住宅医コラム 意見交換2018-87

住宅医リレーコラム 2018年12月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
12月号は森本周子氏のコラムです。

床下・小屋裏ワンダーランド

もりちかぐみ 森本周子

建物の調査で「床下に入るのはちょっと・・・」と尻込みする方にお会いすることもあります。床下や小屋裏は、静かで落ち着きますし、毎回発見がありますので、私は楽しくもぐったり登ったりしています。ここでは「調査に参加してみたいけれど。」という方に向けて、最近の木造の床下、小屋裏調査での考えた事を紹介します。


インスペクションの目的によって調査内容や時間のかけ方は変わりますが、住宅医が得意とする床下、小屋裏の詳細調査では構造や劣化等の状況把握を主に効率的に行うことになります。


そこでの楽しみはやはり木造ならではの軸組みです。時代や時期、地域によっても違いますので、発見があります。自分の知らない地域では、小屋組みだけでなく床組みでも「このあたりの大工さんはこうやっておさめるのが普通なのかなあ。」と思うこともありました。「この時期の住宅ならばこういう工法や材料がよく使われている」という知識が頭に入っていれば、現場でも早い判断につながります。


そして、あまり会いたくはないが会っておけば次の調査につながるのが、劣化をもたらすシロアリなどの痕跡です。ヤマトシロアリの蟻害、蟻道はよく見るので、私は「この辺あやしい。」という鼻もだいぶきくようにはなったと思います。今年はアメリカカンザイシロアリに対面し、会いたくはなかったですが次に会ったら気づきます。(防除は大変です)その他劣化以外で、ハクビシンの痕跡はよく見ますが、スクール修了生のAさんにコウモリの糞を教えていただきました。もしかしたら今までどこかで出会っていたのかもしれませんが、「知らないと見えない」ので、現場でホンモノを知る人と同行するのは大切だと思います。
また、住宅の調査では時間に余裕がないことが多いので、調査の数をこなしている人は、いかに効率よく行うか、工夫し、調査の進め方や道具等も進化しています。住宅医スクールの清水利至講師の講義を聞きながら、その要領がよく質の高い調査に感服し、一度、押しかけて同行させてもらいたいと思っています。文化財調査にも長けているスクール修了生のSさんとお寺の本堂の小屋裏に同行した時には、忍者のように身軽に梁の上を渡る姿と技術的な知識で勉強させていただきました。Sさんの明るいヘッドライトと手袋の工夫を真似して、性能の良いヘッドライトを使うようになりました。余談ですが、とても性能のよいヘッドライトを買って調査に入ったが、電池が持たなくて失敗という方もいましたので、調査の内容に合わせた選択が必要です。


最近「住宅履歴」をデータとして残す事業が進められています。写真のようにある文化財では改修年月を「束に刻印」、「天井板への書き込み」、「棟板と別に3回の改修を板に記録して小屋裏に残す」などしていました。一目瞭然なので、住宅のメンテナンスの時にもこうしたアナログな方法も後々役立つのではないかと思いました。


発見があって楽しいといっている時点で、私もまだまだ知らないことがあって未熟ということになりますが、こうした小さな発見を積み重ねています。「調査してみたい。」と思われている方、全国各地にはサポートしてくれる住宅医やスクール修了生がいますので、一緒に調査いたしましょう。いざ床下・小屋裏ワンダーランドへ。