各地の住宅医の日々 №37 ~人との出会い、山との出会い

清水 利至( 住宅医 / 清水建築設計室 / 静岡県 )

静岡県で建築設計事務所を営んでいます。私の住宅医としての仕事は耐震診断と補強計画の作成、補強工事の監理が中心です。そのなかで静岡県耐震補強相談士として、県が行っている「わが家の無料診断事業」の調査員業務を行っています。これは診断を希望される方が市に申し込みをすると、静岡県耐震補強相談士が1階のみの一般診断を行い、評点の説明や補強工事に向けての相談に対応するという事業です。

天井裏調査の様子

昨年は1ヵ月に1、2件ほど担当する物件が割り当てられるといった状況でした。規模や建築年代もいろいろで、調査で想定以上に苦労する場面もありますが、これまで建築士と話をする機会が無かった皆さんに、専門家からみたその家の状態や、補強の可能性についてお話をすると、自分の家の現状と今後の暮らし方を検討するのに必要なことを知ることができましたと、感謝していただけることがあります。そういった部分で住宅医としてのやりがいを感じる仕事になっていました。しかし、これも令和6年度で終了ということがすでに決まっています。「知りたい人」と「説明できる人」が出会う機会という意味では、私自身がそこから多くの耐震診断と補強工事をお手伝いさせていただいただくことになったことからも、有効な事業であったと感じています。また新たなかたちで、住宅医としての知識と経験を活かすことができる場ができていけばと思っています。

北アルプス常念岳山頂より

私の趣味は登山、トレイルランニングです。静岡県には富士山、南アルプスがあり、少し車で走れば八ヶ岳、中央アルプス、北アルプスまで数時間で行くことができます。平日は夜遅くまでかかっても仕事をこなし、日曜日は休みにして早朝出発で山に登り帰ってくる。天気が良ければ自然の素晴らしさを感じる絶景を見ることができます。たとえ雨だったとしても、日常では味わうことのできない冒険を経験することができます。机に向かう日常とはかけ離れた刺激に魅せられ、そんな生活をここ数年続けています。さらに運動することで体力と体形の維持につながっているので一石二鳥です。そして、変化する気温を感じる、動く風を感じる、差し込む光を感じる、自然の力の大きさを感じる、屋根と壁があることのありがたさを感じる、そんなことの中に住まいの設計や調査に関わる仕事とつながる感覚があるのでは、とも思っています。

 

 

清水 利至
©Toshimichi Shimizu , jutakui


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清水建築設計室 https://www.ne.jp/asahi/shimizu/office