No.0114 予算からの最適解をもとめて「三宅町の家」

篠田 三起子(株式会社創造工舎Buku暮らしの中のデザイン室/住宅医/奈良県)

所在地:奈良県磯城郡三宅町
地 域:第一種住居地域 市街化区域 60/200
主用途:住宅
建築年:約70年
家族構成:3人(ご夫婦、長女30代)

規 模:伝統工法 木造
建築面積:189.2㎡(57.3坪)※改修建物
延床面積:285.21㎡(87坪)
改修面積:1階91.34㎡/小屋裏11.7㎡
※31.22坪の改修と劣化の改善工事

期間:6ヶ月
年間日射量:A4区分
暖房日射量:H2区分

 

story

今回改修した物件は、先代が建てた伝統工法の建物で、2年前から空家となり、施主が時々管理を行っていました。
こちらの地域はかつては貝ボタンの小さな工場が栄えた場所で、その名残が残っています。

現在社宅マンションにお住いの施主家族は3人暮らし。定年を機に残された生家を快適に安全に暮らせるように終の棲家に改修したいが、何からどのように考えれば良いのか見当がつかないとお悩みの様子でした。

施主の希望をあげると
外にある浴室、トイレを家に取り込みたい、車は2台止めたい、畑もしたい、隙間が多く傷んだところを治したい、大きな間取りを活かし暮らしを楽しみたい。など漠然としたものでした。ただ予算は1000万位を希望されていました。

お話しを聞いていて、経験的に、この規模の建物の改修となると予算が相当に厳しい!さてどうしたものか・・・。
すべての要望を満足にかなえるとしたら5000万!?
ご家族にとって何が最適な答えなのでしょうか・・・。
一度はお断りしました。

今なら、選択肢として現実的で合理的にマンションを購入することも出来るし、大きく予算の無理をされることは良くないと考えました。計画に入る前にご家族のライフプランを考えなおしていただくことをお勧めしました。

結果、もう少し予算を見直すので何とか出来ないかと再依頼をいただきました。
ご夫婦の答えは先代が残してくれた、快適な住まいというだけではなく「想い出のつまった家を住継ぎたい」という想いが勝ったものでした。

現状平面図

改修の整理(優先順位の計画)

建物の性能の改修計画の優先順位


建物全体:劣化の改善、カビの除去、床下の防湿、樋やり替、瓦の補修、外壁の補修

改修部 :軸組の健全化、蟻害木部のやり替、小屋裏(2階)の剛性の強化-構造用合板t12
■■■■■断熱性能の強化、エリア断熱を目指すも結果UA値1.01(W/㎡.K)

設 備 :石油給湯器→エコキュートへ、蛍光灯→LEDへ
■■■■■水回りを宅内へ取り込み健全化

 

建物全体の劣化の改善を最優先とし、内部は過去に改修した形跡を建築当時の豪快な姿へ戻し、改修部の足元は防湿コンクリート及び根固めを施し、建物の特性を生かす素直な計画へ。

間取りは家族が長く過ごす居室部分を南面に配し、パッシブエリアを活用した計画をおこないました。

予算の配分としては、改修面積を絞り、住まい手の暮らし方の工夫などや温熱性能をどこまでもっていくかと予算のシュミレーションを話し合いながら、費用対効果を話し合いながらすすめていきました。

 

既存建物状況

改修前と改修後の性能

改修前                               改修後

+

 

計画

改修前➡改修後

 


改修のエリアわけ

 


工事中


改修後の冬の室温調査


温熱環境の計測

 

これからの暮らし方について -改修が終わってからの住まい手の課題-

メンテナンスについて
・瓦屋根は今回は葺替に至らず、棟瓦や傷んだ部分の差替えやズレを直したり漆喰の補修にとどめたので定期点検やのちには葺替えも念頭に今後の資金計画をお願いしました。

耐震について
・部分改修であったのもあり、軸組と足元の健全化と床の剛性を追加するのみの工事であったが、今後の強化の方法としては耐震リングなど制振装置での補強の後付けを可能としました。

断熱が不十分で終わった場所について
・既存のままの座敷と取合いの間仕切り建具の工夫方法や夏の小屋裏(2階)の過ごし方などをアドバイスし、 これからの暮らし方の知恵や、工夫、改善などを楽しみながらアップデートしていただければと話し合い工事を終えました。

改修においては、其々の家の条件や環境が違うのは当然で、その家庭に合った豊かな暮らしとは、最適解は何かと手繰り寄せる中で、答えを導く第一のカギは事前診断の精度だと感じています。経験や勘も時には役にたちますが、予測できない事柄をできる限り少なくして、改修後の予算や性能に狂いがないようにと考えています。現在完工から2年目を迎え、施主のその後の暮らしぶりなど、満足の様子から約束は果たせたのではと感慨深いものがあります。

-いきものスケールで考えたい-
Buku暮らしの中のデザイン室 篠田三起子


洋室~ホール~階段

 

通り土間

土間断熱を施し通り土間再生、収納は先々代の箪笥を設置


洗面トイレの入口はお家に眠っていた古建具をリメイク

 

L D K

その後の暮らし・・・

施主から送られてきた画像のプレゼントです。
マンション暮らしの時は手狭で山登りやマウンテンバイクが趣味の娘さんはそのうち家を出ていくと宣言されていたそうです。
ところが、この家が出来ると小屋裏スペースを占領し、山グッズを飾り、暮らしをとても楽しんでられるそうです。
そして、家族の食を囲んだ時間が増え、奥様も草花を飾ったり充実した日々をおくられているそうです。

小屋裏収納(2階)