№0025〜父の家 改修工事

村上洋子(村上登男一級建築士事務所内 nomad architects)
■工事場所: 愛媛県松山市
■工事期間: 平成23年3月~平成23年12月
■主要用途: 専用住宅
■構造・規模: 木造2階建
■築年数: 築46年
■延床面積: 1F 89. 91㎡、 2F 7. 17㎡、 延床面積97. 07㎡(29. 36坪)
■施工: (有)冨永工務店
■平成22年度第1回 長期優良住宅先導事業(国土交通省) 採択
■木造建築病理学・「既存ドック」システム2 に基づいて設計
■概要
父の家の改修です。住宅医意見交換に、この改修に至った背景を書いています。
http://hd-n.net/2009cgi/gallery/archives/42.html
本来ならば、既存建物の品質、改修部分の規模、コスト等、総合的な判断で建て替えになる可能性大、の物件だと思います。なぜ改修なのかという理由は、「私がやってみたかったから」の他にありません。高度成長期のこの地方の建て方と、劣化の状態の知見には、絶好の機会でした。
家の歴史:昭和50年に、父が購入した小さな中古の家は、昭和40年に新築。約100坪の敷地に、20坪の平屋建て上屋付き建て売り住宅として販売されたものです。購入後、建物の周囲をぐるりと囲むように増築して入居しました。当初の計画では、子供が成長したら土地を売却し、他の場所に移り住む予定であったので、家に対する特別な思いはありませんでした。
改修趣旨:入居時、昭和50年に増築した部分全てと、昭和40年に建てられた築46年の一部を撤去し、建物周囲に再びぐるりと増築(=スケルトン)。このスケルトンで、耐震、温熱環境を向上させます。残った築46年部分は、インフィルと考え、今後、室内の改修が必要となったときに、耐震性等を低下させることのないように備えます。改修完了時が完成ではなく、住みながら、必要な箇所に手を入れつつ、共に生きる家を目指します。

右手に見える下屋が、昭和50年に増築された部分です。


周囲をぐるりと撤去し、新しく造られる構造体で残った部分を補強します。


古い無筋の布基礎は、新設される基礎で補強されています。


土塗り30mmの外側に断熱材(パーフェクトバリア)80mmを入れています。


外壁は、全周杉板張り。あえて無塗装とし、経年変化を観察します。



屋根には太陽熱温水器のパネルを載せ、室内の通り土間に蓄熱槽を設置しています。
奧に白く見えるのが蓄熱槽。

改修後の父の部屋。茶色い色をした木材が、改修前からあった材料です。
希望通り、この部屋の横にトイレが設置されました。

6畳の土間からキッチンを見たところ。
人々が集えるよう、開放的な空間にしました。



土間の外には西に伸びる道路があり、お彼岸には道路の先に日が沈みます。
このあたりでは、西日を嫌い、西面には全く開口部を採らない家も多くありますが、父の家では、夕日を眺めるのが楽しみ。通風を兼ねて大きな窓をとりました。
夏には緑のカーテンをつくります。

日が沈み仕事を終えたら、くつろいだ時間を過ごします。土間に集い、いつの間にか窓台がバーのカウンターになっていました。
建て替えでなく、必要な部分を、必要な時期に改修し、大きなローンを抱えない。
そうすることで、生活に少しゆとりができ、その分、暮らしを楽しむことができるのではないか、との思いから、父の家を実験台に、改修の実践をしました。
これからも、少しずつ手を加えたり、温度や湿度のデータを採ったりして、その報告をしていく予定です。


Title 事例紹介2012-25
Posted 2012/06/10
Category 改修事例紹介