竣工後の住まい手とのコミュニケーションをどうする?

NPO木の家だいすきの会 代表理事 鈴木 進

 新築戸数が減少する流れが着実に進んでいるなか、建築士の仕事は、今のまま変化なく続くとは誰も考えていないと思います。「人生100年時代」と言われはじめ、住宅所有者の意識も大きく変化していますが、設計事務所や工務店はそれをすくい取れているとは言えません。そのことを思い知らされたのが、3年前の2017年に実施した竣工後の住まいのメンテナスに関するアンケート調査です。約8割の住まい手が「点検は必要」と回答していますが、私たち建築関係者はこの問題に正面から取り組んでいるとは言えない状況でした。実は、同じアンケート調査の中で、住まい手から「自らが点検できるものならやりたい」というような意見も多く寄せられていました。
そこで、住まい手による自主点検を支援するシステムの開発を2018年度~2020年度の3ヶ年にわたって実施することを計画し、2018年度と2019年度の2ヶ年は、住宅ストック維持・向上促進事業(国土交通省)の助成を受けて、住まいの点検かるた(住まい手自主点検マニュアル)の作成と自主点検支援アプリの開発を行いました。

 

住まい手自主点検支援アプリの開発
今回開発した住まい手自主点検支援アプリは、住宅医協会理事の滝口泰弘さんが作成した住まいの点検かるたを使って、住まい手が自主点検した際に判断に迷う問題を発見した場合に相談できるようにしたものです。問題箇所について、スマートフォンで写真をとり質問内容を相談員まで送信してもらい、相談員は、その写真と質問を見て、必要に応じて担当の設計者や工務店の所見を加えて、アドバイスを返信することで、適切な維持管理を支援します。自主点検や相談の履歴は蓄積され、後日、見ることもできます。

 

図1.住まいの点検カルタ (滝口泰弘氏作成)

 

 

図2.住まい手自主点検及び工務店定期点検支援アプリのスキーム

 

 

図3.住まい手自主点検支援アプリ

 

住まい手とのコミュニケーションツールとしてのアプリ
開発した住まい手自主点検支援アプリを、実際に4人の住まい手に使いやすさなどを確認していただき、概ね良い感触が得られました。そして何よりも、このアプリが住まい手とのコストのかからないコミュニケーションツールになりうることがわかりました。

 

<住まい手の声>
・自主点検アプリがあると、積極的に自主点検しようという気持ちになった。良いきっかけになる。
・自主点検アプリがあると、自主点検のポイントがわかりやすく、自主点検がしやすくなると思う。
・1年間自主点検しなかったら、「そろそろ自主点検しませんか~」というメッセージが出たら、より良いのでは。
・「住まいの点検かるた」は、自主点検の点検ポイント、点検方法、対処法などが書いてあって有益だった。
・普段気づかない視点もあって役立った。
・思ったより点検時間もかからなかった。
・「不備」の事例がもっと掲載されているとわかりやすい。
・自主点検ツールは、劣化の早期発見につながると思う。

 

実用化に向けて
2020年度は試験運用で課題になった点を改善するとともに、工務店による定期点検アプリを追加し、実用化を図る計画です。