昭和49年につくられた土壁を壊してわかったこと!土壁の再利用を考察する~住宅医リレーコラム2021年5月

豊田 保之(住宅医協会理事/トヨダヤスシ建築設計事務所代表/京都)

「土壁するの久しぶりやわー。10年ぶりかな!」という左官職人さんも多いのではないでしょうか。10年も土を塗っていないと、土壁がどんな素材でできているのか忘れてしまっていることも。一方で、「壊した土壁の土を再利用できるんでは?」と、土壁を塗ったことがない実務者の声。一言で「土壁を再利用」というと聞こえはいいですが、本当に再利用できるのでしょうか?

 

よくわからないことも多いので、まずは、解体現場から土壁が何からできているのかを確認し、再利用する際の注意点を考察してみようと思います。

こちらは、リフォーム現場の着手時の写真です。
和室の土壁を解体しようとしています。真壁です。木づちで叩いて土壁を壊していきます。

 

 

まずは、土壁がどんな材料でできているのかを確認します。ざっくり分けると、荒壁(荒土)、中塗(中塗土)、仕上の3つに分かれます。荒壁と中塗の違いは、砂が入っているかどうかが大きなポイントです。仕上は、もし漆喰ならば石灰が入るので明らかに素材感が変わります。

土壁を再利用するならば、漆喰の除去は必須です。

荒土と中塗土は、同じ土系なので、分別ができそうかどうか、解体現場の写真から確認したいと思います。

 

 

和室の土壁を木づちで叩くと、反対面の壁から土が崩れ落ちてきました。反対面はベニヤを張った大壁です。

 

 

ベニヤを剥がすと、壊された土壁があらわに。なかなか頑丈なようです。

「土壁は壊すのが簡単」とは言えません。

 

 

壊してみると状況が解ってきました。土壁は、乾燥による収縮割れがあるので荒土ということがわかります。中塗土では、こんなに大きな収縮割れは起こらないので、ここで荒土か中塗土かの判断がつきます。
大壁で仕上げている場合は、手間をかけて中塗土を塗っても塞いでしまうので、中塗土を塗る費用がもったいないと考えるのが一般的。なので、荒土を塗った状態で胴縁を施工しているということでしょう。

 

 

どんどん壊します。土なので粉塵がでます。マスクは必須です。

 

 

ようやく壊し終わりました。竹小舞と土壁は分離できています。

 

 

竹小舞は、ビニール縄で巻かれていました。38年間土壁の中に埋まっていたわけですが、ビニール縄は、損傷もなく健全でした。

エツリ竹(間渡し竹)と小舞竹の存在も確認できました。

 

 

さて、壊した荒土はというと・・・・。竹や木のくずと一緒になって残骸のように溜まっています。土を再利用する場合は、竹や木くずを取り除き、フルイでふるって分別しなければいけないようです。

荒土と中塗土は、見分けがつかない上、荒土と中塗土の分別がしにくいので、「古土=砂が入った荒土」と思っておくのがよさそうです。

 

 

解体中にフルイにかけられないので、とりあえず袋詰めです。

 

 

こんな専用の道具を使ってスサや骨材、不純物を分別し、ようやく土として使用できます。再利用までの道は遠いですが、ゴールが見えるとイメージしやすいのではないかと思います。

 

 

さて、既存の柱に貫穴やエツリ穴が確認できました。竹小舞土壁には必須の加工痕に加えて、暖簾(のれん)が施工されていました。暖簾(のれん)は、一般的な家でも施工されてないことが多く、この家は、とても質の高い土壁であったことがわかりました。

 

 

暖簾(のれん)というのは、柱と土壁の間に隙間ができないようにする気密処理材のことです。暖簾(のれん)を施工し、土を塗ることで隙間風対策ができます。

昔も、きちんと仕事ができる状況であれば、隙間風対策も容易にできたわけです。

 

 

まとめ

土を再利用する場合は、「荒土」「中塗土」「仕上」を理解することが必須です。仕上材は完全に分別除去し、荒土と中塗土を再利用材とすることになります。その場合、荒土と中塗土を分別するのは難しいので、「古土=砂が入った荒土」と認識しておくのが良いでしょう。砂が入ると塗りやすくなりますが、粘性土が弱くなるので、できれば、新しい荒土と古土を混ぜて使う方が良いのではないかと思います。
竹小舞の状態もよければ、再利用は可能です。リフォームで、部分的に土壁の補修が必要な場合は、保管しておいた竹を使い、分別した土を使うと材料代はゼロ円です。資源を大切するならこれもオススメの方法です。

 

(※)中塗土は、土の粘性土によって、砂の分量が変わるので、砂をほとんど入れない地域もあれば、たくさんいれる地域もあり、見分けがつきにくい場合もあります。
土を再利用する場合は、現地の左官職人さんとも相談して進めてください。