住宅医コラム 意見交換2016-65

古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? そのためには、まず、壊されずに残り、愛されて使われている建物を、大いに誉めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「誉められること。」と、多くの人に認識してもらうことなのでは? と考えました。
今月の、誉めコラム「改修建物を訪ねて」は、京都の古家改修「洛中簡素庵」です。
 
 
「改修建物を訪ねて~その4」
旦那の設計~京都の古家改修「洛中簡素庵」
三澤文子(MSD
 
 
私たちの漆塗りの師匠である沢田欣也さん。自宅および沢幸漆店という漆販売会社は、北陸の小松市にあるのですが、昨年京都で小さな古家を購入、この春から「金継ぎ教室」を始めたと聞き、4月はじめの土曜の午後、金継ぎを習うことと合わせ、興味津々で見学に行ってきました。
 
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その洛中欣也庵(私の勝手な命名であり、本当は本人命名の「簡素庵」だそうです。)は、阪急烏丸の駅を降り、東洞院通りを北に上がり、少し行って左の路地を奥に奥に入ったところにありました。表通りはたくさんの観光客が歩いているのに、奥に入ったら全く違う雰囲気です。こんな便利なところに・・・と少し羨ましい気持ちになりました。
 
聞けば、初めてこの物件を見せてもらった時には、部屋の中から空の光が見えるような危うい建物だったそうです。でも玄関の敷石が気に入ってしまったとのこと。
 
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そういえば、私も開口一番この敷石を誉めました。
 
 
小さな玄関土間に 畳2帖の水屋スペースがいきなり。これこそ省スペース。「いいな~」と感心します。それにしても時が経ったものの良さは格別ですね。
 
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そしてその先に、4畳半の茶室があります。今回はこの茶室で金継ぎ教室を行うため、テーブルと椅子がセットされていました。それでも、床の間には 欣也さん作の漆の作品が飾られていて、いい雰囲気であることは間違いありません。
 
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正面に目につく格子状のパネルは、エアコン隠しのもの。古い建具を転用したものです。欣也さんは、このおさまりが、かなり不満なようでしたが、私は「なかなかいいんじゃない。」と誉めます。ただし暖気がしっかり下に降りるのかが少し心配とも言いました。それにしても茶室の冷暖房は、なかなか悩ましいです。
 
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この茶室の脇には小さな庭があります。
1階7坪ほど。さらに2帖半くらいの屋根裏部屋があります。もちろん小さな流しのある台所と、トイレもあります。
廊下の板は、ケヤキの板と思ったら、桐の板に漆を塗ったもの。さすがに漆のなせるわざ。
 
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襖の引手も、欣也さんのコレクション。襖紙の貼り方もずいぶんこだわって注文したそうで、これはコマツの職人さんにつくってもらったそうです。(京都では高くなってしまう。との説明でした。)
 
欣也さんのコレクションでは、ランプシェードが絶品。私も、新築改修問わず、最近は、ランプシェードは欣也コレクションを使用させて頂いています。水屋の照明は、これも、たいそうカワイイものでした。
 
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「口で設計したわりには、良いではないですか!」と本気で誉めましたが、本人は色々不満もある様子。
これこそ、旦那の設計。京都というポテンシャルのあるところだから、実行できたとは思いますが、壊れそうな魅力的な古家は、まだまだあるはず。そんな古家をこんな風に救えて、楽しみの空間に変えることができるのなら、本当に素敵だ。と、つくづく感心したのでした。