住宅医の改修事例№166 飛鳥高台のいえ ~築20年の築浅住まいの改修
日野 弘一( 住宅医・理事 / WASH建築設計室 / 大阪府 )

Photo by masato suzuki
設計依頼
都市部に住んでいる住まい手が、穏やかで自然豊かな住環境を求めて明日香村に移住することになりました。空き家バンクに登録されている 築20年 の建物を購入し、水廻りの更新と合わせて建物の性能向上の改修を依頼していただきました。マンションからのお引越しになるので、特に心配されていたのが、建物の断熱性。既存建物の性能を明確に評価し、適切な断熱補強をすることを望まれていました。
既存建物詳細調査
建物の調査は4人で1日かけて実施しました。築浅の建物になりますので構造要素、断熱要素ともに調査内容が多くなります。既存の図面が少なく、性能の評価のために調査で確認することが多かったです
【 構造調査 】![]() 柱脚柱頭の金物あり。筋交い金物は断熱材で見えず。 |
■![]() 雨漏れ無し 断熱材がないところから構造用合板が見える。 |
![]() 鉄筋の入ったベタ基礎。かなりしっかりした造り。 |
![]() 束もプラ束で健全な状態であった。 |
【 断熱調査 】![]() 天井断熱はグラスウール(GW)100㎜。状態は健全である。 |
■![]() 床断熱にはスタイロフォーム。一部落ちている。 |
![]() 玄関は引き違いの木製サッシ。 |
![]() サッシは基本的にアルミサッシのペアガラス。 |
【 設備 】 設備機器はまだ使えるが替え時でもある。 |
■![]() 配管については健全で問題がない。 |
【 内外部 】 内装仕上げは無垢材が使われていて経年劣化のみ。 |
■ 外部の焼杉板は一部浮いてきている。漆喰は健全。 |
改修前 建物の性能(既存建物)
Before![]() 一社) 住宅医協会 住まいの診断レポート |
既存建物の評価は高めで、そのまま住むにも十分に近い性能があります。ここから工事内容に合わせてできる範囲で性能向上を図ります。
設計方針
| 【Before】改修前の平面図 PDF 拡大表示 ■ ![]() © WASH ARCHITECTS |
【After】改修後の平面図 PDF 拡大表示 ■ ![]() © WASH ARCHITECTS |
●南側の恩恵を取り込む
既存の間取りは北側にリビングがあり南側に水廻りが集まります。北側が高台になっていて景色がとても良いためそのように計画されているのだと考えられます。今回、南側の和室をLDKに取り込み明るく、4人家族でも十分団欒ができる広さの空間を計画しました。空間が大きくなるのでLDK部分の断熱性の向上、空調計画に重点を置いています。
●既存の活用
既存建物でそのまま使える部分は立派な資産です。まだ20年しか使われていない建物なのでできる限り使えるものは使ってあげる必要があります。水廻りの位置を大きく変更しないことで既存の排水配管を活用しました。また床板もヒノキの無垢材だったので、研磨して再塗装することで床を既存のまま活かしました。
改修後の各性能
【 耐久性 (劣化対策)】
元々ベタ基礎であること、ユニットバスであることなどから劣化対策性能が高い住まいでした。外壁の焼杉板が劣化して浮いていた部分があったので補修し、全体的に再塗装を施しています。将来外壁を更新する時に通気層を設置できるとベターです。
【 耐震性 】
耐震性で気をつけたのは調査の時に断熱材で見えなかった部分の確認です。筋交金物が見えていませんでしたが、解体した部分から設置されていることを確認しました。また外壁の既存の構造用合板も、解体する場所で釘の仕様などを確認し計算に反映しています。
築年数の浅い、断熱材が入った建物は非破壊の調査だけではわからないことが多いので、解体時の再確認が大切になると感じました。
構造計画としては台所と居間を繋ぐために筋交を撤去したので、増築したことで増える壁を耐力壁とするなどして全体の性能を向上させています。
【 断熱性 】
平成16年建築ということもあり、既存の外皮熱貫流率Ua値は0.87となりました。外壁は触らないため、断熱補強は開口部を重点的に行いました。掃き出しの開口部は新たに樹脂サッシ、アルミ樹脂複合サッシに交換しました。腰窓は内窓を設置しています。勝手口以外を断熱補強しています。
開口部の断熱補強だけでかなり快適性が向上しますし、Ua値も良くなります。
玄関に風除室を提案しましたが、一体性を優先して断熱ドアで対応しています。必要になれば風除室にできるよう計画はしています。逆に勝手口は既存のままなので風除室を設けています。
今回は天井を変更するリビングの上に、フェノバボードを室内側に貼り負荷断熱をしました。二階の天井裏にも負荷断熱をしたいところでしたが二階は天井を触らない選択をしたので施工せず、将来触る時に補強しようとなりました。
【 省エネルギー性 】
築20年ということで、水廻りの設備機器はこのタイミングですべて更新しました。節水対応の器具にすることで省エネルギー性能が向上しています。また照明器具も新しくつけるものはLEDに交換しています。
【 バリアフリー性 】
元々あったシアタールームを書斎として造り替えましたが、この部屋は将来の寝室を想定して計画しています。水廻りへのショートカットができる動線も新設してバリアフリー対応をしやすいようにしています。また元々微妙に開口幅が小さかった玄関、浴室の出入り口を更新して幅を広くしてより性能を向上しています。
【 火災時の安全性 】
キッチンは火の出ないラジエントヒーターを採用しています。また火災報知器がついていなかったので必要な箇所全てに設置しました。
耐火性能については地域的に防火の指定がなく、周辺に十分な空地があるので元々対応できていました。
改修後の建物性能
After![]() 一社) 住宅医協会 住まいの診断レポート |
元々高かった性能ですが、断熱性を中心に性能を上げています。
開口部の改修を多くしたので、同時にバリアフリー性の向上にも繋げています。
断熱性が上がることで省エネルギー性も改善されています。
限られた工事範囲の中で同時にできる性能向上を出来るだけ実施しました。
【 床下エアコンの採用 】
広くなったLDKの空調として床下エアコンを導入しました。参創ハウテックのパッシブ冷暖です。
一番難儀したのは元々床面に断熱材が入っていた点です。床下空間の暖気を床面に伝えるために床断熱を撤去し、新たに基礎断熱としました。一階の床は撤去せずの工事をしたので、大工さんに苦労をかけました。
ただ、床断熱 → 基礎断熱の更新は、ある程度の床高さがあればできることがわかりました。
【 雑木の庭 】
LDKとお庭が大きな窓で繋がっているので造園工事にもこだわりました。土中環境の改善を手がける増茂造園設計舎に依頼してお庭づくりをしました。水と空気の通り道をつくるために敷地中に水脈づくりをしています。植栽は雑木の庭をイメージしています。
元々お庭にたくさん転がっていた「飛鳥石」もしっかり活用してもらいました。
水脈の流れつく場所に石を積んで空間を造っています。近くにキトラ古墳があるのですが、その石舞台をイメージした力作です。住まいもですがお庭のリフォームも既存のポテンシャルを活かすよう心がけました。
photo
■
■
■
■
■
■
■
■
既存建物の調査の重要性
築年数が浅く、まだまだ住まいとして十分に住めるレベルの建物でした。新しい住まい手の要望を実現しつつ、コストを出来るだけ抑えるために工事範囲の取捨選択が大事な作業でした。そのためにも住宅医による詳細調査の重要性をますます感じました。全て更新するレベルの古い建物と違い、調査結果次第で活かすことができる項目が多いのでより正確な情報が必要だと感じました。
No.166 飛鳥高台のいえ~築20年の築浅住まいの改修
建物詳細調査・設計監理:WASH建築設計室
施工:株式会社コアー建築工房
造園:増茂造園設計舎
竣工写真:鈴木雅人
Copyright © Hino Hirokazu , jutakui
日野 弘一
LINK
・ WASH建築設計室 / WASHARCHITECTS https://www.wash-arch.com
・WASH建築設計室 facebook.com instagram
・住宅医の改修事例 №0140 [古民家を土に還す] 日野 弘一 https://sapj.or.jp/kaishuujirei2023-140/
・住宅医の改修事例 №0116 [屋根葺き替えの相談を受けて~山上の矩勾配のいえ] 日野 弘一 https://sapj.or.jp/kaishuujirei2021-116/











































