住宅医コラム 意見交換2014-48
「家を見守る」ということ~ポジティブなメンテナンスのしくみをつくる。
三澤文子(MSD)
11月28日~29日、広島で開催された自立循環型住宅研究会フォーラム(通称:自立研フォーラム)に参加しました。私が主宰するMSDからは、私を含め3名が発表。
写真はMSD佐治さんの発表風景ですが、発表後は、発表した題材それぞれに対し5~6人の参加者で、ワークショップが行わるというスタイルです。
発表するためには、引き渡した後の、すでに住まい手が暮らし始めて数年間、暮らしの状況を聞き取りしたり、冬期、夏期に温湿度の測定を行うなど、室内の快適性を、住まい手と一緒になって、探究する姿勢が必要になります。
そして、引き渡しから最低1年ほどたって、その結果をまとめて、分析し、この自立研フォーラムという場で発表。すなわち『まな板に載せる』ことができます。これは設計した私たちの設計力の向上につながることは、もちろんのこと、その準備をするために、まめに住まい手さんへ様子をうかがい、時には訪問したり、連絡を取り合う友好関係が必要になります。これは、かなり有効なメンテナンスになると言っていいと思うのです。
得てして、設計事務所のメンテナンスというと、住まい手さんから電話がかかってきて、「雨が漏った」「建具が重すぎる」「羽蟻がでた」など、ある意味苦情的なことに対応することになります。そのために、何か、ネガティブな仕事にとらえがちです。
先駆的な工務店さんは、定期点検のシステムをつくり、苦情を言われる前に、その予防対策を実践しています。ただ、「設計事務所のメンテナンスとは?」と考えると、その方法は工務店さんにお願いし、もっと「プロとしての相談役」の役割があるのではないかの思うのです。
そう。ここで住宅医の登場です。病気になる前の予防をするように、また、かかりつけの医者のように、気軽に相談できる住宅医としてのメンテナンス。
特に大改修をしたあとの状況を見守ることは重要で、ただ、「見守る」と言っても、見守るシステムをつくらないと、言うだけに終わってしまします。その「見守るシステム」になんと この自立研フォーラムでの発表が欠かせないという訳なのです。
MSDでは、現在 温湿度計が11個あります。温湿度計を初めて購入したのは、いまから7年ほど前だったでしょうか。当初2台だけで始めた計測。今思えば、しっかりした計測もできませんでしたが、それら経験を積んで、現在は冬期になると計測スケジュールを組み、数件の住宅の計測を実施しています。
それが普通になってきているのも、引き渡したあとの、住まいの様子を把握することが必然になっているから。具体的に言えば、それらをまとめて、人前で発表しなければならないから。という理由なのです。今や、住まい手さんにも、「自立研で発表する。」ということを告げ、住まい手さんの代弁者となって参加する。と言った意識になっています。
「見守るシステム」を持つメンテナンスは、決してネガティブでなく、かなりポジティブです。このように、やる気の湧く「ポジティブメンテナンス」のシステムを、みなさんも実行してみてはいかがでしょうか。