№0032〜高槻の家 改修工事

Ms建築設計事務所
■工事場所:大阪府高槻市
■工事期間:2012年3月~2012年12月
■主要用途:専用住宅
■構造・規模:木造2階建て
■築年数:築34年
■床面積:1階 95.64㎡(28.93坪) 2階 61.28㎡(18.53坪) 延床 156.92㎡(47.46坪)
■施工:羽根建築工房
概要
昭和40年頃に開発された高槻市の住宅街に建つ住まいです。敷地の2方向が一部3Mを超える擁壁囲われており、地盤の補強工事を含む構造補強工事、断熱改修工事を行いました。木造建築病理学「既存ドック」システム3に基づき、設計・施工を行っています。
(以前の調査の様子はこちらですhttp://hd-n.net/2009cgi/gallery/archives/164.html)

改修前の敷地周辺写真(写真右手が現場)です。丘陵地帯に沿って住宅地が開発された様子がよくわかります。建物は南西2方向を擁壁で囲われるように建っていました。
 
下屋解体前に地盤補強を行いました。アンダーピーニング工法という補強方法で、既存基礎下に合計8ヶ所に鋼管杭を打ち込み、1ヶ所に耐圧版を設置しました。無筋コンクリートの既存基礎に新設基礎を抱き合わせる前に鋼管杭の施工を行います。作業工程において既存基礎下で鋼管杭を打ち込みジャッキアップでレベル調整を行うので、人一人が作業できる空間を確保します。この掘削作業が最も工程のかかる作業でした。今回は内部の改修工事も含めて行うので既存床をめくっての掘削作業でしたが、内部改修無しの場合も多いようで作業員の方々は「作業しやすい現場だ」とおっしゃっていました。支持力を確認しながら鋼管杭の打ち込みを行いました。
 
杭工事完了後、基礎補強工事を行いました。既存基礎は詳細調査時に無筋コンクリート基礎ということが分かっていたので補強方法を施工性含めて検討しました。既存基礎の内側にロの字型で新設基礎を沿わせます。ケミカルアンカーで新旧基礎を緊結し、基礎補強を行いました。必要金物も各所設置しました。
 
擁壁への負荷を軽減するために南側の広縁(下屋)を解体し、1・2階の耐力壁ラインを統一し上部の荷重が補強を行った基礎、地盤へ伝達するように計画しました。擁壁を押していた植栽の根も取り除き、新たな木塀を堅木でつくりました。外観は下屋の解体、吹付のやりなおし、一部樋の新設に留まっています。

耐震改修だけではなく、断熱改修も実施しています。既存の壁にはグラスウール(ア)50㎜のみで床下には断熱材はなく、唯一畳が断熱材の変わりという状況で冬場の厳しい寒さを改善したい、という住まい手さんの強いご要望がありました。今回の工事では1階を生活空間として断熱エリアを区切り床、壁、天井に断熱材を充填しました。

屋根については現状を確認した上で既存利用としています。一部過去に雨漏りがあった箇所については瓦屋さん立会いのもと確認し補修を行いました。
 
改修後の内観です。写真奥に見える玄関板戸からまっすぐ廊下が伸び、階段の手摺格子が軽快です。床材は唐松フローリングを使用しています。階段の踏み板は唐松パネル、玄関式台には唐松無垢板を使用しています。式台には足触りのいい名栗加工を施しています。

ダイニングキッチンの写真です。元々2間続きの和室だったところをLDKとしています。以前は北側の水廻りに固められていたため日中でも薄暗いLDKでしたが、南側に面した明るいLDKです。カウンターの前の大黒柱はケヤキ材です。

この大黒柱の上部には2階床を支える成410㎜の梁が2本かかっています。この梁は2間とんでいたので、大梁に肘木をかけて柱で支えるように補強しました。大梁と肘木はボルトで緊結し、さらに両面合板で固めています。構造補強のために追加した柱ですが、210㎜角大黒柱がアクセントにもなっています。

ダイニングテーブルには40㎜のタモの板を使用しています。実はこのタモの板は一枚板に見えますが“一枚板風”の幅接ぎ板を使用しています。カウンターと絡めることで広々としたLDKとなりました。
住まい手さんのご実家を改修し新たな住まいとして再生することでこれからも受け継がれていく住まいになったのではないかと思います。


Title 事例紹介2013-32
Posted 2013/03/11
Category 改修事例紹介