№0028〜蒲生の家 改修工事

建築工房 自然木(じねんもく) 村田義弘
■工事場所:鹿児島県姶良市蒲生町
■工事期間:平成23年12月~平成24年5月
■主要用途:専用住宅
■構造・規模:木造軸組(伝統構法) 木造1階建
■築年数:築200年程度(100年前に大規模な改修工事を行っている)
■床面積:162..02㎡(49.01坪)
■施工:株式会社建築工房自然木
■平成22年度第1回 長期優良住宅先導事業(国土交通省) 採択
■木造建築病理学・「既存ドック」システム2 に基づいて調査
■概要
「蒲生の家」は、薩摩藩の武家集落「麓」の形態を残す町並みに建っています。武家門を持つ約500坪の敷地に、母屋、蔵、馬屋が並ぶ屋敷全体の造り、意匠を残すことが要望でした。
今回のクライアントであるご夫婦は、ご主人が、大学で歴史学を専攻、日本の古代住宅を研究され、奥さまは、建築学専攻、筑波大学の安藤先生の研究室。お二人ともに、古民家に詳しい方々でした。母屋の解体調査中に安藤先生も現場においでになりました。

このような状況もあり、「既存ドック」システム2に基づいて調査を進めましたが、耐震補強のために壁を入れること、特に、床の間、書院のある座敷、縁側部分に壁を入れることを拒まれ、さらに、その部分に壁を入れないことを補てんするために、部分的に強度の高い壁を作ることも好まれませんでした。結果的に、「既存ドック」システム2を元にした施工にはなりませんでした。

温熱改修は、座敷、縁側廻りについては、天井・床には、断熱材を充填しましたが、壁には、手を加えませんでした。ご家族が日々の生活で使う、リビング・ダイニングスペース、水廻り、寝室として利用される部分については、Q値2.7程度(V地域)の断熱性能を確保しています。


座敷北側の板の間:将来子供部屋、寝室、多目的に使われる予定です。
玄関上部:狭かった玄関を平面的にも広げ、吹き抜けとし、ハイサイドライトを設けました。
周辺の町並みからは見えない、蔵の屋根に太陽光パネル、車庫に再生した馬屋には、太陽熱パネルを設置しています。リビング上部に、トップライト。生活用水として井戸水を使うなど、環境、エネルギーを意識した、まさに、ゼロエネルギー生活を実践なさっています。
家具類についても、蔵に残っていた古いタンス、引き出しを補修、金物類を付け加えることで、台所収納、靴箱等に利用。また、35年前のシステムキッチンもほとんど使われていなかったので、パネル類を木製パネルに取り換え、高さも調整し直し再生利用しました。



先にも書きましたが、この住宅は、約200年前文政年間に建てられた建物で、100年前に大規模な改修工事がなされたことが、蔵に残っていた古文書で明らかになっています。この建物が、さらに、使い継がれ、100年後にまた改修工事が行われることを期待しています。
文末になりますが、この改修工事は、三澤ご夫妻を始め三澤事務所のスタッフ、森林文化アカデミーの方々に、遥々鹿児島へ調査においで頂き実現できた工事です。心より感謝いたします。


Title 事例紹介2012-28
Posted 2012/10/10
Category 
改修事例紹介