ものつくりの連携 〜住宅医コラム 2021年1月 

山辺豊彦(山辺構造設計事務所)

明けましておめでとうございます。
昨年は世界中で新型コロナウィルスが猛威を振るい、働き方や暮らし方を否応なしに考えさせられる一年でした。今年もまだ注意が必要な状況ですが、医療に携わる方々が国や人種を越えて連携をとる姿に、頭の下がる思いです。このような協力・協働は、あらゆる分野で見習うべきことではないでしょうか。
住宅医スクールも昨年はやむなく中止しましたが、事務局の尽力により今年はオンラインで開催することとなりました。このような時こそ、気力・体力・技術力を鍛えておくことが重要です。しっかりと勉強して力を蓄えましょう。

さて、一昨年の本コラムで紹介しました、日野市の旧農林省蚕糸試験場日野桑園第一蚕室(愛称:桑ハウス)の耐震改修工事が、このたび無事終了しました。この改修は、官・民の協力が非常にうまく行われた好例ではないかと思います。
通常、公共建築物は入札を行いますが、地域の貴重な文化財を地元の技術で守りたい、との思いから、工事は日野市の商工会に発注され、設計者も工事技術者も「オール日野」で行われました。それには本会の住宅医でもある酒井哲さんと太田陽子さんが、粘り強く保存活用を市に働きかけたことと、日野市も価値を認識し、市民に末永く愛される文化財にするにはどうしたらよいか?とそれぞれの立場で前向きに知恵を出し合い、協力したことが重要なポイントとなっています。
また工事技術者も、気になることは率直に意見を出し合いながら、仕事を進めました。組織ではなく個人の集まりであったことも、特筆すべき点です。
敷地は小学校と市民ホールに隣接し、地域の産業祭が催されたり、幼児の遊び場にもなっているため、工事前には見学会を行い、工事中もこまめにパネル写真を掲示していました。興味深そうに見る人も多くいました。
建設当初は国力を高めるための官庁の研究施設でしたが、市民の手で再生したこれからは、市民に愛される施設として活き続けます。
新年度には見学もできるようになると思いますので、住宅医協会でも見学会を開催したいと考えています。

改修後の外観(撮影:遠藤ちえ・日野市提供)

桑ハウス断面図

改修後の小屋裏(木造)撮影:近藤ちえ・日野市提供
南側(写真右側)は腐朽が著しく一度軸組を外して補修したが、北側はほぼ健全であった。外壁面は構造用合板の耐力壁とし、アンカーボルトを追加。軸組材の接合部は、既存金物をできる限り再利用している。■■■■■■■■■■■■
改修後の1階(鉄筋コンクリート造)
見学者が通る範囲は、漆喰やモルタルが落下しないよう補修。その他は当初の塗装や補修跡も一部残した。黒い床板や室内建具は建築当初材。放熱器などの設備も展示し、建物の歴史を見せながら市民が多目的に使えるよう配慮されている。

 

 

 

改修中の外観

通路側に工事状況をパネル展示。仮囲いのため中は見えな
いが、状況がわかると興味を持たれる方も多い。

 


関連記事:日野市の旧農林省蚕糸試験場日野桑園第一蚕室(愛称:桑ハウス)前回の記事はこちら