各地の住宅医の日々 №36 ~2023年を振り返って~ 伝統と伝承の使命感の日々

北村 和康住宅医 / (株)TBJインテリアデザイン建築事務所 / 兵庫県神戸市)

私は古民家再生を行う中で世界との繋がりを感じました。
住宅医で学んだことを反映できた元紺屋の古民家再生物件でインテリアプランニングアワードの入選をきっかけに、2015年からフランス・パリに作家として出展するという機会をいただくことになりました。
パリ出展のきっかけとなった古民家の元紺屋で使用していた染め型紙(播州型紙)という伝統的工芸を使っての作品を主に出展しております。
ご縁があり播州三木で唯一 型紙を刻める職人さんに師事し今ではスタッフが刻めるようになりました。


自社で刻みパリデザインウィークに出展した KATAGAMI Style 作品

特に昨夏は有志とコロナ禍に創設した 一般社団法人 COOL JAPAN HYOGO としての出展がパリデザインウィークオフィシャルガイドブックにも掲載されるなど兵庫の伝統工芸や産業を現地に広めることができました。


2023パリデザインウィークでの出展の様子

日本の魅力を世界に紹介する雑誌 Wattention(フランス語版)に自身の古民家再生活動を掲載していただき、また掲載された古民家ギャラリーにパリで活躍するアート作家出展の橋渡しができるなど、目標にしてきた「伝統的建築 – 日本の古民家の魅力を世界へと伝承する」活動の結果が少しは出始めたと確信した年でした。


フランスにも紹介された古民家再生物件 Contrail Gallery

その古民家ギャラリーは住宅医の方々にも支えられ火災被災からの復興ができたギャラリーですが、再生復興を技術支援してくれたのが英国王室御用達 薪ストーブメーカー ESSE社(1854年 創設)の輸入元であり移築再生を行う民家再生協会の第一人者でした。
その恩師の依頼で後に ESSE日本販売会社を設立することになり、古民家などにも歴史ある英国の壁掛けガス暖炉の納入をしていたのですが、


古民家にも似合う老舗英国ストーブメーカー ESSE社の壁掛けガス暖炉

2021年に ESSE社がガス暖炉の生産中止を発表した為、いつの間にか私が英国の生み出した壁掛けガス暖炉を継承する国産開発の責任者になっていました。
恩師である社長からは「最高の機能を持つ暖炉を使う生活は、円満で最も幸せな暮らしと言える」 という名言を残し暖炉の重要性を訴えていたフランクロイド・ライトの理念を説かれ、日本の国民のため また日本の建築家のために開発を頑張るようにと背中を押され、2年半の開発期間を経てついに日本ガス機器検査協会認証を取得し 2023年11月に国産ガス暖炉の新作発表を行うことができました。


 国産壁掛ガス暖炉「FLRAME」 自身のライト坂のアトリエでも設計が進められたライトの理念と縁を感じる暖炉

そのような事もあり2023年はやりたかった建築に手が出せない状態でしたが、年明けから民泊仕様古民家再生や阪神淡路大震災後地盤沈下している絶景傾斜地の難題のフルリノベに全力で挑みたい と思います。
「誰かが素晴らしき伝統工芸や産業は継承しなければ終わってしまう」その使命感を持ちながら、住宅医で培った知識を最大に活かし、建築のハード面は勿論のこと住まう人の癒しなどソフト面でも考えることができる住宅医になれることを目標に今年も頑張りたいと思います。

北村 和康
©Kazuyasu Kitamura, jutakui


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(株)TBJインテリアデザイン建築事務所 http://www.tbj-design.jp