住宅医コラム 意見交換2018-83

住宅医リレーコラム 2018年8月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
8月号はトヨダヤスシ建築設計事務所代表の豊田保之氏のコラムです。

「wallstat ver.4で石場建てのシミュレーションをしてみました」

 
既存住宅を調査すると石場建ての建物をよく見かけます。耐震診断を行うと、評点は低く倒壊の危険性が高いと判断されるケースも多々。
壁量が足らないのか?柱が悪いのか?梁が悪いのか?接合部なのか?石場建てが悪いのか?なんだかよくわからないことが多いので、納得するにはやはり自分の目でたしかめるしかありません。
そこで、2017年の住宅医スクール大阪で講義を頂いた中川貴文先生に、石場建てのシミュレーションについてご教授を頂いたので、早速実践してみました。シミュレーションを行う意図は、何がよくて、何が悪いという結論をだすためではなく、あくまで意匠設計者の「勘」をつかむことが目的です。
京都大学 生存圏研究所 生活圏構造機能分野 准教授中川貴文先生が開発されたwallstatのWEBSITEはこちら。
http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/~nakagawa/
仕様は以下の通り。
グリッド3.64m角
柱150角
土壁
床と屋根 火打ち梁
梁105×300
端部は全てHD25KN仕様
地震波は、JMA神戸1倍です。
まず1つ目の動画は、石場建てではなく、足元を固定したモデルです。
左のモデルは、上記の仕様です。右のモデルは、同仕様ですが、土壁を取りやめました。
結果、左は倒壊しませんでした、右は結構ゆさぶられて倒壊しました。
足元を固定している場合は、耐力壁を設けないと壊れてしまいました。


2つ目です。
こちらは、1つ目と同じ仕様ですが、足元が滑るように設定しました。
結果、左は、壊れません。頑丈です。右のモデルは、先程足元を固定すると倒壊したのですが、
足元を滑るように設定すると壊れずにすみました。足元を固定しないことで倒壊を免れることもあるようです。

 
3つ目です。
左モデルは先程と同じ仕様です。右モデルは、壁と水平構面を取りやめました。よって、骨組だけです。
右モデルは、結構揺れて変形はしますが、なんとか倒壊せずにすんでいます。

4つ目です。
左モデルは変更なし。右モデルは、3つ目に仕様から更に変更し、柱を150角から120角にしてみました。
右モデルは、今にも倒れそうですが、なんとか耐えています。120角もなかなかいけます。

最後の5つ目です。
4つ目に仕様に加え、柱を90角に変更してみました。
地震波をあたえてみると、さすがに、柱脚がぽきっといきました。柱は90角が限界のようです。

 
既存住宅の柱は、蟻害や腐朽で断面がなくなっていることも多く、断面が減ってしまうと、
このシミュレーションのようにリスクがあるのでしょう。

 
 
5つほどシミュレーションをしてみましたが、この程度のモデルであれば、作業時間は10分×5つ=50分ほどです。
勘をつかむには、とにかく回数を重ねて実践することが重要ですね。