各地の住宅医の日々No.21 ~オペをせずとも、医者の仕事に変わりなし

林 美樹 (住宅医 / 一級建築士事務所(株)StudioPRANA / 東京都)

昨年10月、東京の住宅医チームで軽井沢の住宅調査を行なった。協力してくれたのは滝口さん、小森さん、丸山さんという私以外は超精鋭メンバーだ。
依頼主は、私の遠縁で民放のプロデューサーをしているNさん。数年前から軽井沢との2拠点居住を始めたが、ポストコロナは軽井沢に腰を据えようと古家を購入した。新幹線の駅から徒歩圏内の便利な場所で、昭和34年建築、一時期は三橋美智也さんが別荘として使っていたらしい。
Nさんは古家を購入した時、すぐに解体して新築するつもりだったらしいが、仕事場に使っているうちに「可愛くなってきちゃった」という。そして、「改修するのと新築とどちらがいいのかしら?」と相談を受け、まずは既存建物調査を勧めた。改修に値するか、資産として納得のいくものになるか、などしっかり検討してから判断するのが良いと思ったからだ。


360°カメラで(滝口さん撮影)

調査当日は、床下、小屋裏などはベテラン小森さん、丸山さん、当日の総括と報告書のまとめは滝口さんが担当してくださった。本当にありがたいことで、頭が下がる。
基礎および構造に多少の問題が見つかったが、もちろん改修で解決する方法はある。あとは、Nさんがこの家に価値を見いだせるか、だった。
古い家を活かしたいと思いながら悩んだ末にNさんが決断したのは「解体、新築」だった。但し、気に入っている建具や、ちょっとした素材などは再利用するということで、現在設計が進んでいる。


施主お気に入りの建具

東の和室 新築後もここが寝室となる

家を建てるという行為は、人生の最大イベントであり、建築士はそれに寄り添い、財産を預かり、暮らしをアドバイスする。とすれば、オペ(改修)はしなくても、私たちは住宅医であることに変わりはなさそうだ。