住宅医コラム 意見交換2014-45

「家を見守る」ということ~水廻りの劣化とタイルのクラック
  三澤文子(MSD)

 

今や 浴室はユニットバスが主流。 一方、私の設計では FL+400㎜のハーフユニットバスを使い、その上部の壁はタイルや板張り、天井は板張りにするという仕様が、主流になってきました。

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ただし、それはここ2~3年のこと。それ以前は、2階の浴室以外は現場で造る、いわば「在来型」でした。この在来型と言う呼び名は、ときどき使われますが、今後姿を消しそうな、過去形の雰囲気がします。
数年前は、「ユニットバスなんてバスタイムを楽しむ人にとって何の潤いも無い。既製品をポンと据え付けるなんて、設計にならない。」などと言い切っていました。今でこそそんなに強くは否定しませんが、やはりフルユニットバスは避け、ハーフユニットバスを使って、造り込んでいるわけです。

 

さて、改修工事において、劣化が激しい個所として、浴室廻りが挙げられます。私が設計を始めた30年以上前は、設計事務所の仕事なので、浴室廻りの基礎はRC造基礎の上にブロックを積んで高基礎(FL+1000程度)にしていました。その後、ブロックではなくRC造の高基礎になりました。でも驚きなのは、築30年程度の既存住宅の調査では、高基礎でなく通常の基礎高さに土台という、木軸下地に現場施工の浴室を造っているケースが大変多いことです。古家を改修してその当時流行の浴室にリフォームしたケースもありますが、当時の新築の建物でも木軸下地の浴室です。

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写真は、浴室の下地ですが、木軸の下地が腐朽して、特に土台の腐朽が著しい状況です。このように既存住宅の浴室は、調査の際も、タイルなど仕上げ材に打診棒(ドライバーなど金属の棒でよい)を撫でて、その際の音の感触で、高基礎があるのかどうかなど、下地の状況を確かめる必要があります。

さて、このように、室内で最も水気の多い浴室。浴室廻りは、日ごろのお手入れも大切です。我が家の浴室のタイルは、阪神大震災の際と思われるクラックがあります。0.5㎜以上あるこのクラック、この高さは下地が木軸部分なので心配していましたが、昨年の改修の際に外部から見たところ、健全でありました。

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このクラックは、床から高いところにあり、それもバスタブ側で、シャワーなど、水がかかる部分でないことも、健全であった理由と言えます。また、下のほうにあるクラックは、FL+1000㎜までは RC造高基礎なので心配はないと思っています

それにしても、床から 1000㎜くらいの高さまでは、目地汚れ、カビも来ます。それだけ石鹸が飛び散ったり、お湯がかかったりと、汚れやすいのでしょう。基準で決められている各種高さの制限も、こんなところで、頷けることがあります。それにしても、年末に向けて、浴室の大掃除を実行しなければならないと実感。やはり「掃除・お手入」が大切ですね。

さて、クラックの基準寸法 5㎜、3㎜ がなぜ、その寸法なのか? 住宅医スクール大阪の、中島先生の講義の中(Q&A)で詳しい説明があり、受講者のアンケートでも「説明を聞いて合点がいった。」との感想がありました。
遅ればせながら、私は、その講義を明日、住宅医スクール浜松で、受講することになっています。