住宅医スクール2014 東京 第3回のご報告
7月31日(木)、住宅医スクール2014東京・第3回が開催されました。
今回は木造建築の耐久性をテーマに、「木材の劣化と対策①」「木造建築物の耐久性能と維持管理方法①」「木造建築物の耐久性能と維持管理方法②」「住宅改修事例を語る-②」の4講義が行われ、34名が受講されました。
第1講義「木材の劣化と対策①~木材の劣化と診断」
矢田茂樹 氏/横浜国立大学名誉教授
第1講義は、横浜国立大学名誉教授の矢田茂樹氏により、木材の劣化要因や劣化診断法についてお話いただきました。
木材が何によってどのように劣化するのか、木造建築の劣化を防ぐためのポイントや現況調査手法など、これまでの調査研究の過程で得られた知見を、豊富な実例サンプルによって具体的に分かり易く解説していただきました。講義当日朝に採取された生きたシロアリが廻覧されるなど、正に生きた知識を得られる講義となりました。
第2講義「木造建築物の耐久性能と維持管理方法①~木造建築物の劣化、診断、補修の基礎」
第3講義「木造建築物の耐久性能と維持管理方法②~木造住宅劣化事例Q&A」
中島正夫 氏/関東学院大学 建築・環境学部教授
第2講義・第3講義は連続して、関東学院大学 建築・環境学部教授の中島正夫氏(住宅医協会 代表理事)により、木造建築物の耐久性や維持管理法について、様々な切り口から幅広くお話いただきました。
第2講義では、木造建築物の劣化の基礎知識として、蟻害・腐朽の実態調査結果や薬剤処理と構造性能の関係、接合金物や集成材の耐久性について講義が行われました。
第3講義前半では、診断や補強の基礎知識として、維持保全計画のあり方や手順、木材の割れや蟻害・腐朽など劣化事象別の診断方法、集成材の劣化・干割れや剥離による強度低下の検証結果と補修方法について、講義が行われました。
第3講義後半は、中島正夫氏と小野育代建築設計事務所の小野雅之氏(住宅医スクール修了生)の2者により、Q&A形式で木造住宅劣化事例が紹介されました。小野氏が参加した木造住宅劣化解体調査(国土技術政策総合研究所)で見られた様々な劣化事象について、疑問に思ったことなどを中島氏に問いかけ意見を伺うという趣向でしたが、調査時に設計者が遭遇した疑問点を受講者の方々に追体験していただくような講義となりました。
第4講義「住宅改修事例を語る-②~既存住宅の耐震改修実践事例」
保坂貴司 氏/一般社団法人 耐震研究会 代表理事
第4講義は、一般社団法人 耐震研究会 代表理事の保坂貴司氏により、木造住宅の耐震改修を行う上で設計者が留意・確認するべきポイントなどを、実例紹介を交えてお話いただきました。地形を過去の地名から読み解く手法や機械まかせにしない地盤調査手法の意義、金物補強の実例紹介など、耐震設計を考える時に役立つ知識が満載の講義となりました。
以上で第3回の4講義は終了し、その後懇親会も開催されました。
木造建築の劣化・耐久性に関する講義は、住宅医として調査・診断をしていく中でとても重要な知識を得る場ですので、盛り沢山で熱の入った講義になったと思います。9月の講義も木材の生物劣化や構造的不具合が主なテーマとなりますので、引き続き多くの貴重な知識を吸収していただけたら幸いです。
(関東事務局 小柳)