№0066〜埼玉県「北秋津のいえ」

設計者:MSD/三澤文子
報 告:仕立建築舎/平賀基香
所在地:埼玉県所沢市
地 域:第一種低層住居専用地域・第一種住居地域
主用途:一戸建ての住宅
築年数:築342年(寛文12)
規 模:木造2階建て
敷地面積:742.96㎡ (224.75坪)
建築面積:211.87㎡ (64.09坪)
延床面積:266.52㎡ (80.62坪)
着  工:2016年1月
竣  工:2016年12月
(工事期間12ヶ月)
長期優良住宅化リフォーム推進事業採択

「北秋津のいえ」の特徴は何といっても築340年超という履歴です。改修前は茅葺きに鉄板で覆うという佇まいでしたが、家への愛着を持っておられる住まい手さんが大切に住み継がれてきた歴史を感じるお住まいの改修工事となりました。

実は、今回の改修のお話しがある数年前に水廻りのリフォーム(下図 改修前平面図の水色部分)をされていた「北秋津のいえ」

改修前平面図

あるきっかけで住宅医による詳細調査を行い、報告内容(300年以上の住宅のため、点数をつけるといい数字が並ぶ訳がありません
)を目の当たりにされた住まい手さんは「是非、全面的に改修して今後何百年も住み継いでいける家にしてほしい!」と強いご要望があり今回の改修工事のスタートとなりました。

計画当初は改修前の平屋を踏襲し、耐震性や断熱性の強化を図りながらプランを計画していましたが、住まい手さんの強いご要望から二階建ての計画となりました。

改修後1階平面図(赤点線が2階部分)

 

改修後2階平面図

【解体工事】

解体作業の様子

 

解体中

曳家や揚屋をすることなく、基礎を新設する工事を行いました。
住宅医スクールの講義内容でも挙げられていた手法です。
まずは既存柱にホゾ加工を施し、土台を下から
差し入れる前にホゾの下端で切断する方法です。

その後、コンクリート基礎の打設と進めます。新築の工程の巻き戻しする形で工事を進めました。

【耐震改修】
既存建物の耐震要素は土壁で、壁も少なく低い耐震性能でした。改修に即して耐震性能の検討を進めていたものの、2階建てにすることになり新築同様の検討を行い、耐震等級3を確保(雑壁を考慮)する内容となりました。

耐震性能(雑壁考慮し等級3確保)

【断熱改修】
耐震改修と同時に断熱改修も進めました。耐震改修で壁(特に外壁が多い)を工事する時に断熱改修も合わせて行うのは鉄則。効率よく工事を進めることも大切なことだと感じます。
今回は新築同様の内容で進め、UA値1.70W/㎡K⇒0.58W/㎡K(Q値6.37W/㎡K⇒2.14W/㎡K)性能を確保しています。

【竣工写真】(左が改修前、右が改修後)
  
  

[南側の外観]
改修前は茅葺きに瓦風鉄板葺き。2階を新設しましたが、高さを抑えています。玄関の右手に張り出した土間は自転車を置いたり農機具のメンテナンスできるスペースを確保しました。このスぺースからも土間空間へアクセス可能です。

 

[玄関・応接スペース]
来客の多いお住まいでしたが、1坪ほどのスペースに玄関と応接スペースが兼用されて少し窮屈な印象がありました。数年前のリフォームで洋室となっていたスペースを思い切って土間空間に。南側からもアクセスでき、ゆったりとした応接スペースが確保できました。

  

[南側の濡れ縁]

((ここから下は改修後写真のみ))

[トイレ]今後介護が必要になった時にも十分対応できるスペースを確保。

[ダイニング]改修前と間取りはほぼ変わっていませんが、勾配天井がのびやかな印象。

[茶の間]既存構造体や建具を残しつつ、新たな要素も入れて一新。漆塗りを施した建具や照明器具、柱も。

解体工事がほぼ終わりかけた頃、軸組みになった我が家をご覧になった住まい手さんは「とても貧弱に感じる。いっそ建て直しした方がよかったかも」と弱気になれる一面もありましたが、構造補強から温熱補強工事、仕上げと進むにつれ「改修をお願いして良かった」と力強いお言葉を頂きました。

“平成の大改修”ということで見学会も開催し、非常に沢山の方にご覧頂く機会がありました。技術的な質問も多く、改修の熱い波を感じた機会となりました。

遠方の現場で、現場との連携がとても重要な現場でしたが、皆さんのご協力で、住まい手さんにも大変ご満足頂けたことに感謝致します。

平賀基香