№0030〜湘南鎌倉の家 改修工事

Ms建築設計事務所
■工事場所:神奈川県鎌倉市
■工事期間:平成24年3月~平成24年10月
■主要用途:専用住宅
■構造・規模:木造2階建
■築年数:築40年
■床面積:(改修前)延床面積134.38㎡(40.65坪)、1F床面積:90.82㎡、2F床面積:43.56㎡
(改修後)延床面積114.89㎡(34.7坪)、1F床面積:71.33㎡、2F床面積:43.56㎡
■施工:㈱楽居
■長期優良住宅先導事業(国土交通省) 採択木造建築病理学・「既存ドッグシステム3」 に基づいて設計
■概要
2012年1月に詳細調査を行いました鎌倉市の物件が10月に完成しました。
詳細調査の様子は、こちらMs建築設計事務所のブログ(http://www.ms-a.com/diary_10.html)をご覧ください。
住まい手は鎌倉の高台にあるこの中古物件を購入し、改修して住む事を選ばれました。
この家を改修した後は家族・親類等に引き継ぐ一族的財産という観点でなく一定の流動性を持った資産として第三者への売却も視野にいれており、そのうえでも詳細調査を行いその情報をきちんと資料化し履歴を保存する「既存ドックシステム3」の条件内容に期待されているところが大きかった。
今までご自身が住まわれていた家ではないので住まいの履歴については不動産屋を通じ売主の方にお話を聞きできるだけ情報が得られるようにした。
改修内容は以下
【耐震改修】
基礎は無筋の布基礎であったため、新設の添え基礎にて補強
耐力壁は既存筋交いに金物補強を行い足らない分は新設筋交い、一部構造用合板にて耐力壁を確保
水平構面は鋼製火打ちを足す(既存火打ちあり)
【温熱改修】
開口部:全てアルミサッシ(ペアガラス)に交換 Low-Eガラス等対応は行っていない
床、天井:パーフェクトバリア(ア)100
壁:パーフェクトバリア(ア)100+70
多くの改修工事がそうであるようにこの物件でもコストが限られていたため、以下の内容でコストの調整を行った。
プランをさわるのは主に1階部分とする(2階は断熱材をいれるために剥がした壁、天井の張替えのみ)
下屋部分の屋根(コロニアル)は再塗装とする ※劣化の調査を行いまだ使用に耐えうることは確認
外壁(モルタルリシン)はヒビ割れの補修を行い再塗装
門、外部階段、アプローチなど外構工事、植栽工事は今回工事から外す
また、既存のプランでは掘り込み駐車場の上に下屋(応接室)が建っていたが、駐車場の壁はコンクリートブロックでできておりスラブもほぼ無く非常に危険な構造であった。
この部分は下屋建物を解体撤去し加重が駐車場の壁にかからないようにした。
これは住まい手にとって当初想定していないことであったが、減築後も面積的に余裕はあり、また代わりに広々としたデッキスペースが生まれたため結果的に喜んでいただけた。
改修工事では着工後予測していない追加工事も発生します。
調査時には見つけられなかった蟻害や構造的に寸法の足りない梁があり構造材を2本追加交換した。
また、建物内部をガスの引き込み管が通っておりガスメーターの移設を行った。これは15万円の費用がかかり、詳細調査の限られた時間で確認できなかった配管など着工前に再度確認を行う必要があった。

改修前のファサード 手前の下屋が今回減築した部分。

改修後のファサード 宅地が2mほど上っており建物も道路境界から控えて配置されているため横格子の水平ラインが際立ちます。
   
玄関アプローチは住まいの顔であり既存庇も傷んでいたので新しくやり替えた。軒天、隣家からの目隠しである縦格子のスクリーンは杉材、玄関戸は「イロコ」というチークに似た南洋材を使用している。

もともとダイニングとは壁で仕切られたキッチンは日当たりの悪い寒いスペースでした。ダイニングと一体化し気持ちのいい空間となった.


ダイニングの横にあった和室(個室)は現代の生活にはあわずやわらかく仕切ったリビングとしました。音楽を聴いたり本を読んだりゆっくりと趣味の時間を楽しむスペース。
   
玄関の横にあったトイレは洗面所に移設し、若い住まい手のライフスタイルにあった機能的な水廻りとなった。もともとトイレのあったスペースは玄関土間からの収納とした。

2階床は既存のまま。断熱材を入れるため剥がした壁と天井のみ珪藻土クロスで仕上げている。
バルコニーは当初さわらない予定だったが、住まい手からの要望で桧のデッキ材に張り替え、手すり壁は杉板(ア)15を張っている。

収納など意匠上目立たないスペースの壁、天井は透湿抵抗値の高い合板仕上げとし、壁内へ湿気が入るのを抑えている。
賢明な住まい手により命の延びたこの住まい、今後住まい手が手を加えながらできるだけ長く住みつがれることを期待します。
Ms建築設計事務所 三澤康彦


Title 事例紹介2012-30
Posted 2013/01/10
Category 改修事例紹介