法改正後の改修・確認申請「既存建物の改修において、法令と向き合う」コラム 2026年4月

田尻 裕樹住宅医協会理事・住宅医 /(株)再生工舎代表 / 山口県

私たちは山口県で、既存建物の改修を中心に活動しています。昨年の法改正により、確認申請が必要となる建物の範囲が広がったことで、私たちのようなリフォーム、リノベーションを手掛ける事業者の中には「仕事がやりにくくなった」と感じる方も多いのではないかと思います。しかし、これまで確認申請や完了検査といった手続きを行わずに現在まで使われてきた建物を、適切な手続きを行うことで法的に認められる状態にすることは大きな価値があると考えています。建物を利用する方々の安全・安心や、その建物が建つ地域をより良いものにしていくためにも、法と向き合い適切に改修していくことが重要であると感じています。

今回のコラムでは、私たちが実際に確認申請を行った既存建物の事例についてご紹介いたします。

事例 ① 木造平屋住宅の増改築

木造平屋の大規模改修のみであれば、現在も確認申請の提出は不要ですが、10㎡以上の増築を行う場合は確認申請が必要です。増築した上で既存建物も改修したケースです。(資料1)

資料1 【 計画概要:既存109.47㎡ 増築37.13㎡ 】


© 再生工舎

過去に2度の増築を行っていましたので、
確認申請の際に既存不適格調書に履歴を明示します。(資料2)

増築の面積が既存の1/2以下ですので、構造上一体として令137条の2「耐力壁の釣り合い良い配置等に適合させる」ことで、構造の安全を確認しています。また、確認した内容を適合確認書に記載し、確認申請書に添付します。(資料3,4)

資料3 既存不適格建築物への増築について(構造関係:令第137条の2)

▲クリックで画像を表示


上記の一部 拡大】
・増築の規模 → [1/2以下(第二号)] → [ 構造上一体(第二号イ) ] → [A1-ii]

資料2
構造耐力規定に係る既存不適格調書
クリックで画像を表示
資料4
緩和条件適合確認書(在来木造4号)
ケースA -(1)-( i i ):釣合いのよい耐力壁の配置による場合
クリックで画像を表示

事例①:木造平屋住宅の増改築
改修前 外部

改修前 内部

改修中 既存部

改修中 増築部

改修後 外部

改修後 内部

こちらの事例は法改正前の確認申請ですが、改正後も進め方は変わりません。既存面積の1/2以下の増築であれば、構造計算が不要なため、確認申請の期間も短縮できます。適切に申請を行う前提であれば、「増築は10㎡まで」という枠にとらわれることなく、住まい手様や建物にとって最適な計画を提案することも可能になります。

事例 ② 軽量鉄骨造2階建て住宅の大規模改修

約50年前の1970年頃から、大手ハウスメーカーにより多くの軽量鉄骨造住宅が建てられてきました。これらは2026年現在も中古住宅として広く流通しています。軽量鉄骨造2階建ては法改正前から「2号建築」に該当し、大規模な改修を行う際は確認申請が必要でしたが、実態としては確認申請を提出せずに改修が行われていたケースも多くあったようです。今回の法改正により、大規模改修における確認申請の必要性について、業界内や住宅購入者の認識度は高まったように感じます。

軽量鉄骨造の場合は耐震改修、構造補強の難易度が高いため、今回の事例では既存の構造を維持し、構造的負担を増やさない方針で全面改修を行っています。その前提として、構造が健全であることは事前に確認する必要がありますので、確認内容を現況調査書に記載して、既存不適格調書と合わせて確認申請書類に添付して提出しています。(資料1,2)

資料1
状況調査書

クリックで画像を表示
資料2
構造耐力規定に係る既存不適格調書
クリックで画像を表示

 

事例②:軽量鉄骨造2階建て住宅の大規模改修
改修前 外部

改修前 内部

改修中 解体後

改修中 既存構造

改修後 外部

改修後 内部

ハウスメーカーの住宅は確認申請がハードルとなり、大規模改修は難しいと思われがちです。確かに構造的な制約はありますが、間取りの大幅な変更や家全体の断熱改修、さらには内外装や階段まで一新することは十分に可能です。

事例 ③ 補強コンクリートブロック造住宅の増改築

コンクリート住宅は改修が難しいと言われますが、これは、コンクリートという素材を撤去するのに多大なエネルギーが必要になり、木材のように容易に切断や取り外しができない点にあります。また、構造補強も難しく、基本的には既存の躯体を活かした改修を計画することになります。
この事例では、築60年の補強コンクリートブロック造(CB造)の住宅に対し、木造での増築を伴う全面改修を計画しました。この場合は異種構造を一体構造とすることは困難ですので、既存CB造と木造をエキスパンションジョイントで構造分離し、それぞれ独立して安全性を確認する手法をとっています。増築する木造部分は「木造平屋」扱いとして壁量計算を行いますが、既存のCB造については耐震診断にて安全性を確認する必要があります。
(資料1)

資料1【計画概要 既存109.47㎡ 増築37.13㎡】
© 再生工舎

確認申請の際は、既存コンクリートブロックの安全性を証明するため、既存不適格調書や緩和条件適合確認書などに記載して、確認申請書に添付することになります。(資料2,3,4)

資料2 既存不適格建築物への増築について(構造関係:令第137条の2)
▲クリックで画像を表示


上記の一部 拡大】
・増築の規模 → [1/2以下(第二号)] → [ EXP.Jで分離(第二号イ)] → [A1-iii 耐震診断] [A1-iii 新耐震]

 

事例③:補強コンクリートブロック造住宅の増改築
鉄筋の有無を調査
耐震診断の実行
コンクリート強度をシュミットハンマーで確認

資料3
緩和条件適合確認書(既存補強コンクリートブロック造へ在来木造増築)
クリックで画像を表示
資料4
構造耐力規定に係る既存不適格調書
クリックで画像を表示

事例③:補強コンクリートブロック造住宅の増改築
改修前 外部

改修前 内部

改修中 解体後外部

改修中 解体後内部

こちらの事例は現在工事中です。増築および改修工事の完了後には完了検査を受け、検査済証が交付される予定です。今回しっかりと検査済証を取得しておくことで、将来再び改修を計画する際にも、既存部の安全性を証明する重要な根拠となります。

構造の異なる3件の事例を紹介させていただきました。
40年以上前につくられた建物は検査済証がほとんどありません。今回の事例の物件も全て検査済証がありませんでした。そのため、構造等の安全性を確認するための現地調査が必要となりました。大規模な改修の機会に検査済証を取得することで、建物が適法であることの証明になります。これは、将来ふたたび増築や改修を計画する際、確認申請をスムーズに進めるための重要な資料となり、建物の資産価値を次世代へつなぐことにも直結します。
適法建築を証明するための確認申請を重荷に感じることなく、向き合って取り組んでいくことが、建物と地域の未来をより良いものへと更新していく姿勢であると信じて、私たちは日々活動を続けています。

文章・写真・図:田尻 裕樹
Copyright © 2026 Tajiri Yuki, jutakui


LINK
(株)再生工舎 ホームページ | 再生工舎facebook | saiseikousyaインスタグラム |
建築知識ビルダーズ №64 「木造の大規模リフォーム確認申請ガイド」住宅医の田尻裕樹さん、橘泰一さんの事例が紹介されました