各地の住宅医の日々No.13 ~大工から住宅医へのバトンタッチ

田上 順子( 住宅医 / JUNE建築設計室 / 和歌山県 )

私は紀州材で有名な和歌山県、その南部に位置する田辺市で暮らしています。

父が大工でしたので、子どもの頃から住宅建築を身近に見ながら育ちました。家族で行う作業も多く、小さかった私も工場(こうば)について行きました。家で一番大きなお鍋で炊かれた『ふのり』をつけたクラフト紙を柱に張るため、紙の端っこを持つお手伝いを思い出します。

その当時の田辺市の文里湾には一面に木材が浮かんでいましたが、私が大学を卒業して帰ってくる頃には、そうした風景や実家の仕事の仕方は大きく様変わりしていました。


父の仕事 / 平成12年

現在、私の仕事は新築住宅の設計や各種申請のほか、耐震診断や補強設計・現場監理を主な業務としています。和歌山県内ではこれまで、住宅耐震化促進事業に関する診断業務が17,184件、改修工事は2,629件実施されてきました(H16~R2現在)。近年の傾向としては、平成12年までの比較的新しい建物の診断や改修工事の増加が顕著に表れています。今後益々、住宅医で学んだ知識を活用する場面が増えてくると思っております。


私の仕事 / 令和3年 (耐震補強の工事中)

昨年、和歌山県建築士会田辺支部では、設計事務所・工務店・大工さんを対象としたオンラインでの耐震勉強会を開きました。講師は全て支部所属の地元の診断士で、行政・審査員・現場サイドからの説明が行われました。地域独自の技術・技法を次の世代に繋げていくためにも、地元発信の勉強会は必要だと感じています。

改修工事には吐故納新の難しさと楽しさがあります。経験から生まれた知恵を借り、根拠となる知識を学び続け、受け取ったバトンを次に渡したいと思います。