各地の住宅医の日々No.25 リノベーション版 LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅を目指して

宮木 寛信 住宅医 / エコワークス(株) / 熊本県 )

エコワークス熊本オフィスの宮木と申します。三澤文子先生には、熊本地震直後には地元にて住宅医スクールを開催いただき、社長も含め6名もの社員を会場にてご指導を受けるなど、たいへんお世話になっております。自社の取組みを紹介させていただける機会をいただき感謝しております。
今回は、住宅医個人の活動というより、住宅医スクールで学んだことをベースに、私たち4~7名程度のリノベ工事チームで日頃取り組んでいる仕事の一例をご紹介いたします。
ご紹介する計画は、「平成元年に地元ハウスメーカーで建てられた住宅」のI様邸リノベーション工事です。
お客様は、弊社リノベ展示場その他をご見学いただき、「木の香りと素材感」また「寒くない家づくり」に共感され、ご縁をいただくことができました。
取り組んだ内容を箇条書きにして、紹介させていただきます。

① リノベーション版LCCM住宅を目標とし「切妻」から「片流れ」屋根へ

2030年に義務化が予定されているZEH(net Zero Energy House)を実現し、さらに、2F屋根を「切妻」から「片流れ」に形態変更、太陽光パネル 29枚 9.86KW を搭載したことで、LCCM住宅を実現。

工事着工時|切妻屋根の外観(太陽光パネルの設置容量に「制限あり」

小屋裏[南西より見る]                            [南東より見る]
※内観写真は、プライバシー保護のため、公開しておりません。

工事完了時| ディープグリーンの金属製サイディングでシャープに仕上がった外観

[南西より見る]                                                           [南東より見る]

② BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)による省エネ性能表示を取得

性能担保のため、BELS認定を取得。
計画地は地域区分 Ⅵで、断熱等級4 の認定基準は「UA値 0.87」。
本計画は「UA値 0.44」にて設計施工し、断熱基準である 等級6(UA値 0.46)を越える性能を実現。

一次エネルギー消費量基準(高効率な設備の導入による省エネルギー化)削減率 35%
BELS評価基準である 一次 エネルギー 消費量削減率にて 35%を実現 五つ星(★★★★★)を取得。

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③ 【 増改築版 】長期優良住宅認定を取得

第3者機関 の審査による 増改築版 長期優良住宅認定を取得。お引渡し以降も、定期的なメンテナンスを実施し、維持保全を継続することにより、長く安心・安全に住み継げる住まい実現を目指す。

 

④ 性能のこだわりばかりでは無く、祖父所有の山から切り出した「 思いの詰まった木材 」を利用

「どうしても利用したい木材がある。」と言うことで、祖父所有の山から木材を切出し、天然乾燥、製材し、構造材として利用。( 270㎜角 通し柱の大黒柱や化粧梁その他として利用。)

吹抜を作り、上部へ開放感が増したリビングには、おじいさまの山から切り出し製材した「270㎜角の大黒柱」と「大梁」が使用されています。また、日頃から地産地消にもこだわりを持ち、輸入材利用に比べ、輸送時のCO2排出を抑え、省CO2への配慮ともなることへも意識して取り組んでいます。

 

⑤ 既存住宅状況調査資格者によるインスペクションを実施

既存住宅状況調査項目に加え、劣化状況調査を自社スタッフ 2名以上の体制で、終日をかけ「改修前インスペクション」を実施。また、解体後、リノベ工事チーム 4名以上による「構造検討会」を実施し、現場の状況を十分把握し、適切な修理・補強工事を計画し実施。

 

⑥ 地震地域係数Zを意識した耐震性能を確保

熊本県の地震地域係数Zを考慮し、再び熊本地震程度の大地震が発生しても、被災後も住み続けることを目標とし、Zが「1.0」の際、評点が概ね「1.5」程度になるよう耐震改修を実施。

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(熊本県の地震地域係数Z0.9を考慮) 耐震診断:評点0.63 ⇒ 評点1.61へ向上
※建築基準法の壁量計算も実施し、地震力だけでは無く、風圧力の検討も実施しています。既存住宅の形態次第では、希に地震力より風圧力の影響が大きい案件があるからです。

 

⑦ 高断熱・高気密にて実現可能な付加価値の提案( 床下エアコン )

室内のどこへ行っても温度差が少なく、快適に暮らせる床下エアコンによる床暖房を採用しました。


[吹き出し口イメージ]


[床下エアコン設置状況]                      [正面カバーを開いたところ]

1階床に設置されたエアコンにより、床下の空気を直接温め、各部屋の吹き出し口から出てくる暖気により、床と部屋の室内空気を同時に暖める全館暖房です。非居室である廊下、トイレ、脱衣室等も暖房可能なため、部屋間移動時の温度差によるヒートショックを予防し快適な暮らしを実現しています。

 

⑧ 取組みついての情報発信

空き家問題、介護問題、環境問題その他がある時代背景の中で、弊社YouTubeチャンネル(エコワークスリノベ-ション)を通して、リノベーションの価値や可能性について発信を行い、社会問題の改善に向けた情報を公開しています。

⇒ https://www.youtube.com/@user-pk7hw1of9q

 


また、弊社では SDGsを意識したリノベーションを実施。第一期「熊本県 SDGs登録事業者」として登録しています。高性能リノベーション・同居型リノベーションを提案の軸とした住まいづくりを通じた社会活動・環境活動にて利益の追求だけではなく、広くステークホルダーに対して社会的責任を果たすことを目標としています。
以上、私たちの取り組みを 熊本より ご報告させていただきます。


 LINK
・エコワークス株式会社│「木の家」リノベーション専門店│https://www.eco-renovation.jp/
・エコワークス株式会社 https://www.eco-works.jp/
・YouTubeチャンネル(エコワークスリノベ-ション)https://www.youtube.com/@user-pk7hw1of9q