各地の住宅医の日々No.15 | 西川の森に魅かれて |

太田 陽貴住宅医 / ヒダマリデザイン設計室 / 埼玉県

埼玉県所沢市に住んで18年、設計事務所として独立して9年が経とうとしています。
「近くの山の木で家をつくる」という言葉に心惹かれ、埼玉の山の方々とご縁を繋いでいきながら理想の家づくりを実現させたいと思いながら独立しました。
ご縁があったのは、所沢市にも近い、飯能市で西川材を普及する活動をしている「NPO法人西川・森の市場(以下、西川・森の市場)」です。活動メンバーは、森林所有者から素材業者、製材所や材木店、建築設計者や工務店、個人の方々と様々です。
「森とつながる木の家づくり」がしたい、と思っている私にぴったりなグループでした。活動に参加して8年目になります。


( 伐採見学にて切り倒された木 / 西川・森の市場 代表井上さんの山 )

埼玉県南西部、高麗川、越辺川、名栗川(入間川支流)の流域は「西川林業地」と呼ばれています。江戸時代、この地域から木材を筏に載せて江戸へ運んでいたので、「江戸の西の方の川からくる材」という意味から、この地域の材は「西川材」、その生産地は「西川林業地」と呼ばれるようになりました。西川林業地は、現在の飯能市、越生町、毛呂山町、日高市の4市町にまたがっています。そのひとつ、飯能市は、市域の約4分の3が森林に覆われた自然豊かな地域です。東京都心から40~60km圏内という場所にあるので、「近くの山の木」がある場所なのです。
このグループでは、「時代が求める良質な西川材を供給し西川の森と直接結ばれた家づくりをサポートすることによって、地域の財産・西川の森を守る」という理念で活動しています。
それぞれが、それぞれの立場で、垣根を越えて協力し合っていく姿勢に共感をし、現在も活動を続ける原動力となっています。

数年前に、「てにもりの家」というブランドを作りました。木の家は、「手に届く森」。てにとどくもり=てにもり、という造語です。
「てにもりの家」の条件のひとつに、建て主さんに西川の森を見て感じてもらう事、というのがあります。まずはそこから小さな一歩を踏み出します。「てにもりの家」をつくることで、建て主さんも含めて家づくりに関わる皆が、西川の森を守っていくことにつながります。
全国にいる住宅医の皆さんも、地域の木を使った活動をされている方が多いという印象を受けました。一つ一つの活動の積み重ねが、子々孫々に至る、日本の森と未来を守ることに繋がっていくのではないかと感じます。

事例をご紹介します。

( てにもりの家 上棟時 住宅新築にて西川材を使用 )

リノベーションや家具にも、西川材活用の可能性があります。

( 事務所エントランスのリノベーションにて西川材を使用:家具 )

最後になりましたが、エピソードをひとつ紹介して締めくくりたいと思います。
独立した年に住宅医スクールに通い始めたのですが、このスクールで西川材を普及する活動をしている方にお会いすることができたのです。
そんなきっかけを作ってくださった、住宅医協会、住宅医スクールの皆様に心から感謝をしています。


【 関連情報 】
NPO法人 西川・森の市場 てにもりの家 https://tenimori.net/