№0004〜T 邸離れ再生工事

神家昭雄建築研究室

■工事場所:岡山県岡山市
■工事期間:平成 20 年 5 月~平成 20 年 12 月
■主要用途:専用住宅
■構造・規模:木造 2 階建
■床面積:
1階 62.60 ㎡ 18.93T
2 階 27.38 ㎡ 8.28T
延床 89.98 ㎡ 27.21T
■概要

本敷地内には母屋に加え、二棟の離れ(北・東)、納屋、蔵、があり、本工事は東側離れの再生工事である。
母屋の台所、水廻りと、納屋は平成 7 年に一期工事として再生しており、本工事は二期工事にあたる。

東側離れは、再生前の一階が二間続きの和室と物置、二階の一部が厨子二階の屋根裏を利用した物置となっていた。しかし近年は二間続きの和室も物置としての使用に留まり、十分に活用されないまま躯体の痛みは進んでいった。
そこで平成 20 年、息子さんとの将来的な同居に備えて、母屋とは別に水廻りを完備した住宅として再生した。
 
以前の二間続きの和室は天井を取り去り、小屋組現わしの開放的な居間とし、南東の庭に大きく開いている。


また厨子二階の小屋裏スペースは寝室とし、構造的に限定される天井高の低さは、南面を居間の吹抜けと繋げ、外部に対して横長の開口部を設けることで、落ち着きと拡がりを持った空間に転化している。
 
また構造的にはベタ基礎を新設、腐朽の進んだ土台や柱の入れ替えなどを行ない、耐力壁を新設している。
しかし、この工事中に息子さんはしばらくこの離れを使用しないことになり、その活用方法についてはこちらも懸念したが、この再生によって生まれた空間を活かしたいとの施主の気持ちと行動力によって現在は、母屋の一部とこの離れを月の初めの三日間、県内外の作家の陶器やガラス、木工作品等を鑑賞したり、ケーキやコーヒーを楽しむことができるギャラリー(アトリエ・ドゥ・ノエル)として公開している。
また上記敷地内から一段上がった敷地で施主は庭づくりを楽しんでいるが、そこに建つ全長約 15mのマスカット温室を三期工事として、手入れの行き届く 5.5mに減築・再生した。これによって敷地内はより開放的な場になり、これまで以上に施主は庭づくりを楽しんでいる。
再生後の温室ではマスカット栽培を続けるとともに、日常は休憩小屋として、またギャラリー開催時には展示やカリグラフィーなどの教室スペースとして活用している。


現在この規模の住宅では手入れが行き届かず、生活スペース以外は荒廃していくケースが多いなか、三期まで進んだT邸再生工事では、一期ごとに施主の生活は豊かに拡がり、それを地元に公開することによって、その拡がりは地域へと拡大している。
近い将来、北側の離れが四期工事として再生され、また新たに時と場を紡いでいく予定である。


Title 事例紹介 2010-4
Posted 2010/08/10
Category 改修事例紹