住宅医コラム 意見交換2017-83
「トイレコラム」
トイレ設計手法 ~ 事例から見るトイレ空間②
三澤文子(Ms建築設計事務所)
秋のトイレコラムは、トイレ内部について、つまりトイレ空間について、3名の住宅医が設計したトイレ事例を紹介していきたいと思います。
10月は、熊本、新産住拓の住宅医・泉保真史さんの自邸をご紹介させて頂きます。
数年前、熊本で改修の仕事があり、現場監督をして頂いた泉保さんのお宅に、私と担当のスタッフともども泊めて頂く機会がありました。当時、小学生低学年のお兄ちゃんと保育園児の弟くんと、学校の先生をしておられる奥様との4人のご家族。奥さんのご実家の敷地内にあり、大きな庭を共有する恵まれた立地です。
泊まらせて頂いた日は、お庭でのお食事で、歓待していただきました。
馬刺しやピザ釜での手づくりピザなど、美味しい夕食でした。
泉保邸は、ほぼ平屋(ロフト的なお部屋が一部ありました)の住宅で、両親の主屋の南庭を共有するため、庭の西側にあり、南北に長く、東の庭に開く配置になっています。
トイレは1か所。リビングから水廻りや寝室につながる位置にあります。
広さは、奥行1820㎜ 巾1270㎜(柱芯で)で、手洗い台のあるトイレです。
床は、厚さ30㎜の杉板で壁はクロス貼り。収納の戸は杉板の1枚引き戸でタオルバーが付いています。便器側の手洗い台下を開けておくことで、トイレ掃除道具を置くスペースになるとともに、奥に広がりを感じさせることができます。
窓の前には、お子さんの作品でしょうか、モビール(?) のようなモノが掛けてありますが、窓とモビールの間に、スクリーン(和紙や布など)をはさむと、モビールの存在がはっきりして、トイレに入った瞬間の目に入る景色として印象が良いものになるのではないでしょうか。
天板は杉の厚板に黒の塗装。木のある空間に対して、色を入れると、素地の木の良さが引き立ちます。台の上には、枠の見付けの大きい木製の額があり、さらに黒が良いアクセントになっていると感じます。
台の上に沢山の本があるところを見るとトイレのなかで本を読むのでしょう。(トイレで読書する。という住まい手さんがそういえば、今までも何人かいました。)
手洗いボールの上部に鏡を掛けることがありますが、ここでは、鏡なしで、大きな額、小さな額とも、子どもたちの作品が飾られています。お客でトイレに入ったものにとって、このような額飾りに興味を持ちます。しばし鑑賞をしていると、和やかな気分になってくるものです。トイレの手洗い台が、小さなギャラリーになっているといった感じです。
(壁に鏡が付くと、小さなギャラリーの雰囲気はつくれないとおもいます)
手洗い台の巾木は名古屋モザイクのボーダータイルを使用しています。この部分、汚れが予想できるところなので、しっかりタイルで巾木をとる手法はとても良いですね。
手洗いボールは熊本の小代焼き、知り合いの作家さんにつくってもらったとのこと。
ほのぼのとした、家族の様子が感じられるような、トイレの空間。
1日何回か、留まる場所なので、機能ばかりでなく、家族の小さなギャラリーのように、目を休める空間にしたいものです。