建設費コスト変動についての現状~住宅医リレーコラム2021年10月
泉保 真史(住宅医 / 新産住拓株式会社 / 熊本県)
今回のコラムは、コロナが起因となる受注動向と、ウッドショックにおける建設費上昇について、九州での自社状況報告も交えお話いたします。
ウッドショックについては皆さんご存じのように、始まりは、米国の住宅市場の好調に加え、コンテナ船による海上物流の滞りが重なったことを起因として、昨年秋頃から日本国内に入る木材の量が減ったことによります。昨年11月以降、構造用集成材の輸入量は前年同月比で20~30%の減少となり、今なおつづいているとの事。不足している輸入材の代替えとして、構造材や羽柄材の一部を国産材の杉や桧に切り替える動きが出ているが、元々取引のある住宅会社へ供給する分を確保するのが精一杯で新規の要求には対応できないのが現状との事。これにより、5月には木材単価が、杉丸太で14%、杉正角は1.4%上昇したとの事。現在も高騰を続けています。
国内の針葉樹合板は品薄が続いており、8月での状況は納期未定に加えて、卸メーカーが値上げのアナウンスを行っている状況。
日本への輸入合板は深刻な欠品状態が続いています。インドネシアからの8月契約材も年末ごろの現地積み込みの予測。
プレカット工場各社は、木材の供給ができないことと値決めが直前まで出せないことから、3月末ごろから、稼働率が下がっています。プレカット最大手のポラテックでは、プレカット販売価格が3月から7月では60%上昇し、8月以降も上がり続け、9月には3月より倍になっている状況です。
九州の熊本で見ると、大手ハウスメーカーが6月頃より、1棟単価30万の値上げで営業活動を進めるケースがありました。
弊社は、熊本県球磨郡に製材品として1万2000㎥のストック材を確保していた事と国産材100%使用の為、木材の供給において大きな影響を受けない現状でしたが、原木の高騰は今後の建設費に影響が出てくると予想されます。全日本木材市場連盟の木材価格調査票(熊本 杉二等3m)によると4月から6月までにかけて1.8倍の値上がりがあり、現在は高止まりの状況で、今後は注視が必要です。弊社では、1棟(38坪)あたり平均36㎥の木材を使用しています。
コロナの影響は、各国のロックダウンにより、木材以外の建築商材に影響を及ぼしています。
TOTO,LIXIL,などトイレの衛生機器の部品供給がベトナムであったことから生産供給がストップしています。各メーカー生産拠点の変更や代替え方法に移行していますが、住宅への年内の供給はかなり遅れる見込みです。
半導体不足の影響もあり、エコキュートや食洗機などの設備機器も納期延滞が発生しています。
積水化学工業は、9月24日出荷分から塩化ビニル関連製品とポリエチレン関連製品の販売価格を6%~10%以上の値上げと発表されました。
それにより、壁紙、床材、ファブリック商材を扱う、サンゲツ・リリカラ・ルノン・トキワ産業は、9月21日より13%~26%の値上げを発表しています。
1棟当たりにおける、電気配線も銅の価格高騰により、昨年より1.5倍になっています。
新築工事の見込み契約にも影響を及ぼしています。
全建総連によると、ウッドショックの影響に関する実態調査では、
■工期の確定ができない49%
■請負金額が確定できない49%
■樹種や仕様が決定できない22%
■プレカットの見積もりが取れない21%
などの理由で、変更契約(仕様確定、工期工程確定)ができず、資金繰りにも苦戦する工務店が多く出ている状況と報告しています。
リフォーム・増改築においても契約後の変更ができず、材料費の増額分などを請求できず自社負担し圧迫するケースが起こっています。
今回の纏めとして、
木材価格に始まり建材、内装材、設備材、等の価格上昇により、住宅の建設費は上がり続けています。しかし、コロナ禍による在宅時間の増加によって持家志向やリフォーム・リノベーションの意識は高まっています。コストアップ分の付加価値を提案し顧客層を変化させることが必要となります。
実務として、コロナ禍で在宅中の調査や打ち合わせでの訪問は十分お客様配慮が必要です。
打ち合わせもZOOMを使用するなど様変わりしました。図面や資料提出においてはデータを見ながら話を進めることで、より伝わりやすくなった場面も増えたのではないでしょうか。今後の住宅医調査も床下、小屋裏などの普段はお施主様が見えない部分の調査状況をリモート配信するなど、専門性を伝える報告方法にも検討が必要です。
住宅医の専門性をしっかりアピールして、お客様へ納得いただく提案をしていきます。
アフターコロナでの、我々の取り組みや必要性についても皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
(新産住拓株式会社 リフォーム事業部 泉保真史)
関連記事・出典
日本住宅新聞 (2021年7月25日,2021年8月5・15日)
日刊 木材新聞 (2021年9月1日 8面)
(株)住宅産業研究所 [月刊 TACT] (2021年5月)
新建ハウジング (2021年6月20日)