1.設立の背景
高度経済成長期から循環型社会への転換期である今、住宅においては法律の施行やリフォームが最重点と位置付けられた国の政策など、スクラップアンドビルドによる大量生産から良質なストックの形成へ、という流れに移行しています。
建築のプロはこのような社会の要請に答えられる職能を早急に習得する必要があります。
一般社団法人住宅医協会では、その前身団体「住宅医ネットワーク」において、人材育成と調査診断の技術開発に早くより取り組んで参りました。
中古住宅の流通の活性化やリノベーションが一般に認知されるようになりましたが、それに伴う見かけだけの改築・リフォームが溢れることに危惧を抱き、かかりつけの医者のように、患者(=既存住宅及びその施主)の状態をきちんと把握して対処できる人材の育成とその活動の後押しが、適切な既存住宅の改修に必要であることから、「一般社団法人住宅医協会」として法人化し、より組織的に、全国的に支援していくことと致しました。
2.一般社団法人住宅医協会の目的
既存住宅の調査診断、改修、維持管理に関する技術開発と人材育成に関する活動を行い、住宅医の普及をもって持続可能な社会の構築に寄与すること
以上の目的を達成するために
◯「住宅医」の認定
◯「住宅医」の育成と業務の支援、補助(住宅医スクールの運営)
◯既存住宅の調査診断、改修、維持管理の技術開発、製品開発
◯住宅医認証付き既存住宅の認証事業(検討中)
◯上記に関連した一連の啓発活動。人材の派遣、講演、出版等
一般社団法人 住宅医協会の事業
1住宅医スクールの開催(人材育成)
住宅医スクールの講義を受講
住宅医検定会で事例発表
既存住宅の調査・診断・改修設計・施工・維持管理等の基礎から実践までを学ぶためのスクールを、毎年、東京・大阪・その他会場で開講しています。
全ての必須講義を受講された方(住宅医修了生)には、住宅医スクール修了証を発行しています。住宅医修了生を対象に実施物件のプレゼンテーションを行う「住宅医検定会」も開催しています。住宅医検定会に合格された方は、建築士であること、及び一般社団法人住宅医協会の正会員であることを条件として、「住宅医」として認定されます。
住まいのドクターである「住宅医」の育成を通じて、既存住宅に関する技術の向上と優良な住宅ストックづくりへ貢献します。
※住宅医スクールは、長期優良住宅化リフォーム推進事業(国土交通省)のインスペクタ講習団体として登録されました。(平成21年度~)
2改修手法・改修技術の開発
構造試験を実施し性能を確認
開発された構造金物
つくる技術よりも治す技術が求められる今、各地の住宅医により手掛けられる既存住宅の調査診断・改修事例の情報を収集し、手法の検証や改良提案、技術開発等を行うことで、調査診断・改修技術の向上に取組んでいます。
住宅医になるための3つの条件
1.住宅医協会の正会員であること
2.建築士の資格を有すること
3.住宅医スクールを修了し、住宅医検定会で合格すること
3調査診断手法の開発(「既存ドック」の開発)
詳細調査に集まった調査員によるミーティング
チームに分かれて床下や小屋裏を調査
私たちが受ける人間ドックのように、住宅医が行う既存住宅の調査診断を「既存ドック」と呼んでいます。
「既存ドック」では、建物の事前調査、詳細調査、診断報告を行いますが、主に性能向上のための診断として、既存住宅の劣化状況と、6つの性能(劣化対策、耐震性能、温熱・省エネルギー、維持管理、バリアフリー、火災時の安全性)のレベルを示しています。
住宅医協会では、調査診断方法や性能レベルなど、国の基準や各種研究成果に応じて、改良を続けています。