住宅医コラム 意見交換2015-59
妻にとっての定年リフォーム
宝塚Iさんの場合 ~ その10 冬の暮らしのヒアリング。
三澤文子(MSD)
2014年の11月4日に、改修工事は修了。冬に向かう前にリフォームされた住まいで改めて暮らし始める Iさんご夫妻。冬の寒さの解消が第一の目的だったのですから、寒さが段々と厳しくなってくると、どんな具合か、心配になります。そこで、温湿度のビフォア―・アフターを知るために、改修後の冬、温湿度の測定を行います。改修前の測定の同じ時期に測定するのが理想なので、寒さの厳しい1月末から2月はじめにかけて、2週間ほど温湿度計(データロガー)を Iさんのお宅に設置させてもらうことになりました。
さてその前に、冬の暮らしの様子をヒアリングするために 2015年1月15日 Iさんのお宅に伺いました。
「荷物の片付けが大変で。」と言われていたのですが、家の中はすっかり片付いて綺麗になっています。床板が白木なので、初めて伺った時に比べかなり明るくなったという印象です。早速、気になっていた寒さのことを伺いました。
当然のことで、灯油ストーブは使用せず、エアコンのみの暖房。ただ、ご夫妻の快適室温が異なるのか、2人のご意見が違っていますが、全般的には「隙間風がなくなって暖かくなった。」とのご意見にホッとしました。ただ、ご主人は「スリッパが嫌いなので靴下で過ごしているが、やはり足が寒い。」との感想です。これには若干ショック。何の問題も無く暖かくなったはずだと過信していたからです。また、台所の暖気もあり暖房無しでも脱衣所は温かいのでは。と予想していましたが、ご主人が入浴の際は、脱衣所では小型の電気ストーブを使用しているとのことで、これもワタシ的には少し残念な結果でした。
I邸はQ値(熱損失係数)が2.93W/㎡K。改修前が10.89 W/㎡Kだったのですから、かなりの性能向上なのですが、改修前は灯油ストーブを思い切り使って暖かくしていたので、増エネで、室温はムラがありながらも、ご主人の周りだけはかなり暖かかったのかもしれません。これは温湿度の計測をして、さらに分析してみなければなりません。
そんなことで、夫妻の意見は割れながらも、暖房を適宜使用して「快適にくらしています!」との感想で、まずます安心。といったところでしょうか。
ヒアリングのあとは、ぐるりと回って暮らしぶりを拝見。
コンパクトになったご主人の書斎もなかなか機能的で使いやすいとのお話です。ここにも電気足温器があり、「これで快適!」とのこと。内心、これも「寒がりさん」の習性なのか・・・
Iさんは、暖かい台所でご満悦。この日も私たちのためにランチの準備をしてくださっていました。北の景色を見通せる窓を、最大限大きくとったためか、台所はとても明るくて、白と木の色が爽やかです。野菜や果物など食材が映えるように思います。
今回、改修後の暮らしのヒアリングができたと同時に、とっても美味しいランチを頂くことになりました。
お料理利上手な Iさんは、真夏の工事中、いつも手づくりの差し入れを持ってきてくださって、みんなで美味しく頂きました。そんな夏を思い出す、ひとときでした。
さてさて、このあと、1月末から計測した I邸の温湿度データ。それを分析し、この10月8日「自立循環型住宅研究会第12回フォーラム」の「自立循環研アワード2015」で 担当の日野君が発表。見事、最優秀賞を頂きました。
このこともご報告かたがた、また Iさんのお宅に伺わなければなりません。今後の改善案の話題も含めて。
つづく