各地の住宅医の日々No40~木の住まいは文化と共に

毛利 隆之 住宅医 / 鴨川建築工房 / 京都市

京都の町家で生まれ育ち、大工さんに憧れて建築を志し、設計事務所や工務店に勤め、今は設計施工の工務店を営んでいます。なにぶん一人で一からやっていますので、ある程度の規模の新築もしくは改修工事だと年に一軒くらいのペースになります。

仕事に関しては、ちょうど先日、京都市北部の岩倉で久しぶりの新築住宅の建て方が無事に終わった所です。住まい手は70代の男性、50年ほど前に親御さんが建てられた家を老後の住まいとしてどうするか考えていく中で紆余曲折ありましたが、最終的には子孫のことも考えて建替えという選択をされました。ご両親が大事に手入れされてきた既存の日本庭園をより楽しめるような内部空間になるよう、秋の竣工に向けて鋭意、現場を進めていければと思います。


次に目下の趣味として、もう10年近くになりますが、「官休庵(武者小路千家)」で茶道のお稽古を続けています。元々は日本の住宅建築に関わるための教養として始めたものではありますが、茶碗をはじめとした陶芸、床の間に飾られる書画はもちろん、様々な伝統工芸、和菓子やお香、そして着物に至るまであらゆる日本古来の文化がその場に集結していることを思うと、思った以上に奥深く、興味の尽きない世界だと感じています。
先日は、伊勢神宮において千宗守家元奉仕による献茶式が執り行われる際に、所属している会が副席を担当することになり、かつて松下幸之助が献納、中村外二棟梁が施工したことで知られる「神宮茶室」でまだまだ未熟ながらお点前をさせていただく幸運に恵まれ、忘れ得ぬ一日となりました。


最後に仕事場についてですが、一昨年から上京区の相国寺門前町という所に移っています。中学時代からの親友の一家が当時住まれていた場所を、ひとまずそのまま事務所として使わせていただいていますが、ここは二戸一の長屋が計8軒並んでいて、いずれも元々相国寺の借家として建てられたものと思われます。築年数は相当で、それぞれが思い思いに手を加えられ、写真手前のオレンジ色の外壁がうちですが、並びの反対側には出格子などの意匠が当初のまま今も居住されているお宅もあり、特別立派な町家という訳ではないにしても、昔ながらの京都らしい景観を残してくれています。
周囲にはハウスメーカーによる建て替えも増えつつありますが、地域性もなにもなく画一的で商品のような住宅、それだけに埋め尽くされるのは寂しい気がします。この建物をうまく改修して、意匠的な魅力と性能を向上させつつ、文化の受け皿にもなれるような職住一致の木の住まいとして再生し、一般の方にもそういった選択肢を提示できないものでしょうか。まずは住宅医流の詳細調査から始めたいと思っています。

(写真・文)毛利 隆之
©Mouri Takayuki, jutakui


 LINK
鴨川建築工房 https://www.facebook.com/kamogawakobo
鴨川建築工房   https://www.instagram.com/kamogawakobo