№0112 将来にわたり施主と住宅にかかわるための第一段階としての改修 (愛犬とともに暮らす家)
佐藤 和敬(住宅医 / 東商住建 /東京都)
計画概要
東京都江戸川区南小岩にある築44年の木造住宅の改修です。
改修対象は木造の密集地にたつ木造2階建て住宅。隣地の木造三階建て住宅にすむご夫婦と子(娘)と愛犬(シェパード)が施主となるご家族からの依頼でした。
建 物 概 要
・所在地■■ :東京都江戸川区南小岩
・用途地域等 :第 1 種住居地域、第 2 種高度地区、準防火地域
■■■■■■■ 建ぺい率 60%、容積率 300%
・省エネ基準 :地域区分 6 地域
・築年数 ■■:1974 年(昭和54年) 築 44 年(改修時)
・主要用途 ■:一戸建ての住宅
・構造規模 ■:在来軸組木造、地上 2 階建て
・延床面積 ■:82.35㎡
・設計・施工:東商住建株式会社
改修コンセプト
施主はご両親がお住まいだった家屋(改修当時空き家:西棟)と隣地にある現在お住まいの家(東棟)を近々のリフォームと建物の使い方やメンテを相談できる工務店をお探しでした。
計画当初は雨漏り・結露・湿気などの影響による劣化の修繕のみのお話でしたが、今回のリフォームをきっかけに住まいのかかりつけ医と、所有する2棟(空き家:西棟、現在お住まいの家屋:東棟)を、かわる内外の変化にあわせその都度相談しながらリフォームすることを考えるようになりました。
今回のリフォームで望まれたのは、劣化の改善とともに接客・趣味の料理・愛犬と共に過ごすのためのセカンドリビングとしての改修でした。
1 F
上(北)と西(左)が道路に囲まれた角地となっています。南(下)は駐車場となり日当たりは良好な敷地となっています。
2 F
建物調査
現状を把握するためインスペクションを行いました。
耐 震 性
天井裏での構造要素の調査
テストハンマーでコンクリートの強度調査等の基礎調査
床構面の強さの調査
調査の結果、上部評点は0.26となりました。
断 熱 性
天井断熱無し
壁断熱材:GW10K 50㎜天井高まで
床断熱材:なし
開口部■:アルミサッシ+シングルガラス
玄関ドア:アルミ引き戸+シングルガラス
↓
UA=2.36W/㎡K
であることがわかりました。
劣 化 対 策(耐久性) 調 査(解体後調査)
下屋の取り合いは雨漏りによる腐朽がひろがっていました。
そのため外壁部分の下地・柱ともに交換が必要となることが分かりました。
改修前のレーダーチャートは以下の通りとなりました。
計 画
1 F
出来る限り間仕切りを撤去しワンルームとしました。愛犬との過ごしやすい時間を優先したリビングをご希望されました。また、水廻りも愛犬の世話を見るのに楽になるよう広くとることとなりました。
2 F
2階は耐震性の向上と建具交換による断熱性・耐火性の性能向上のみを計画しました。
性 能 向 上 工 事
工事内容は以下のようなものとなりました。
・耐震性能向上
外壁の玄関面は特に開口が多く、また階段の取り合いとなる壁でもあったためフレーム耐震壁をつかい玄関部分に耐力壁を配置しました。
コボットを筋交いの代わりにバランスよく配置し、金物補強により計画・工事の評点は以下の通り1.06となりました。
・断熱性能向上
複合サッシ+LOW―Eガラス(防火)
・壁断熱
アイシネン 105㎜
・床断熱
ミラフォームラムダ 75㎜
・天井断熱
一階のエリア断熱とするため一階の天井にGW16K100㎜を敷き込みました。
・劣化対策として今回のリフォームのきっかけとなった雨漏り対策のため内樋を撤去し新たな軒先を改修することになりました。
■■■■■■■■
性能向上工事まとめ
工事後のレーダーチャート
完 成
1ルームプランと可動家具で様々な用途に使えるLDKとしました。
愛犬のお世話のためにFRP仕上げの浴室(トイレと一体)とし限られたスペースで広く使えるようにしました。
今回の改修の位置づけと将来にわたるかかわり方
建築士(住宅医)として、住宅施主(居住者)・建物・建築士の3者が将来にわたりどのように調査・改修を通じて社会的な資産として2棟の変化に携わっていくのかをまとめたものです。
今回の西棟のリフォームの位置づけは上記の通り改修計画の入り口にあたるものとなっています。続いて東棟の調査改修となり、将来にわたってかかりつけ医として携わることで全体が無理なく高性能な住宅をストックとなるようなものとしたいと考えています。対象住宅の将来の使い方等を地域の不動産会社など異業種の方々とネットワークをつくり魅力ある災害に強い地域となる一助となるよう活動していきたいと考えております。