既存住宅の気密性~住宅医リレーコラム2021年9月

中野 弘嗣(住宅医 / 水の葉設計社 / 香川県)

改修を行う際、建物の気密性をどう確保するか悩まれることが多いと思います。
私が行っている温熱・省エネ支援業務のひとつに気密測定がありますが、今まで既存住宅を測定した中で気づいた点をまとめました。

気密性を高める目的

気密性を高める目的は大きく4つあります。

① 快適な室内環境の実現
特に冬場の温熱環境に影響を与えます。ある程度の築年数が経った家に住まれたことがある方は、家の中が何となくスースーするという経験をされた方も多いのではないでしょうか。気密性が低い場合、このような直接的な隙間風が生じることはもちろん、室内の温度ムラや上下温度差が発生し、室内の温熱環境が悪くなります。

② 計画換気を有効に働かせるため
気密性が低い建物は各所にある隙間から空気が出入りするため、ショートサーキットが発生して換気経路が不明瞭になります。また、隙間からの漏気量は外部の風の強さや外気温によって左右されるため、換気量のコントロールが難しくなります。

③ 壁内結露の防止
気密性を高めることで、漏気する空気に含まれる水蒸気が躯体内に流入することによる壁内結露のリスクを抑えることができます。(壁内結露は漏気だけが原因ではないので、結露計算等でのチェックも併せて必要です)

④ 熱損失の低減
漏気量が多いと暖冷房した空気が建物外に逃げていく量が増えるため、気密性を高めることでこれらのエネルギーのロスを抑えることができます。

※C値と漏気量の関係は、辻先生の「環境デザインサポートツール」を活用すると算出することができます。

既存住宅の気密測定

既存住宅のC値の測定結果は、あくまで参考ですが7~15cm2/m2くらいの建物が多い印象です。隙間が多い場合は測定器1台では機械の風量が不足するため、冒頭の写真のように気密測定器を2台並べて測定することもありますが、正確に測るのは結構難しく苦戦することも多いです。
既存住宅の気密測定の目的はC値を確認することよりも、どこから漏気が生じているかを測定中に確認し、改修後の隙間を減らすための参考にしてもらうことの方を重視しています。断熱や気密の意識が低かった時代の建物は断熱気密の区画ラインが曖昧なことが多く、思わぬところの気密欠損を見つけることもよくあります。

漏気が起こりやすい箇所

過去に測定した物件より、漏気が起こりそうな箇所をいくつかご紹介します。元々の造りによって漏気が生じる部分もあれば、経年変化によって隙間ができている部分もあります。また、後施工の配線貫通部など、生活の中で工事を行った部分なども注意するポイントです。

 

・経年による壁の隙間や土壁のチリ切れ
土壁の場合は、外壁のチリ切れ部分から漏気が生じていることが多くあります。大壁の場合でも、間仕切り壁に気流止めが無い場合がほとんどなので、クロスのひび割れた部分や化粧合板の継ぎ目からの漏気がよく見られます。

 

・和室の造作
和室は構造的に漏気が発生しやすい部屋です。特に長押の裏側は土壁が塗り込められていないことが多く、かなりの漏気量が発生するケースもあります。また、細かいところでは目透かし天井やイナゴ天井の天井板端部にも隙間ができるため、わずかですが測定中に気流感を感じることもあります。

 

ある物件で、長押の目張りの有無でどれくらい隙間面積が変わるか実験してみたところ、建物全体の隙間面積1136 cm2のうち、6畳の和室の長押からの漏気は432 cm2もありました。
和室は手を加えずに残すという改修のケースも多いと思いますが、その場合でも長押の奥の施工状況はチェックしてみてください。見えない部分なので対策も取りやすいかと思います。

 

・畳の隙間
畳の下の荒板の隙間が大きく、畳の間から隙間風を感じることがあります。(これを防ぐため、畳の下に新聞紙を敷いていることも多いと思います)
また、畳の厚み分だけ根太や大引が下がっているので、床框や畳寄せあたりから漏気が発生していることが多いです。

 

・コンセント・スイッチ
気流止めが無い場合は壁内に床下や小屋裏の空気が流入しますので、これらの壁にコンセントやスイッチなどの穴があれば、そこから漏気が発生します。

 

改修後の気密性の確認

上記のような細かい点の積み重ねで建物全体の気密性は少しずつ悪くなっていくわけですが、気にしすぎるとキリがありません。改修にあたっては冒頭の4つの目的を意識しつつ、可能なところから対策していくのが良いのではないでしょうか。
最後に、改修で有効な場面は限られるかもしれませんが、漏気箇所をセルフチェックする方法をご紹介します。
給気口や換気扇など計画的に設けた空気の出入口を目張りした上でレンジフードを強運転すると気密測定時と同じような負圧の状況を作ることができ、漏気が発生している部分があれば手をかざせば気流感を感じます。どれだけの隙間があるか?は気密測定を行わないと把握は難しいですが、どこに隙間があるか?はこれで確認することができます。
ただし、ある程度の気密性能が確保できていなければ圧力差が発生せず気流感を感じられないため(建物の大きさにもよりますがC値3~4より良いくらいが目安でしょうか)、明らかに気密性がなさそうな場合はきちんと気密測定を行って気密性を把握することをオススメします。