消費増税10%とCOVID-19の影響で住宅の建設工事費はどのくらいあがっているのか?~住宅医リレーコラム2020年7月
豊田保之(住宅医協会理事/トヨダヤスシ建築設計事務所)
建設工事費デフレーター
最近、工務店さんから届く見積がなんだか高い。台風の影響か、それとも消費増税の影響か、物価上昇や職人不足からくるものか、10~15年前は、もっと安かったと誰もが思っているのではないでしょうか。そこで、国土交通省が発表している建設工事費デフレーターという工事費の統計データを、住宅に絞って、グラフ化してみました。
グラフは、
・2005年4月から2020年4月までのデータ。
・2011年を100%とした場合の比較。
・青ラインが木造住宅、赤ラインが非木造住宅。
となります。
2019年10月
下のグラフは、2005年4月から、消費税が10%にあがった2019年10月までのグラフです。消費税は、このグラフには考慮されていないので、実際は、もう少し工事費があがります。
15年前の2005年4月は、94.8%でしたが、2019年10月には、112.0%となり、この14年半で、17.2%も上昇していることがわかります。この期間の中でも、リーマンショックがあった年は5%程度の上昇があり、景気悪化のすさまじさがよくわかります。
2019年11月
次は、1か月後の11月です。10月は112.0%でしたが、11月は110.7%に下がりました。消費税は含まれないといえ、8%から10%への上昇は影響が少ないのでしょうか??
2019年12月
11月はそれほど上昇していないので安心をしていましたが、12月は、いっきに上昇し116.3%です。年末だからでしょうか?それにしても飛びぬけています。
2020年1月
2020年1月です。昨月の12月が極端に上昇しびっくりしましたが、1月は落ち着き112.6%です。この頃からCOVID-19が少しずつ広がりをみせます。
2020年2月
2月です。日本でもCOVID-19が話題になり、月末には2週間のイベント自粛要請も。3月以降に開催されるセミナーやスクールもこのあたりから、徐々に延期や中止になりました。
ただ、デフレーターのデータは変化が小さく、112.5%です。
2020年3月
3月になり、113.6%と上昇しました。COVID-19の影響なのか、気がかりですが、なんだか嫌な上昇率です。3月中旬以降から感染者が増え始め、政府もそろそろ本格的な対策へ。リーマンショックの年は、2月頃から上昇し、元の指数に戻るまで約1年費やしています。はたして、COVID-19はさらに景気が悪化するのかどうか?リーマンショックと同じように5%も上昇するとえらいことです。
2020年4月
令和2年6月30日付けで、4月の数値が発表されました。COVID-19の経済不況がリーマンショックを超えるといわれ出しましたが、デフレーターの統計データは、1.9%ほど下降し111.7%となっています。
まとめ
30坪2000万の家を建てようとした場合、2005年以降から2020年を比較すると、以下のような建築費になりました。単純に、2000万円にデフレーターの比率を掛け、消費税を考慮しただけですが、15年以上前の坪単価は参考にならないということがよくわかります。
2005年4月2000万の家×94.8%+消費税5%=1990.8万(66.36万/坪)
2014年4月2000万の家×105.3%+消費税8%=2274.4万(75.81万/坪)
2019年10月2000万の家×112.0%+消費税10%=2464.0万(82.13万/坪)
2020年4月2000万の家×111.7%+消費税10%=2457.4万(81.91万/坪)
結果は、坪単価の上昇率を見ても、一目瞭然です。この15年でこれだけ建設工事費があがり、さらに今後は、COVID-19の影響もでてくると思われます。この1年は、これまで通り新築受注増を目指すのか、それとも、リフォーム・リノベへとシフトチェンジするのか、運命の分かれ道になりそうです。業界関係者は、今後の建設工事費デフレーターに要注目です。
参考資料
建設工事費デフレーターの概要(平成23年度基準)概要及び改定内容
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000018.html
建設工事費デフレーター 最新の公表資料
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000112.html
©Toyoda Yasushi , jutakui
豊田保之(住宅医協会理事/トヨダヤスシ建築設計事務所)
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