各地の住宅医の日々№1〜令和越前雪譜

本岡 美由希(住宅医/伊藤瑞貴建築設計事務所/福井県)

1月、北陸地方の大雪による高速道路での立ち往生が大きく報道されました。その影でなかなか報道されない大雪の中の生活についてご紹介したいと思います。
一言で「雪国」と言っても積雪量の幅は広く「大雪」と感じる雪の量は異なります。降り方も冬季は常に景色が白い地域、降っては解けを繰り返す地域など様々です。私の住む福井県福井市は後者にあたり、平年積雪40cm程ですので、1mを超える積雪は「大雪」でした。

私の勤める事務所では非常事態宣言時の経験から、すぐに在宅勤務に切り替えることができましたが、流通の広域化や通勤での人=車の移動は簡単に止められず、立ち往生、それによる除雪の遅れが頻発しました。また交通網が麻痺したことで、スーパーからは生鮮食品が消えました。自宅の前の生活道路が除雪されるまで5日間、在宅勤務の傍ら手作業で雪かきをしながら過ごしました。

さて、では雪国の住宅にはどのような配慮が必要でしょうか。スコップやママさんダンプなどの除雪道具、自家用車のタイヤ、長靴などを収納する場所は必須です。屋根には雪止めを取り付けます。雪というとふわふわしたイメージがあるかもしれませんが、北陸の雪は水分が多く重いので、軒が折れないよう強度は重要です。屋根からの落雪には特に注意が必要で、歩行者の安全、車や室外機、窓ガラスは落雪位置と重ならないように計画が必要です。
生活経験のない土地での設計には隠れた「当たり前の風土」があります。それを逃さず発見するために全国の住宅医ネットワークが活かされるのではないかと考えます。


本岡美由希さんより
江戸時代後期の越後魚沼の雪国の生活を紹介した書籍『北越雪譜』をご紹介いただきました。170年前も変わらない「雪国あるある」があるそうです!