住宅医の改修事例No.0123 中古購入リノベ「鶉の家」

山崎 明 住宅医 / 株式会社WOODYYLIFE・設計事務所WOODYYLIFE / 岐阜県 )

会社説明
設計事務所WOODYYLIFEは株式会社WOODYYLIFE内の設計事務所になります。地産地消の材料/素材/職人で住まいづくりにより豊かな人生を提案している株式会社鷲見製材(ひだまりほーむ)から4年前に独立した会社で、不動産・メンテナンス・リフォーム・リノベーションを事業の柱にしています。WOODYYLIFEのリノベーションでは、地産地消の自然素材で性能向上を行い、豊かな暮らしを実現する事を大きなテーマに掲げて取り組んでおります。

概 要

|建物概要|
構造:在来軸組木造 地上2階
建築面積:99.53㎡ / 延床面積:160.56㎡
1階床面積 :99.53㎡ / 2階床面積:61.03㎡
屋根:いぶし瓦 / 外壁:モルタル / 基礎:鉄筋コンクリート
建築年代:昭和61年(1986) 築年数33年
場所:岐阜県 (以前のお住いから徒歩5分程度の同じ校区)


建物外観(改修前)

建物外観(改修前)

家族構成は5人(大人2人・子供3人)半年ほど前に岐阜に引っ越しされ、当時は近くのアパートにお暮らしでした。ご要望は、
① 学校区を変えたくない
② 薪ストーブのある暮らしがしたい
③ 土間と庭が繋がる暮らしをしたい
④ ご主人の趣味を楽しめるガレージスペースが欲しい
⑤ 家族みんなが集まる家族空間は自然素材で
⑥ コストは控えめに
ご要望の校区は、最近人気のエリアで地価が上昇中で、付近は田んぼを開発した分譲住宅がどんどん出来ていました。土地を購入の上新築となると、予算が足りなくなる為 築浅の中古購入 + 自然素材の部分性能向上リノベーションを提案しました。

既存建物の様子

|耐久性 (既存)


屋根:太陽熱温水器の劣化

屋根:漆喰の劣化

外壁:水切無/ヒビ割れ/太陽熱温水器配管導入部の割れ + 雨染み
〇〇〇外壁:ヒビ割れ

基礎:5㎜以上のヒビ割れ有

内装:浴室タイルの「浮き+ヒビ割れ」有

 


| 耐震性 (既存)
架構:2階の東・南側外壁直下に耐力壁ほぼ無
バランス:重心と剛心のズレ大きい
地盤:液状化しやすい軟弱地盤


|温熱性 (既存)

断熱材:壁と天井に図面通り断熱材を確認したが床は無断熱

外皮平均熱貫流率:1.86(※エリア:2.69)

計 画

既存図面

計画図面

断熱エリア(外壁撤去):LDK + 水回り + 玄関
その他 1F 内装改修 + 2F 一部内装改修


|耐久性 (計画)
外壁:ガルバリウム鋼板(通気胴縁設置)/ 屋根:漆喰補修
樋:掛替 / 基礎:Vカットシール工法 / 太陽熱温水器:撤去
防蟻処理:ボロンdeガード / 年1回の定期点検


|耐震性 (計画)
外壁撤去部分:外部からハイベストウッド + 金物補強
外壁既存利用部分:内部から構造用合板 + 金物補強


 


|耐震性 (計画)
基礎:一部新設 + ケミカルアンカーにてアンカーセット + Vカットシール


|耐震性 (計画)
架構:2階の東・南側外壁直下に耐力壁を増やせなかった
バランス:重心と剛心のズレを減少させる様配慮 鋼製火打ちを増やす事で面剛性を上げ全体で負担


|温熱性 (計画)
天井:デコスファイバー  t=200/壁:デコスファイバー t=105
床:ミラフォーム®Λ t=50
階段エリア(壁:断熱間仕切り 天井:ツインカーボ ※採光確保)


|温熱性 / 省エネ性 (計画)
エリア断熱の部分評価にて確認(ホームズくん)
浴室:断熱浴槽 + 断熱パック / 給湯器:高効率ガス給湯器

 


|温熱性 / 省エネ性 (計画)
ピアノコーナー:ツインカーボで吹抜のコールドドラフトを防ぎながら自然光を確保

 

土間にミラフォーム ®Λ  t=50を敷き込み ダイレクトゲインを期待

 


スッキリデザインの家族空間

温熱的に玄関を区切る引込戸
(フルオープンも可)

 


 

ご主人の趣味スペース棚や机等自作


 

キッチン脇の家事コーナーとスッキリ洗面


 

レーダーチャート比較(改修前と後)

 

竣工写真


外観


ガレージ(ご主人の趣味スペース)


内観(リビング ダイニング)

振返り・反省点と今後に向けて

反省点としては、社内の現場管理アプリ等のシステム変更もあり、当時の調査時・工事中の写真を含めた記録が殆ど残っていなかったという点があります。これからメンテナンスで長いお付き合いをしていく中で貴重な記録になるため、ソフトに頼った情報管理の危険性を感じました。

構造面においては、既存の間取りの延長線での構造補強計画になっており、上部構造評点1は実現できましたが、構造計画の観点から見直せば、もう少しダイナミックで2階の構造ののりが良い計画ができたのではないかと感じております。現在では、予算も大事ですが、先ずはそこに囚われすぎず、構造計画の見直しから計画に取り組むようにしております。
断熱についても、エリア断熱を実施しましたが、将来の老人室とできるエリアまで断熱エリアを含める事を重視できれば、将来の老人室にできるエリア(書斎)まで断熱エリアを含める事を重視できれば、将来的な健康へのリスクを軽減できたと感じております。
今後は、睡眠の時間が実は健康への影響が大きく、寝室と水回りの一体的なエリア断熱が健康にとって重要である事をお伝えした上で、寝室と水回りのエリア断熱の提案を強化していきたいと思います。
計画としては、大きな土間のあるLDKが庭と繋がりとても開放感のある家族空間を実現できました。スッキリとした自然素材で包まれた、薪ストーブと土間のある家族空間が温熱的にも快適で心地よい場所となり、家族がいつも集まる場所となりました。冬場のダイレクトゲインを狙って一番日当たりの良い南面に土間を持ってきた事もあり、冬場の夜でもじんわりと暖かいと好評です。
コロナの影響もあり直接お話を伺う事ができておりませんが(メンテ担当のみ伺っています)、殆どが自宅勤務となったご主人も快適なリモートワーク生活を送られている様で、ご主人の趣味部屋となっている土間のワークスペースはDIYで進化中です。住まう方の住まい方が、より豊かになると共に、安心して健康な暮らしが継続的に実現できる提案と実績をどんどん増やしていきたいです。

弊社では中古リノベーションとしては2棟目の取組でしたが、性能向上と空間・素材・暮らし方の変化と予算のバランスがある程度取れた物件になったと思います。地価がそれほど高くない岐阜(西濃地区)においては、自然素材での性能向上中古リノベーションは分譲住宅や中古リフォームと比較されてしまうと、価格面でまだまだ競争力が低いと言わざるを得ませんが、意義と性能を伴った自然素材の快適性を訴求しながら、技術力をもっと磨いて取り組んで行きたいです。