規模な性能向上改修など、相談先は設計事務所なのか、工務店なのか、メーカーなのか迷うところですが、全て相談にのってもらえる窓口が一本化していれば迷うことなく大変便利です。
一方、住まい手との緊密なコミュニケーションは、小さな補修工事だけではなく大規模な性能向上改修工事にもつながり、設計事務所・工務店にとっても大切な活動です。

●住宅医等によるワンストップ相談
かかりつけ医のように、履歴、相談、点検・診断のメンテナンスサービスの提供に関して住宅医等が一本化して受け付け、情報を一元管理することにより、劣化補修、調査診断、性能向上改修、売却などの住まいに関するメンテナンスを効率的に行うことを提案しています。
また、既存住宅売買や改修に伴う融資、瑕疵保険付保、設備保証、24時間緊急対応、積立制度については、提携する専門事業者と連携することで対応し、幅広いサポートを可能にします。(図2)

図2 住宅医等による地域型住宅ワンストップ相談)

(6)今後の取組


平成31年2月に事業の仕組みの完了報告書を国土交通省に提出し、承認するとの通知がありましたので、平成31年度は、開発した仕組みの試行事業に応募し、採択されれば、住宅の改修等に上限100万円の補助が認められます。ただし、工事期間が限定されるため助成を実際に利用するのは難しそうというのが実感です。
助成が受けられるかどうかは別にして、今回開発した工事後のメンテナンスの仕組みはさまざまな知恵を結集してつくっていますので、詳しい報告ができる機会を持てればと考えています。

投稿日:2019年04月09日

住宅医の改修事例報告 86例目


熊本県「菊池の家」改修工事

報告者:Space Lab.一級建築士事務所 佐藤健治/住宅医

■改修概要
設計者:Space Lab.一級建築士事務所 佐藤健治
報告者:Space Lab.一級建築士事務所 佐藤健治
所在地:熊本県菊池市
用途:一戸建ての住宅(農家住宅)
築年数:62年
(1951年:新築→1971年:増築→数度のリフォーム→現在に至る)
構造:木造2階建/在来軸組工法
家族構成:4世帯(7人)
延べ床面積:164.22㎡
改修床面積:164.22㎡(内、増築6.24㎡)
工期:2014年12月~2015年4月(約5ヶ月)

建築地の周辺環境
のどかな田園風景の中に、小さな神社が点在する

改修に至った経緯
希望予算内では、新築で4世帯が住まえる間取りは難しかった為

■改修の希望内容
屋根全葺き替え
外壁全張り替え
電気配線全取替
浄化槽の新設
住宅設備、配管全取替
4世代が住まえる間取り

改修前
〈劣化対策〉

  • 小屋裏換気は設けられていなかったが、気密性が低かったため、小屋裏の状態は悪くなかった。
  • 雨漏れが未補修で、天井材が剥がれたままだった。
  • 外壁は、サイディング及びケイカル板のようなものが構造躯体に直貼りしてあり、コーキングがなく、 浮き、剥がれ見られ、北面はカビが発生していた。
  • 浴室の躯体が水漏れにより腐朽していた。

〈耐震性〉

  • 昭和46年の増築部はブロック基礎、その他は、無筋コンクリート基礎だった。
  • 壁は、一部土壁で、その他は、柱のみで、筋違は全く入っていなかった。
  • 屋根は、セメント瓦葺き。
  • 柱材の本数が著しく少ないうえに、雨漏れにより腐食もしていた。

〈省エネルギー性〉

  • 給湯器は、省エネタイプではない一般的なものを使用していた。
  • 暖房は、エアコンと石油ファンヒーターを使用していた。
  • 照明は、白熱電球及び蛍光灯だった。
  • 湿式の浴室で、保温性が悪く家族が多いので冬場は入浴の都度たし湯を行っていた。

〈バリアフリー性〉

  • 玄関及び土間は200~300mmの段差があり、各部屋間にも10mm~30mmの段差があり、つまずきやすい状態だった。
  • 階段は急勾配で手摺はなく踏面も狭かった。
  • 浴室は、湿式で浴槽は深くて小さく高齢者には、跨いで入るのが大変そうだった。

〈火災時の安全性〉

  • 防火地域の指定はなく22地域外。
  • 収納が少なく物があふれ、避難経路が確保できてない状態だった。
  • 内装は、プリント合板で防火性のないものだった。
  • 電気配線が古く漏電の恐れがあった。
  • 屋根、外壁共に劣化し防火性が期待できない状態だった。

■平面計画
〈一階平面図〉

■改修後
〈劣化対策〉

  • 屋根をガルバリウム鋼板及び陶器瓦に全面葺き替えを行い、軒先及び棟換気を設けた。
  • 外壁をサイディング張りに全面張替え、通気層を設けた。
  • 浴室をUBに取替に伴い腐朽していた構造体の取替を行った。
  • 腐朽している土台や柱・大引きは撤去し、新たな材を使用した。
  • 設備の更新に伴い、配管の全取替を行った。
  • 軒を深くし(1m)、外壁の劣化防止に努めた。

〈耐震性〉

  • 基礎のひび割れ部分は、補修を行なった。
  • 腐朽している構造材は取替え、床束、大引、根太を増し補強を行った。
  • 柱を3尺ピッチで増やし、筋違や構造用合板で耐力壁を設けた。
  • 接合部は、新規金物で補強した。
  • 床は、捨て貼りで構造用合板 12mmの上にフローリング15mm仕上げとした。
  • 屋根は、一部をガルバニウム鋼板とすることで、軽量化を図った。

〈断熱性〉

  • 天井:ロックウール100㎜
  • 壁:ロックウール75㎜
  • 床:A種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b50㎜
  • 1階リビングライニングは、天井も他の居室より面積が広く、滞在時間が長い為天井にA種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b50㎜を施した。
  • 窓は、一部を除いてアルミサッシのペアガラスに取り替えた。

UA値 改修前4.11改修後0.92  NA値改修前8.7改修後1.6

〈省エネルギー性〉

  • 設備機器を取り替えた。(給湯器、トイレ、水栓)
  • エアコンは、省エネ性能の高い新型に買い替えた。
  • 照明は、一部を除いてLEDに変更した。
  • 浴室は、ユニットバスに変更し、追炊きのできるものとした。
  • 屋根、外壁の全面交換を行ったことで気密性の向上を図った。
  • すだれの設置し、冷房負荷の低減を行った。

〈バリアフリー性〉

  • 床を張替、室内の段差を解消した。
  • 階段は、掛替を行い、勾配を緩くした。
  • 玄関上がり框、トイレ、廊下、階段には手摺りを設置した。
  • トイレを和式から洋式に、浴室はUBに取替た。
  • 玄関ドア及び各部屋間の建具は、引戸とした。
  • 玄関アプローチにスロープを設けた。

〈火災時の安全性〉

  • 平面計画を整理し、室内の段差を解消することで、避難経路の確保及び明確化を図った。
  • 内装は、下地プラスターボード9.5mmに準不燃のヒビニールクロス仕上げとした。
  • 全ての電気配線のやり替えを行った。
  • 屋根を耐火性に優れたガルバリウム鋼板と陶器瓦とした。
  • 外壁をサイディング張りとした。
  • キッチンの取替を行い、周囲には不燃のキッチンパネルを施した。

■性能診断結果概要

※今回、一次エネルギー評価を行っていない為
  省エネルギー性の値は出ていない

■総括

  • 本物件は、住宅医スクール受講以前の物件であり、主に耐震性及び断熱性の知識が不足していました。今後は、基礎補強を含めた総合的な耐震性能の向上に努めて行きます。
  • 4世帯が住まえるプランにすると共に、安心して住まえる住環境の向上を目指し、意匠的に心地の良い空間と耐震性
  • 省エネルギー性の向上を限られた予算の中で追求しました。
  • 屋根の形状は、改修前とほぼ同じだが、外観の雰囲気が変わりつつも、リビング天井には、既存の梁が見えたりすることから、懐かしさと、新生活のわくわく感の両立が出来たのではないかと思います。
  • 省エネルギー性の向上を限られた予算の中で追求しました。
  • 屋根の形状は、改修前とほぼ同じだが、外観の雰囲気が変わりつつも、リビング天井には、既存の梁が見えたりすることから、懐かしさと、新生活のわくわく感の両立が出来たのではないかと思います。

佐藤健治