№0055〜見返り美人 春明の家 改修事例報告
報告:㈱紙太材木店 田原 義哲
1.
・設計 監理:㈱紙太材木店 田原 義哲
・施工:株式会社 紙太材木店
・設計期間:2014.6~2015.2
・工事期間:2015.2~2015.9
・所在地:愛知県一宮市
・建築時期:濃尾地震後 1890年代
・構造:木造藁葺き 延べ床面積164.57㎡
・概要:今では珍しくなった藁葺き屋根の家、名古屋市中心部まで20分程度。
梁と柱だけを残したスケルトンの再生工事を行った。
2.経緯
北側外観は廃屋かと思われるほどの状況だった、都心近くにある藁葺き屋根の家ということで普通なら目立つ存在になるところだが通りからは一本外れているためひっそりとたたずんでいる印象がある。建物内部は古い民家の力強さを感じさせる構造で新築か再生かの検討もされていたようだが、ご主人の強い思いで再生工事となった。
3.改修内容
耐震、断熱という再生改修における2大テーマを主題とした。同時に古い民家自体が持つデザインをどこまで再現できるかが課題となった。
改修の第一のポイントは玉石基礎をベタ基礎とすること。
第二のポイントはデザインを考慮したバランスの良い耐力壁を設置し基準法の耐震等級をクリアすること
第三に温熱環境を改善しQ値2.7を越える性能にすること
第四に内観外観のデザインを極力既存建物に合わせることであった。
4.詳細調査
詳細調査により幾度かの改修により隠れていた建築当時の姿と現状の建物の傷みが明らかになった。
過去に行われた改修は洋式生活への対応を主にしており、古さを隠す改修であった、また利便性のため差し鴨居が切断されている箇所や蟻害を受けた大黒柱をコンクリートでつないであるなど構造的な補強の必要性は建物全体に及ぶものであった。
5.解体工事
6.基礎工事中
基礎工事は予算との兼ね合いから揚げ屋は使わず、基礎業者と紙太材木店との協同作業。これにより大幅な予算削減が可能となった。
7.構造補強
梁の交換や差し鴨居の入替え、金物の設置と言った補強だけでなく再生工事には現況の耐震基準を考慮した補強が必要
8.温熱環境
気密工事は室内温熱環境に直結する性能で断熱工事とセットで考える必要があり「気密なき断熱は無力なり」という言葉もあるとおり丁寧な施工が求められる。
9.伝統的なデザインによる再生
古い民家の再生工事では常に意識されなければなりません。
10.見返り美人 春明の家