№0074〜広島県「東広島の家」改修事例報告
設計者: ef設計室/梶田 栄子
報告者: ef設計室/梶田 栄子
施工者: (有)フカガワ/梶田 正文
所在地: 広島県東広島市
地域: 市街化調整区域
主用途: 一戸建ての住宅
築年数: 44年
規模: 木造平屋 一部2階建
敷地面積: 不詳
建築面積: 193.29㎡
延床面積: 222.40㎡
着工: 2005年 3月
竣工: 2005年11月(9ヶ月)
家族構成: 夫婦+子ども3人(成人のため帰省時のみ)+老夫婦
改修前の外観 改修前の内観
■2004年、15年前の改修事例報告です。
この家は、1961年(昭和36年)に自己所有の山の木を伐り出して建築され、
以来大切に住んでこられた、ご家族にとって思い入れのある家です。
この地方独特の、赤瓦に真壁、漆喰塗りという佇まいで、しっくりと風景の中に溶け込んでいます。
しかし、当時築44年という築浅ながら、2001年3月におきた震度5弱の芸予地震で打撃を受けており、
温熱環境や使い勝手への不満もあったことから、今後きちんと安心して住み継ぐために全面リフォームを希望されました。
建て主さんからいただいた要望は、次のようなものでした。
要望 ・寒く暗い家を心地よく暮らせるようにしてほしい。
・三世代が気兼ねなく暮らせるようにしてほしい。
・自然のエネルギーをできるだけ利用して暮らしたい。
・部分的な増改築を繰り返してきた家を、きちんと直して次の世代に
住み継げるようにしたい。
・外観はできるだけ残してほしい。
【改修計画の要点】
・現況は玉石基礎であるが、耐震性向上のために基礎を新設する。
・外観の雰囲気を残して耐力壁を設け、断熱性を向上させる。
・内部はOMソーラーの技術を用いてオープンな空間を作る。
・薪ストーブやウッドデッキなど、暮らしの楽しみが広がる家とする。
・老夫婦+夫婦+子どもの3世代が、気兼ねなく仲良く暮らせるようにゾーニングする。
・和室は元の姿を留める。
【現況調査】
和室 床の間の壁は、芸予地震の際のひび割れを確認。
天井裏は、無断熱。壁は、土壁のみ。
床下は、防湿コンクリート無。玉石基礎で、無断熱である。
3日間の温度測定(2004年12月)8℃~12℃での生活実態を確認した。
サーモカメラでキッチンを撮影。(2004年12月)
サーモカメラで外部より暖房した部屋を撮影。(2004年12月)
【解体】
解体作業 外部 解体作業 外部
【耐震改修】
地中梁と耐圧盤により基礎を作った。 外周部に新規の基礎を作り耐力壁を設けた。
構造用合板t=9㎜により耐力壁とした。 告示1100号による格子壁にて補強した。
【断熱改修】
屋根断熱 ネオマフォームt=60㎜にて断熱した。
壁断熱 ネオマフォームt=35㎜にて断熱補強した。
天井断熱 パーフェクトバリアt=100㎜を敷込み
屋根面で集熱した空気をまわすため基礎断熱とした。
立上部 スタイロフォームt=60㎜
水平部 スタイロフォームt=25㎜
【その他】
OMソーラー ガラス集熱面施工
【完 成】
南面外観 入母屋に赤瓦、漆喰壁。周囲の風景に溶け込むように改修した
和室よりリビング方向をみる 和室 元の姿に復元した
リビングより和室方向をみる 小屋裏よりリビング方向をみる
北側外観 キッチン 玄関内部
築44年、平成5年に水回りを増築さていたこともあり、
建て主様ご家族の中で全面リフォームへの反対意見もあったと聞いていましたが、
出来上がった家を大変喜んでいただくことができました。
「ちょっと進んでは立ち止まり、考え、」を繰り返しながら、施工者や職人の方、
建て主さま関係者の方のご協力により無事竣工できたことに、感謝しております。
15年前の改修ということで、当然住宅医スクールを受講する前の事例ですので、
今振り返ると反省する部分もたくさんあります。スクールで学んだ内容は、
「ちょっと進んでは立ち止まり」悩んだことを、しっかりと理論的実践的に裏付ける内容でした。
この学びを礎にして、古くてもきちんと再生させていくことを目標に、
改修工事に積極的に関わっていきたいと思います。