住宅医スクール2015 東京 第4回のご報告

9月3日(木)、住宅医スクール2015東京・第4回が開催されました。
今回は「木材の劣化と対策②」「防蟻対策の実務」「構造的不具合の原因と対策③」
「温熱・省エネの改修事例を語る」の4講義が行われ、50名が受講されました。
 
第1講義「木材の劣化と対策②」
矢田茂樹 氏/横浜国立大学名誉教授
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第1講義は、矢田茂樹氏により、木材の劣化要因や劣化診断法についてお話いただきました。
木材が何によってどのように劣化するのか、木造建築の劣化を防ぐためのポイントや現況調査手法など、
これまでの調査研究の過程で得られた知見を、映像資料ではなく、
手を触れて間近にみられる実物のサンプルによって、具体的に分かり易く解説していただきました。
生きたシロアリが活動中の瓶詰めが廻覧されるなど、真に生きた知識を得られる講義となりました。
 
第2講義「防蟻対策の実務」~シロアリ駆除と予防法の実例
水谷隆明 氏/阪神ターマイトラボ代表
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第2講義は、水谷隆明氏により、実際のシロアリ対策の現場で得られた知識や実際に飼育観察されている知見から、
シロアリをより深く知ることでどのような対策が有効なのかを分かり易くお話しいただきました。
シロアリが住宅に侵入するメカニズムや行動パターン、アリ種類別の行動範囲の違いや、薬剤処理の考え方、
予防方法など、住宅実務にすぐに役立つ内容が満載の有意義な講義となりました。
 
第3講義「構造的不具合の原因と対策③」~伝統木造の耐震設計
山田憲明 氏/㈱山田憲明構造設計事務所 代表取締役
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第3講義は、山田憲明氏により、普段学ぶ機会の多くない伝統木構造について分かり易く解説いただきました。
伝統木構造の定義や分類など概要や構造要素、耐震設計法の種類の説明と限界耐力計算の概要、
伝統木構造の耐震診断における調査法・修理法・耐震改修の説明と事例紹介など、
1コマの講義では足りないくらい盛りだくさんな内容の講義となりました。
 
第4講義「温熱・省エネの改修事例を語る」~「KIP」のパッシブ改修設計手法
南雄三 氏/住宅技術評論家
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第4講義は、南雄三氏より、その豊富な知見から既存住宅の温熱環境や省エネについて解説していただきました。
日本の住宅を考える背景として、日本とアメリカの住宅価値の違いやその理由、
一般的なインスペクションとパソロジー(建築病理学)の違いから住宅医が必要とされる意義、
南先生の考える「リフォーム」と「リノベーション」の概念など、
既存住宅を考える上で核となる考え方についても貴重なお話しをいただきました。
また、2020年に義務化される改正省エネ基準がもつ意義と、断熱・省エネルギー・パッシブやゼロエネなどが
温熱環境を考える上でそれぞれどのような位置付けとなるのかなど、
難しくなりがちな分野の解説を軽妙な語り口で分かりやすく講義していただきました。
 
以上で第4回の4つの講義は終了し、その後懇親会も開催されました。
次回は、温熱環境の改善と対策として具体的な診断評価手法や伝統木造の改修事例について講義が行われます。
いずれも実務で役立つ貴重な知識を得る場となりますので、多くの皆様のご参加をお待ちしております。
(関東事務局 小柳)