各地の住宅医の日々№2〜空き家を見ては妄想中

澤木 久美子(住宅医 / アトリエ空一級建築士事務所 / 兵庫県・奈良県)

今流行り(?)の2拠点居住を狙ったわけではありませんが、事務所を構える神戸を離れ、昨年の夏より多くの時間を奈良県の吉野で過ごしています。
きっかけは、ゼミのフィールドワークで吉野に関わっていた友人である大学教授に誘われて、軽い気持ちでお手伝いについて来たことでした。こんなこと書くと笑われそうですが、その時に初めて立ち寄った大和上市の街並みの奥の方から誰かに、いえ“何か”に呼ばれた気がしたのです。

次の機会にひとりで街並みを歩いた時に「この建物が呼んだのかな?」と思うような気になる建物がありました。地元では有名な林業家の本家と社屋で、それは見事な、興味をそそる建物ですが中は見られません。いつか公開してもらって見学会を企画したいと、密かに企んでいます。


林業家社屋

林業家本家

 

さて、吉野と言えば吉野杉・吉野桧の産地であり、国道にはその狭さにそぐわない程大きなトラックが、原木を積んで走り抜けます。川向こうの土場では度々原木市が開かれています。またその周りには「貯木のまち」と呼ばれる製材所や加工場が集まる場所があり、私の大好きな木の香りが漂っています。

原木市が開催された土場

しかし、何処も同じように吉野町も空き家が増える一方で、夜になると寂しい限りの明かりの数です。何軒か簡単な調査をさせてもらっていますが、神戸辺りで見ていたものとは築年数も桁が違うほどのものもあり、改めて改修を学ぶ必要性を実感しています。

人の気配がしなくなった住まいの傷み方は本当に凄まじいものです。完璧は望めなくとも、1軒でも明かりを灯すお手伝いができたら、と空き家活用の活動をしています。

西に向かって流れる吉野川の夕景。左岸に貯木のまちがあり、和歌山に入ると紀の川となります。