№0026〜垂水の家 改修工事
トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田保之
■工事場所:神戸市垂水区
■工事期間:2011 年 3 月〜2011 年 9 月(実質 4.5 ヶ月)
■主要用途:専用住宅
■構造・規模:木造在来構法 2 階建
■築年数:築 30 年
■1F 床面積:81.60 ㎡ 2 階床面積 43.47 ㎡ 延床面積:125.07 ㎡(37.83 坪)
■施工:アトリエ・エイト
■平成 22 年度第 1 回 長期優良住宅先導事業(国土交通省) 採択
■木造建築病理学・「既存ドック」システム2 に基づいて設計
■概要
以前、病理学通信で詳細調査の報告をさせていただいた、垂水の家が完成しました。
詳細調査の様子は、こちら(http://hd-n.net/2009cgi/gallery/archives/55.html)をご覧ください。
敷地周辺は、大手不動産会社の分譲地であり、同形状の住宅が 200 棟ほど建っています。
これら住宅のほとんどが築 30 年を迎えたこともあり、不動産会社から「そろそろリフォー
ムしてはどうか?」と提案されたことが、リフォームを行うきっかけとなっています。
2011 年 3 月解体工事が始まりました。
阪神淡路大震災の震源地付近であり、隠れた被害があるのか、どの程度なのかが気になる
ところでした。調査時に 2 階の居室の床が傾いていたのでのですが、この原因が何なのかわからなかった
ので、解体後の再調査は必須でした。
2 階の床をはがしてみると、その原因となったであろう箇所が見つかりました。
蟻掛け部分が、少し浮き上がっており、これが床の傾きの原因になったと思われます。
なぜ、梁が浮き上がったのかはわかりませんが、予想をするに、阪神淡路大震災時に縦ゆ
れがおこり、梁がポンと浮き上がったのではないかと思います。
金物で留まっていたので外れることはなかったのかと思いますが、こういった現象も起こ
りうるということがわかりとても勉強になった瞬間でした。
この住まいは、鉄筋入りのベタ基礎であり、屋根の改修も行う必要がなかったため、特別
な工夫が必要なリフォームではなく、改修前後の状態や性能を「定量化」することが重要
なポイントでした。
耐震性を例にとると、診断時は 0.5 ですが、治療によって 1.0 や 1.5 にするといった定量化
が必要であるように、治療後は、断熱性や省エネ性、防露性、蓄熱性など定量的に整理し、
表示できるように設計を進める必要があります。
特に、既存住宅をリフォームする場合は、BEFORE「診断」・AFTER「治療」を明確にすることで、住まい手の不安を取り除き安心してリフォームに挑むことができます。
これからの次代は、安易に壊して建て替えるという選択をするのではなく、住まいをより
長持ちさせるために診断・治療をしていくことが大切だと感じます。
●通風が良い家ってとても気持ちがよい。
この住まいは、春や秋の通風、夏の深夜に外気を取り入れることができるように、北面の
開口部に木格子を取り付け、玄関には格子網戸を取り付けています。
こうすることで、外出時や就寝時にも防犯対策をしながら通風効果を得ることができます。大切なのは、「常に開放した状態にできるかどうか」だと感じます。
●軒や庇の大切さ。窓を開けることができる家。
軒・庇は、雨や日射による壁面劣化防ぐことができ、かつ、雨天時でも窓を開放すること
ができます。
就寝時に雨が降った場合、軒や庇、木格子があると窓を開放して通風を得ることができる
のもご承知のとおりです。
とても当たり前のことですが、最近では、自然とうまく付き合える家が少なくなっている
のも事実です。
より良い方向に変わっていくことを願って家づくりをしていきたいと思います。
トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田保之
ファイル 188-6.jpgTitle 事例紹介 2012-26
Posted 2012/07/10
Category 改修事例紹