講義の中でお伝えしたいこと|リレーコラム2022年10月

木津田 秀雄 ( 住宅医スクール講師 一級建築士 / 胡桃設計一級建築士事務所 / 兵庫県 )

住宅医スクールの講義の中で契約実務の留意点 を担当させていただいています一級建築士の木津田秀雄です。建築士が契約実務?って思われるかもしれませんが、私はいわゆる欠陥住宅の調査や鑑定を主に建築主側で行っており、住宅のトラブル等に詳しいということで講師依頼があったのだと思います。

本来、新しい家を建てる時、また改修工事を行う時に、初めは建築主も施工者も、みんなが喜んでもらえる良いものを作るという同じ方向を向いているはずです。そもそも信頼関係が築けない相手に、何百万円、何千万円のお金を払って工事をお願いするわけはありません。
しかしながら、改修現場では雨漏りをはじめ、意匠的な納まりの不具合や場合によってはシックハウスの問題など様々なトラブルが発生しています。特に改修工事では、元の建物の施工不良や傾きなどがあり、それらと新設される部材をどのように設置するのかという問題が常につきまとうことから、ある意味新築より難しい納まりを求めれられることも多いかと思われます。そのような中で、改修工事ならではの難しさや施工精度が低くなることなどを建築主には理解してもらっておく必要があります。
そのような中で、トラブルが生じないようにどのように設計者、施工者として対応しておかなければならないのかを「 契約実務の留意点 の中でお伝えすることできればと考えています。

最近の住宅関係のトラブルの相談では、設計ミスによるトラブル相談が増えているように感じています。例えば講義でも紹介させてもらった、某ハウスメーカーの全面改修工事では、外部建具のほとんどをペアガラスにして、1階の LDKには床暖房を入れる設計になっているのに、床下に一切断熱材が入っていなかったケースなど、本来の改修工事の目的を考えれば、あり得ない設計で明らかな設計ミスと考えられます。
これでは、本来の改修工事の目的(一定の断熱性能を確保して冬暖かく過ごせる)は達成できないことは明らかですので、このようなミスが発覚した際に、施工者のとるべき対応としては「 本シリーズでは床下断熱材が設置されているものと考えており、設計段階で床下断熱材を新たに施工することは考えていませんでしたが、工事開始後現場を確認したところ断熱材が未施工であることが判明したため、申し訳ありませんが、○○万円の追加をお願いできませんか と設計時の経緯も含めて誠実に説明することが求められるのではないかと思います。その際に、「 少し安くさせていただきますとでも付け加えていれば、大方の建築主は仕方がないが、必要なら仕方がないかと納得されるのではないかと思います。ところが、実際には引き渡してから数年後に、他の部分の不具合もあって、私が現場に入って初めて床下に断熱材が存在していないことが判明したのです。こうなると、もともと施工者に対して不信感が高まっているところに、火に油を注ぐようなことになってしまうことは必須です。

建築現場にはミスはある程度は生じるものですので、そのミスが大きくならないように処理するという施工者のコニュミケーション能力が求められているのだと思います(これはミスを誤魔化してしまう処理ではありません)。そのコミュニケーション能力は、専門用語や建築業界ではこれで当たり前だというものではなく、なぜそれが建築業界では当たり前になっているのかについて説明することから求められている時代なのだと思います。
先日建築紛争に詳しい弁護士が講演会で、施工者のコミュニケーション不足が、技術的な問題を感情問題にさせてしまっていると説明されており、私もそのような場面に良く遭遇しますので、まさにその通りだと感じました。
先の床下断熱材の件は、裁判所では請負契約には床下の断熱材の設置は含まれていないので、損害賠償請求は認められないという判断になるかと思いますが、何千万円のお客さんに対して、ほんとにそんな解決で良かったのかと思う気持ちが必要なのではないでしょうか。


LINK
・胡桃設計一級建築士事務所 http://kurumi-arc.p2.weblife.me/index.html
・「あなたが知らない家づくりの常識」木津田先生の書籍 https://sapj.or.jp/201810kitsudahideo/
・住宅医スクールカリキュラム・講師紹介 https://sapj.or.jp/aboutschool/curriculum/