松井 郁夫 (松井郁夫建築設計事務所/住宅医協会理事/東京都)

■1991年に自宅マンションを中古で購入しました。
竹中工務店施工、三井不動産サービス管理のパークマンションシリーズです。
住み始めてすぐに理事会の設備係になって、排水管の施工不備のため、既存の建物の下にピットを新設して管の取替とルート変更をしました。当時トンネルロボットが開発されたばかりでしたので、可能になった工事です。
■その後、事情があって15年ほど人に貸して留守にしていましたが、孫が7人に増えたので、みんなが集まるには、購入時にワンルームに改装してあった自宅マンションがいいだろうということになり、2016年春に戻りました。
ちょうどその頃に、マンションでは営繕委員会ができて、耐震補強問題に取り組んでいたようです。197戸のマンションですから大手建設会社のOBが多く居住しているのですが、引っ越してすぐの総会では、耐震補強の計画はなかなかまとまらないので後にして、大規模修繕が先だという決議になっていました。
OBたちの営繕委員会では、5年間も計画が進まなかったようです。船頭多くて、暗礁に乗り上げていたということが後でわかりました。
■そこで2018年の総会で理事長に立候補して、旧営繕委員会を解散し、新しくリニューアル委員会を立ち上げ、耐震問題と大規模改修に取り組みました。
2019年の1月に東京都の耐震工事の講習会に行ったところ、耐震補強工事費の補助が2021年3月で打ち切られることがわかり、急いで耐震補強と大規模工事の同時施工を提案して、議案書を書いて臨時総会を開き可決しました。
■実は自宅マンションでは、私が留守にした15年の間に建築関係のコンサルタントに依頼して、毎年多額の費用をはらって耐震診断調査や提案作成等に費やしていました。全く実効性のないひどい計画案が長々と続いていたのです。
これ以上、無駄な費用はかけられないと判断し、そのコンサルはお断りして、耐震補強案を設計コンペで募りました。3案集まったうちの、最も実効性の高い案に決まり、工事予算を概算してもらい次に進めました。
■幸い居住者の中に銀行マンがいて、ファイナンシャルプランニングをかって出てくれました。おかげで、先のコンサルが示した一戸あたり費用が、10年間の毎月の管理費の値上げのみで返済可能になりました。当初噂されていた額の1/8で済みました。
■次は工事会社の選定です。これも工事金額の入札コンペで最も安く信頼の置ける会社に決まりました。後でわかったのですが、全国で最も大きなマンション専門の改修工事会社でした。終始誠実な施工に感謝しております。
工事開始は、2020年の1月から12月まで。2021年の年末までの工事完了が補助金交付の条件でした。一棟あたり4000万円の耐震工事の補助金が後に増額になり助かりました。
■さらに、補助金は耐震補強他にも省エネルギーの助成金もあり結露のひどかったサッシの性能を上げることができました。玄関ドアも取り替えました。その助成金で2200万円もの返済金を減らすことができました。新しく依頼したコンサルの手柄です。そのコンサルは、40年前から町並み保存の運動でご一緒した知り合いの事務所の方です。
■工事の間は、工事会社と毎月1回から2回の施工会議を重ねて、完成まで順調に進めました。昨年の夏は猛暑であり工事開始時からのコロナ禍もあり心配の連続でしたが、良い工事会社スタッフと職人たちに恵まれ、楽しい工事期間でした。外壁の色や玄関ドアの色も住民アンケートで決めました。

PC　Uフレームの検査

低層棟Uフレーム竣工

■高層棟は中間層の補強が必要で、コンクリートのベランダを落として外部に柱を打ち増ししたり、低層棟はプレキャストのUフレームの設置に巨大な基礎掘削工事を行うなど、大きな工事音にも関わらず住民のみなさんの苦情もなく、救われました。それだけ耐震工事を待ち望んでいて期待していることがわかりました。
■築50年になる躯体は鉄筋が見えるようなコンクリートの剥脱や損傷が多数あり工事費の追加になりましたが、先程の補助金の増額と助成金の確保でお釣りが来ました。予定していた金額よりも安くすんだのです。

低層棟Uフレーム竣工

工事竣工ドローン撮影写真

■工事後に住民の方から「新築したみたい！」と言われたのがとても嬉しかったです。今月27日の総会で、3年間の理事長を退きますが、最後に工事中に悩まされた個々のリフォームによる共有部分の無許可の改修が躯体を損傷しており、今後の対策として「リフォーム細則」を新たにつくりました。リフォームの際の留意点を明記し、届け出をしてもらいチェックするためです。
そのために自宅マンションのかかりつけの住宅医としてアドバイザーなることを提案します。総会を通るかなぁ？？

30年前にワンルームにした自宅内部

耐震補強後にできたテラスと庭