各地の住宅医の日々№32 ~ 改修物件が違反建築、さてどうする?

中西 義照住宅医 /一級建築士事務所FORMA/ 京都市・亀岡市

3年ほど前、高齢のご両親と暮らすためのリフォームをしたいというご相談をいただきました。当時のご家族は、ご両親、今回の計画の依頼主である60代のお施主さん、お嬢さんとお孫さん2人という4世代で、お父様は入院中ということでした。退院されるまでに改修したいというご希望もあり、劣化改修、耐震改修をメインに、バリアフリー、省エネも含めながら外観はほぼ変わることのない改修についてお話しさせていただきました。

その後すぐにコロナ禍となり一時中断、その間にご家族の状況が変わり、お父様は亡くなられ、お母様は施設入居となったことで、当初の予定から家の使い方、暮らし方への希望が大きく変化することになりました。ご両親と暮らすことがなくなり、お施主さんの仕事にもコロナ禍で変化があり、暮らす場と仕事の場が兼用できる家、そして将来は京都の風情のある立地をいかし、お客様が滞在できる家にしたいというご希望でした。

まずは、新しい計画をするため調査をしていくと、検査済証がない、登記と建築確認図面と現状が異なる、建蔽率・容積率がオーバーしていることが判明しました。更に建築地は京都市の風致地区で、道路や隣地からの離隔距離についても満足していない状況でした。今回の計画では、屋根の形状変更や外壁色の変更が含まれており、風致地区の場合、外壁や屋根の変更においても許認可が必要となります。

そこで行政の担当部署に許可を取り改修するための相談をし、次のような進め方になりました。

1. 既存調査内容と違反部分の調書を作成し提出します。
2. 担当部署が違反部分の取り扱いについて協議を行います。
3. 協議結果をもとに許可を取れる是正計画を作成し申請をします。

また、周知の通り4号建物で大規模な模様替えや大規模な修繕の場合は確認申請は不要ですが、確認申請が必要となる増改築の場合、違反建築物に関しては違反を是正後、国交省の「検査済証がない建築ガイドライン」スキームを使う方法があります。確認申請に変わるものとして、増改築時の既存不適格調書の添付資料として活用が可能です。今回は、自己資金での計画で確認申請や検査済が必要ではなく、この方法をとることなく遡及適用となる部分の把握をしつつ進めることになりました。

これまで違反中古物件の改修や増改築等を手掛けることは、面倒なことを背負いこむような気がしていました。今回の事例で、行政と相談しながらよりよく改修する目途がたち、違反建築物でも方法を探れば次世代につなげることができる感触を得ることができたのは大きな収穫だと感じています。今後さらに住宅ストックを有効に活用していくためには、このような違反建築物の改修事例のみならず、改修のノウハウについて関わる設計者や施工者が情報共有する場が必要だと思います。ノウハウがわかれば、その場しのぎの改修ではなく持続可能な住宅に改善していくことができ、お客様にも社会にもより役立つことにつながるのではないでしょうか。

 

中西 義照
©Yoshiteru Nakanishi , jutakui


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