調査事例紹介2016-61 広島市安佐南区
広島市安佐南区 住宅医スクール広島受講生による詳細調査
報告:澤田博/新協建設工業株式会社 広島支店
■所在地:広島市安佐南区
■調査日時:2016年10月4日(火)曇 気温27℃
■構造規模:木造2階建て
■延床面積:78.57平米
■築年数:築40年(昭和51年築)
広島市安佐南区で、築40年の木造2階建て住宅、現況詳細調査を行いました。
既存住宅の劣化診断、現況を的確に判断できるよう、住宅医スクール受講生の皆さんの「勉強会」として企画したものです。
調査リーダーとして山口市から田尻裕樹さんを招き、県内の建築士や工務店の有志15名が集まり、地盤調査員2名の合計18名による詳細調査となりました。
五つのチームに分かれ、①劣化、②設備・仕上、③採寸、④床下、⑤小屋裏を、専門機材も使って細かく調べ、建物性能を数値化していきます。
四十年前の時代背景か、天井・壁・床の断熱材が全く入っておらず、住まい手も仮住まい先へ引越し後のため荷物もありません。通常の在宅家屋と異なり、とても調査しやく、耐力壁や基礎、雨漏り、傾き、設備など劣化事象を細かく調べられました。
また、簡易地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験)も、昔ながらの手動式道具を用いて行い、参加者も土中の感覚を体験しました。
参加者の皆さんの感想として
「現場の人間ではないので、想像で理解してきたが、今回の調査体験で、勉強してきた事の理解度がぐっと深まった」
「これだけ詳細な調査がなされ、結果を図面化してあれば、設計も実情に基づいてきちんとでき、工事もスムーズに行える」
「少数運営の会社には、これだけの調査は難しく、調査の必要性を施主に納得してもらい、費用を拠出していただくことが課題」
「仲間と共に目で見て、ひとつひとつ計測し、記録する。体感して身につくって、大事だと改めて思った。疲れましたが楽しかった」
等など、今回の経験が皆さんの今後に活かされればと願っています。
さて、この建物は、長期優良住宅化リフォームで性能向上に資するとして、補助金を申請しており、断熱改修、メンテナンスおよび耐震性向上を施し、来年1月末の完成予定で進めております。
解体工事を進めていくと、詳細調査では判断の難しかった、筋違いの断面欠損の有無、辺材に付着した白い斑点の正体(貝殻跡)など、判別できなかった事象もわかりました。
筋違いや柱脚の断面欠損は、大工さんが巾木を埋め込んだためで、和室の廻縁や長押納めによる柱欠損と同じく、比較的よく見る事象です。
羽柄材に貝殻が付着していた事象は、40年前は貯木場として、原木を海上に浮かせていたため、その時代の名残であろうと思われます。
この建物は、(珍しく?)図面通り施工されており、地盤も良いため建物の傾きがほとんどなく、築40年の建物としては、状態は良好です。
改修工事により、断熱性能、耐震性能が向上することで、現在の住まいとして遜色ない家屋に生まれ変わることができるので、住まい手も楽しみにされています。
参加いただいた、皆様!大変お疲れ様でした。
現在、詳細調査の報告会を行いたいと考えており、その準備を始めているところです。
新協建設工業株式会社広島支店
澤田 博