2019年9月 住宅医リレーコラム

四国初開催セミナー報告・「地域の住宅ストックを活かす既存建物の改修設計」

村上登男一級建築士事務所
 村上洋子(住宅医・一級建築士)

 7月20・21日の2日間、松山市のポリテクセンター愛媛において、三澤文子協会理事が「地域の住宅ストックを活かす既存建物の改修設計」と題したセミナーを行いました。四国各県から住宅医5名とスクール修了生1名も講師として参加した、四国で初開催のセミナーでした。

 住宅医は、一般的に行われている、劣化診断や耐震診断だけでなく、温熱省エネ、維持管理、バリアフリー、火災時の安全性など、既存住宅の性能を総合的に診断する性能向上診断(既存ドック)を得意とし、住宅医による改修の品質の高さは群を抜いていると思います。住宅医になるにはスクール受講に加え検定会で合格する必要があり、講習を受けるだけで簡単に得られる資格ではありませんが、そのぶん今回のようにプロ向けのセミナー講師ができるくらいの実力が得られます。

 セミナー内容:1日目の午前は、住宅医スクールの核となる「木造建築病理学」の紹介から始まり、詳細調査方法と報告書作成、調査器具の説明。住宅医スクール第1回目の第1講義と第2講義をかいつまんだ内容です。午後からは、香川の中野弘嗣さんによる「改修版自立循環型住宅ガイドライン」を用いた温熱・省エネ改修の設計手法の講義に続き、温熱・省エネ改修の実践事例を、三澤理事と私が発表しました。

 2日目の午前は、徳島の多田豊さん、釜内晋治さん、香川の土居良助さん、高知の萩野裕一さんが事例を紹介。午後からはセミナーのまとめとして、3時間の「耐震+温熱・省エネ改修設計演習」を行いました。

 設計演習は、参加者全員の改修案に、三澤理事がコメントをつける形式でした。南面の採光を極端に減らした案に対する、歯に衣着せぬコメントにハラハラしたり、「愛媛は工事費が安いから2階に1部屋増築する」という予想外の案に、みんなで大爆笑したりと、大いに盛り上がりました。

 今回のセミナーで紹介された改修事例を見て、四国は住宅医が少ないけれど、それぞれの得意分野が際立っているのが強みだとわかりました。ポリテクセンターからは、参加者のアンケートに「勉強になった」と多く記載されていた、今後も続けてセミナーを開催したいと報告があり、次回に向けて動き出しています。

 他県のポリテクセンターの講師も参加し、地元開催に関心を示されていました。今回のように地方でのセミナーを行うことで、住宅医の仕事を広めて行きたいです。今年度の住宅医検定会の募集もそろそろ始まります。スクールを受講する以前の改修事例を使用して検定会に臨み、合格したケースもあります。皆さんもこの機会に検定会に挑戦し、お住まいの地域でのセミナー開催を目指してみてはいかがでしょうか。

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